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106、再びの平和……そして
しおりを挟む「お加減はいかがですか?」
あの婚約式の日、王城内で気を失ってしまった私は、その後丸一日目を覚さなかったらしい。
あの時……私があの空間で本物の闇の巫女と会っていた時、王太子殿下とロイス様は闇の精霊との決着を、なんとかつけたらしい。
ロイス様曰く、王太子殿下が令嬢と精霊を引き離すのを諦めて、加護を受けた剣を胸に突き刺したとのこと……。
「だいぶ苦しんでいたが、その後は砂山が崩れるような、跡形もない死だった」
苦い物を噛むような……そんな表情でロイス様は話してくれた。
(あの空間に彼女はいなかったのだから、きっとそうなんだろうな……)
あの空間での闇の巫女が言っていた。
同化してしまった者は輪廻の輪に戻れないと……。彼女も一緒なのだろうと思った。
ずっとずっと……なんとなく、自分は一連のことの蚊帳の外なのかと思っていたけれど……今回もそうだった気がする……。
あの日戦いから帰ってきてからずっと、隣で眠り続けているというソラを見て考える。
モブだって……物語の主人公じゃなくて脇役なんだって、分かってはいたけど…。
(ここまで何もできないとは思わなかったかも……)
少し……というかかなり落ち込みつつロイス様のはなしを聞く。
婚約式も無事終わり、またいつもの日々に戻り……このままで良いのだろうか?とふと不安に思う。
前世では大病をして長く入院した挙句、結婚どころか成人もせず……世の中の事をあまり知らず死んだ。
(今世も “ 傍観者 ” は嫌だな……)
マリッジブルーというものではないと思うけれど、『このまま何も知らないまま結婚して良いのか?』そんな思いがムクムクと膨らんできた。
(それに……婚姻まではまだ時間もあるし、闇の精霊という危険もなくなった……ならば)
「ロイス様。私……」
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