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エトワーテル辺境伯領
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あれからは特に何事もなくフィーリネ学園を見学し、帰ってきた。
あれから十数日経つが、キルシュには会えない。
今思えば帰ってくる前にキルシュと下町に行けばもっと一緒にいられただろうに、と後悔するがあの時は満足していたのだから仕方ない。
それに領主がそんなこと出来るわけない...。
落胆していることなどおくびにも出さず、私はいつも通り書類を作成する。これこそ、私がフィーリネ学園に行くことになった理由だ。
そこに書かれているのは『転移魔法の理論と構築』。これが出来れば王都に行くのも一瞬だ。
つまりかわいいキルシュといつでも会えるということ。
ふっ。思わずにやける口元を隠す気にもならない。
「転移魔法の構築に成功したとなれば大学の有用性も広めることが出来る!なんて笑いでは無いのでしょうね。おはようございます、マイロード。」
今部屋に入ってきたというのに全てわかっているような口を聞く執事に思わず表情が戻る。
今更だがこの執事、とても若い。
私より1つ2つ年上で、綺麗な白髪、紫色の目をしている。
私が良くも悪くもキルシュ以外に興味が無いことを理解し、こうして軽口を叩いてくるのだ。貴族に軽口を叩くなんてよくやる気になるものだ。
しかしながら事実、私は執事の元の名前を思い出す気もないのでとんとんだということにしよう。
意味の無い脳内不敬バトルが引き分けになったところで、執事の言葉が聴こえ、意識が現実に戻る。
「キルシュ様の出立準備が出来たようです。」
うっ。
思わず指先が反応をし、紙が音を立てる。
数日前、キルシュの試験結果が届いた。結果はもちろん合格。2ヶ月後にキルシュはファシアス高等学園の生徒になることが決まった。
入学までにやることはたくさんある。入学手続き、入寮手続き、制服の仕立て。
それらはやはり王都にいた方がスムーズに行く。
だから今日、キルシュは王都に行くのだ。
普通の馬で行くため、王都まで20日間かかることが予想され、大変な2ヶ月間になるだろう。
制服はオーダーメイドで作るため流石に間に合わないうことで、昨日仕立て屋を呼んだ。もう戦いは始まっているのだ。
私は急がないといけないという理性と、キルシュに行って欲しくないという感情で、力なく腰に剣を携える。
そしていつの間にか入ってきたメイド3人に、襟を正され、マントを羽織らされ、帽子に、髪の毛、全てを整えられる。
「さあ、行きますよ。堂々としてください。キルシュ様が独り立ちされる日なのですよ。」
その言葉に胃がキュッとなる。
そんな日あっていいの?キルシュが旅立つ日なんてあっていいの!?
張りぼての威勢を放ちながら廊下を歩けば、無情なことにすぐ玄関に着いてしまう。
吹き抜けから下を見れば、そこには片手に荷物を持ったキルシュがいた。
もう玄関が開いており、朝日を背に凛々しく前を見据えるキルシュは、確かに独り立ちという言葉が似合っていた。
十数日会っていないだけなのに、この前より大人に見えるのは何故だろうか。
思わず涙が出そうになる光景に、心が揺さぶられる。
大きくなった弟の独り立ち、そんな日が寂しいだけの日なわけが無い。その事に今気づいたのだ。
私は感極まる気持ちを落ち着けるように、ゆっくりと階段を下る。
コツ、コツ、コツ。
革靴が立てる音が玄関に響けば、使用人は頭を下げ、キルシュは玄関ホールの真ん中で膝をつき頭を下げた。
今から始まるのは旅立ちの儀式。
私は玄関ホールの真ん中、キルシュの前に立つ。
「面をあげよ。」
その言葉にキルシュ以外が頭を上げる。
全員がこちらを見たところで私は腰に提げた剣を引き抜いた。
腕と剣が水平になるように前に向け、その後剣を立てて胸の前に持つ。
私の艶やかな黒髪は、朝日に照らされて尚黒を主張し、対称的に黄金の瞳と白い刀身が光り輝く。
その光景は非現実的で、誰もが息をすることを忘れた。
「エトワーテルの名を持つものに富のある未来を与えたまえ。」
朝日に照らされて輝く刀身を、その輝きごと鞘に収める。
「キルシュ エトワーテル。」
「はい。」
返事とともにキルシュが初めて上を向く。
私は鞘に収まった剣を腰から抜き、キルシュに渡す。
