たとえそれが間違いだとしても

Fuu

文字の大きさ
2 / 8
終わりの始まり

自分の正体

しおりを挟む
 
 冷たい空気と硬い地面の感触に俺は目を覚ます。辺りは薄暗く、なんとか辺りが見えるぐらいしか無く周りがどうなってるかよく分からない。

「くそ、どうなってんだ......」

 まだ少し痛む頭に顔を顰めつつ、なんとか起き上がろうとするとすぐ横から聞き慣れた声が聞こえてきた。思わず横を見ると空深が倒れているのが見え、痛みを忘れて空深の方に駆け寄る。

「起きろ......。起きろ空深!」

「......ん?わぁ~、亮がやっと私に夜這いに来た~」

 こ、こいつ、寝ぼけてたらこんな事言ったりするのか。思わず頬が引き攣り掛けるが俺は空深のおでこに無言でチョップする。

「痛!?せっかく亮が私を求めに来てる素晴らしい夢が見れてたのに......って、あ、あれ?ここどこ?」

「俺も分からん。俺も目が覚めたらここに居たんだ」

 空深が無事だったからか俺も冷静になる事が出来、改めて周りをみる。正確な人数は暗くて掴めないけど結構な人数倒れている。多分、教室にいた全員居るはずだ。とりあえずこのままでは何も出来ないから全員を起して回る。先生も居たから少しだけ安心出来た。
 
それから少しして、全員が起きたタイミングで壁の一部が重々しい音を立てて開き始める。外は明るいらしく逆光が暗い所に馴染んだ目にはキツいものがあった。その光の中に複数の人影が浮かぶ。
 目が光に慣れてきてやっとはっきり見えるようになり、人影の正体が分かった。中央にいる人物は見るからにお姫様と言った感じの多分同い年ぐらいだろうか。その周りには鎧を付けた人物たちが4人とローブ着て、白い髭を蓄えたお爺さんが居た。

俺たちの視線が集まる中、お爺さんが手のひらを突き出すように腕を上げ、何かを呟くと薄暗かった部屋が一気に明るくなる。思わず顔を上げると数個の光の塊のようなものが浮かんで居て、それがスポットライトのように照らしつけていた。

「初めまして、私はこの国の王女のリーナ・クラウディオと申します。勇者様とそのお仲間の皆様、心よりお待ちしておりました。聞きたいことがあると思いますが、それは国王様からの説明させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 その言葉に俺たちは顔を見合わせる。確かに状況は知りたい。が、明らかに自分達と雰囲気が違う。それが俺たちの返答を渋らせた。

「それは、私たちが置かれている状況もですよね?」

 ただ1人だけ、先生だけが1歩前に出て確認しておきたいことを聞いてくれた。

「えぇ、勿論です。......他にないのなら今から国王様の元に案内しますので私の後を付いてきてください」

 言うことだけ言った王女は背を向けて歩き始めた。......付いて来いって事なんだよな。
 俺はいつの間にか空深に握られていた手をそっと握り返して後を追った。そしてその後をクラスメイトのみんなが進んだ。
 
長い廊下を王女の後について回って約5分、俺たちは王座《ぎょくざ》の間に居た。

「よく来てくださいました勇者方々。私の名はグラト・クラウディオ。この国の国王をしてる者だ。実は......」

 それから始まった説明を要約するとこうだ

 この国には人が暮らし居てる大陸と多種族が暮らしている大陸があるそうで、問題はその多種族が暮らす大陸で妙な動きがあり、魔王が現れる予兆ではないかとこの国を始め、他の国でも混乱が起きたそうだ。

 もし、魔王が現れたなら人間には勝ち目がない。そう考えた各国の重鎮たちは神へ祈りを捧げた。すると、司祭が「他の世界から魔王を討ち滅ぼせるだけの力を持つ者を呼びなさい!女神様はそう仰られた!」と言ったらしい。そして召喚が無事に成功して、今に至る訳か。

「そんな事、私達は知りません!私達を!生徒たちを返してください!」

真っ先に声を張り上げたのは先生だった。

「それは無理な相談なのです」

「な!......それは、なんでですか?」

「その司祭がこんな事も言っていたのだ。もし、帰還を望むならば元凶を正しなさい、さすれば元に戻ろうとする力が働くでしょうと」

 それってつまり......。

「魔王を倒さないと帰れないんですよね?」

 誰かが呟いた。それはクラスのみんなが思ったことだった。

「そうなのだ。勇者様方は元より強力な力を持つ者も居るのだろうが、我らも無責任に呼んだのだ。勇者方を死なせぬよう、不自由ないようにする事を誓おう」

「なら、それでいいじゃないですか。要は僕たちが魔王さえ倒せばいいんですよね?」

 その声が後方から上がり俺はと言うか、全体がそちらを向く。そこにはクラス委員の永田が居た。俺はアイツが少し苦手と言うか、嫌いだ。正義感の強い頼りになる奴なのだが、若干自分の正義を盲信してる節がある。
 だが、アイツはクラス委員なだけに、発言力があった。その一声がきっかけとなり段々といいんじゃないか?と言う空気になり最終的に魔王を倒すことになった。

「おぉ、ありがとうございます!勇者様方!勇者様がそう言って下さりこの国も安泰だ!」

 決まった途端国王の言葉遣いが変わったのは少し気になったが、それほどの意味はないだろうし別気にしなくていいか。

「それで国王様、先程言われていた強力な力と言うのは、どうやって確認したらいいのですか?」

「うむ、それは簡単な事だ。ステータスと言えば分かる」

 それを聞いた永田はすぐさまステータスと呟いていた。そして何か見えないものを凝視する。最初は残念そうにしてたが、次第にニヤニヤとした顔になり始めた。

「聖騎士《パラディン》はどれほどの力があるのでしょうか?」

「うむ、聖騎士に慣れる者はそうおらん。最初から聖騎士になっているとは流石勇者様がいる人達だ」

 永田が真っ先にやり現実味を帯びた非現実に、みんなが興奮の色を見せてステータスと呟いていく。ただ、何故か俺はステータスを見たくないと言う思いがこみ上げてきていた。
 そんな中、隣に居た空深がわぁ!と驚きの声をあげた。

「私......勇者みたい」

 空深自体驚いていてリアクションが薄かったが、周りのクラスメイトがおめでとー!ややっぱりー!と声を掛け、それにつられる様に空深もテンションが上がっていき......。

「ねぇ!亮はどうなの?」

そう俺に言ってきた。空深に言われて俺も確認しとこうかなと言う気持ちが湧くが、それ以上に見たくないという思いが強かった。なんでこんな感情を抱くのか全く分からない。俺はその感情を押し殺してステータスと呟く。そして出てきたステータス画面に絶句した。



【名前】御影 亮 
【職業】魔王(無銘)
【スキル・技能】闇魔法・剣術・体術・状態異常耐性・魔力操作・言語共通化



 魔王。それは俺たちの倒すべき相手。それが......俺?そして勇者が空深?
 俺の頭の中で最悪のシナリオが映し出され思わず鳥肌が立つ。

「亮?」

 俺がステータスを見てから一言も喋らなくて心配になったのか、俺に声をかけてくる空深。

「あぁ、ごめんごめん。俺は魔法剣士だったからどんな感じになるのかなって想像してたんだ」

 俺は必死に作り笑いを浮かべて嘘を吐く。空深はその言葉を信じてよかったねーと言う。それが俺の心を深く抉る。

 その後、俺たちはそれぞれに部屋が割り振られた。俺は自分の部屋になった場所に入るとベッドに倒れこむように眠った。
    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...