キルシュは両手でそれを受け取ると、立ち上がって腰に添えた。
「その名にふさわしい活躍を期待する。」
そう言ってキルシュの肩に手を置けば、キルシュは胸に手を当てて頭を下げる。
これが出立の儀式だ。次男は学園が終われば、働かなくてはならない。そうなればもうこの家に帰って来ることはほぼ無いのだ。
そう、キルシュはもう戻ってこないのだ。
やっぱり寂しい。
キルシュが頭を下げていて見られていなかったからだろうか。
私は驚くほど自然にキルシュを抱きしめた。
「ぇっ...。」
腕の中でキルシュが強ばるのがわかった。
儀式はもう終わったのだ。本音を言っても構わないだろう。
「家のことなど気にせず楽しんでおいで。」
「兄上...?」
小声で言った私の言葉にキルシュも小声で返す。困惑しすぎて無意識で小声で返してしまったのかもしれない。
しかしこれが本音、私の本心なのだ。
家の評判は下がるばかりで、いやでも気にすることになるだろう。だから楽しいときくらい全てを気にせずに遊んで欲しい。
私がキルシュを離すと簡単に離れることが出来た。それは当たり前なのに、寂しくて、腕の中がひんやりとした。
「キルシュ様。」
メイドがキルシュに手荷物を渡す。
キルシュは堂々とした様子でマントと帽子を羽織り、それを受け取った。
困惑しているところを見たかったが切り替えが早い。
私は帽子を被る動作も、マントが靡く様子も、全て思い出せるよう目に焼きつける。
でも焼き付けようとすればするほど泣きそう~~~!
「では、行ってまいります。」
行ってまいりますだって!長期休みに帰ってくるからとかそう言う話かな?待ち遠しい~!
正直キルシュの表情は逆光で見えにくい。だから照らされている私は表情を完璧に作った。
本心とはかけ離れた厳格な表情を。
馬車にキルシュが乗って、扉が閉まる。
厳格な表情を作らなきゃいけない場面でよかった。
私は強がってそう思った。
あれから十数日経つが、キルシュには会えない。
今思えば帰ってくる前にキルシュと下町に行けばもっと一緒にいられただろうに、と後悔するがあの時は満足していたのだから仕方ない。
それに領主がそんなこと出来るわけない...。
落胆していることなどおくびにも出さず、私はいつも通り書類を作成する。これこそ、私がフィーリネ学園に行くことになった理由だ。
そこに書かれているのは『転移魔法の理論と構築』。これが出来れば王都に行くのも一瞬だ。
つまりかわいいキルシュといつでも会えるということ。
ふっ。思わずにやける口元を隠す気にもならない。
「転移魔法の構築に成功したとなれば大学の有用性も広めることが出来る!なんて笑いでは無いのでしょうね。おはようございます、マイロード。」
今部屋に入ってきたというのに全てわかっているような口を聞く執事に思わず表情が戻る。
今更だがこの執事、とても若い。
私より1つ2つ年上で、綺麗な白髪、紫色の目をしている。
私が良くも悪くもキルシュ以外に興味が無いことを理解し、こうして軽口を叩いてくるのだ。貴族に軽口を叩くなんてよくやる気になるものだ。
しかしながら事実、私は執事の元の名前を思い出す気もないのでとんとんだということにしよう。
意味の無い脳内不敬バトルが引き分けになったところで、執事の言葉が聴こえ、意識が現実に戻る。
「キルシュ様の出立準備が出来たようです。」
うっ。
思わず指先が反応をし、紙が音を立てる。
数日前、キルシュの試験結果が届いた。結果はもちろん合格。2ヶ月後にキルシュはファシアス高等学園の生徒になることが決まった。
入学までにやることはたくさんある。入学手続き、入寮手続き、制服の仕立て。
それらはやはり王都にいた方がスムーズに行く。
だから今日、キルシュは王都に行くのだ。
普通の馬で行くため、王都まで20日間かかることが予想され、大変な2ヶ月間になるだろう。
制服はオーダーメイドで作るため流石に間に合わないうことで、昨日仕立て屋を呼んだ。もう戦いは始まっているのだ。
私は急がないといけないという理性と、キルシュに行って欲しくないという感情で、力なく腰に剣を携える。
そしていつの間にか入ってきたメイド3人に、襟を正され、マントを羽織らされ、帽子に、髪の毛、全てを整えられる。
「さあ、行きますよ。堂々としてください。キルシュ様が独り立ちされる日なのですよ。」
その言葉に胃がキュッとなる。
そんな日あっていいの?キルシュが旅立つ日なんてあっていいの!?
張りぼての威勢を放ちながら廊下を歩けば、無情なことにすぐ玄関に着いてしまう。
吹き抜けから下を見れば、そこには片手に荷物を持ったキルシュがいた。
もう玄関が開いており、朝日を背に凛々しく前を見据えるキルシュは、確かに独り立ちという言葉が似合っていた。
十数日会っていないだけなのに、この前より大人に見えるのは何故だろうか。
思わず涙が出そうになる光景に、心が揺さぶられる。
大きくなった弟の独り立ち、そんな日が寂しいだけの日なわけが無い。その事に今気づいたのだ。
私は感極まる気持ちを落ち着けるように、ゆっくりと階段を下る。
コツ、コツ、コツ。
革靴が立てる音が玄関に響けば、使用人は頭を下げ、キルシュは玄関ホールの真ん中で膝をつき頭を下げた。
今から始まるのは旅立ちの儀式。
私は玄関ホールの真ん中、キルシュの前に立つ。
「面をあげよ。」
その言葉にキルシュ以外が頭を上げる。
全員がこちらを見たところで私は腰に提げた剣を引き抜いた。
腕と剣が水平になるように前に向け、その後剣を立てて胸の前に持つ。
私の艶やかな黒髪は、朝日に照らされて尚黒を主張し、対称的に黄金の瞳と白い刀身が光り輝く。
その光景は非現実的で、誰もが息をすることを忘れた。
「エトワーテルの名を持つものに富のある未来を与えたまえ。」
朝日に照らされて輝く刀身を、その輝きごと鞘に収める。
「キルシュ エトワーテル。」
「はい。」
返事とともにキルシュが初めて上を向く。
私は鞘に収まった剣を腰から抜き、キルシュに渡す。
キルシュは両手でそれを受け取ると、立ち上がって腰に添えた。
「その名にふさわしい活躍を期待する。」
そう言ってキルシュの肩に手を置けば、キルシュは胸に手を当てて頭を下げる。
これが出立の儀式だ。次男は学園が終われば、働かなくてはならない。そうなればもうこの家に帰って来ることはほぼ無いのだ。
そう、キルシュはもう戻ってこないのだ。
やっぱり寂しい。
キルシュが頭を下げていて見られていなかったからだろうか。
私は驚くほど自然にキルシュを抱きしめた。
「ぇっ...。」
腕の中でキルシュが強ばるのがわかった。
儀式はもう終わったのだ。本音を言っても構わないだろう。
「家のことなど気にせず楽しんでおいで。」
「兄上...?」
小声で言った私の言葉にキルシュも小声で返す。困惑しすぎて無意識で小声で返してしまったのかもしれない。
しかしこれが本音、私の本心なのだ。
家の評判は下がるばかりで、いやでも気にすることになるだろう。だから楽しいときくらい全てを気にせずに遊んで欲しい。
私がキルシュを離すと簡単に離れることが出来た。それは当たり前なのに、寂しくて、腕の中がひんやりとした。
「キルシュ様。」
メイドがキルシュに手荷物を渡す。
キルシュは堂々とした様子でマントと帽子を羽織り、それを受け取った。
困惑しているところを見たかったが切り替えが早い。
私は帽子を被る動作も、マントが靡く様子も、全て思い出せるよう目に焼きつける。
でも焼き付けようとすればするほど泣きそう~~~!
「では、行ってまいります。」
行ってまいりますだって!長期休みに帰ってくるからとかそう言う話かな?待ち遠しい~!
正直キルシュの表情は逆光で見えにくい。だから照らされている私は表情を完璧に作った。
本心とはかけ離れた厳格な表情を。
馬車にキルシュが乗って、扉が閉まる。
厳格な表情を作らなきゃいけない場面でよかった。
私は強がってそう思った。
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