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交流編

(112)騎士団の専属技師

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~紗彩目線~


 シヴァさんと話しあった後、私達は第一執務室に戻ってきた。

 部屋の中に入れば、どこか緊張した表情を浮かべていたレオンさんたちが私達を見て顔をほころばせた。
 その瞬間、先ほどまで部屋の中に漂っていたピリピリとした空気が消えた。


「よっ! 話しあったか?」
「サーヤのことですが、彼女の保護者は俺がします。あと彼女には城で働くという意思がないので、専属技師の件についてはお断りさせてもらいます」


 オズワルドさんの横に座っていたレオンさんが、ニコニコと笑顔を浮かべながら近づいてくる。
 そんなレオンさんに、シヴァさんが真剣な表情を浮かべて言う。

 シヴァさんの言葉を言い終わった瞬間、空気が軽くなったような気がした。
 うん、きっと気のせいだな。
 そう思いたい。


「なるほどな……じゃあ、サーヤ。城の専属技師じゃなくて、獣人騎士団の専属技師になるつもりはないか?」
「え?」


 レオンさんの表情から反応が全く読めないなと思っていると、しゃがみこんだレオンさんが目を合わせてそんな提案をしてきた。

 …………どういう意味なんだろう?

 はっきり言って、城の専属技師も騎士団の専属技師も似たような感じだと思う。
 いや、今まで通りにここに住むという点では同じだろうけど、明らかにどちらとも私のように生まれがはっきりしていないような存在が就いていいような立場ではない気がするんだが。


「獣人騎士団の専属技師になれば、必要だった立場と共に有事の際に権利を与えられる。もし何かがあっても、獣人騎士団の所属であれば騎士団を動かす面目も作れる」


 そう言って、レオンさんはいろいろと教えてくれた。

 命の危機や緊急時は仕方がないらしいけれど、本来は一般人が犯罪者に対して攻撃するのは危険性を考えて一般的には禁止されているらしい。
 でも騎士団の所属となった場合は、騎士団としての役目上犯罪者を攻撃する権利を得られるらしい。

 それを聞いてなぜわざわざ教えてくれたのかと聞けば、私の今まで行動から助けられると判断した者は助けようとすると判断されたらしい。

 …………いや、うん。確かに、あの誘拐犯の不法侵入事件とかはまさにそれなんだけどね。
 確かに、危険性はわかる。
 でも、あの時はとにかく守る事ばかりを考えていたからな……。


「何よりしっかりとした立場を作れば、シヴァたちから引き離される可能性はぐっと減るぞ」
「えっと…………私は騎士団の専属技師になりたいとは思いますけど……シヴァさんたちは」


 レオンさんの言葉を聞いて、私は思わずシヴァさんたちの方を見た。私としては、特に問題ないと思う。個人的に私が作った道具は殺傷能力はあれだけど役に立つし、恩人である彼らの役に立たせたい。殺傷能力はあれだけど。


「問題ない」
「問題ないわ」
「別に問題ない」
「問題はありませんね。彼女、冷静に物事をすすめますし理解力もあります」
「問題はないよ。彼女がいることで、他の騎士たちの気を引き締めることもできる」


 ノーヴァさん・セレスさん・シヴァさん・アルさん・ジョゼフさんの順番で言われる。

 とりあえず、ノーヴァさんが即答したことには驚きしかない。
 いつもは、ぼんやりとしているのか間があるのに。





「お、じゃあ決定だな!」
「ああ…………改めて、サーヤ。これから、よろしく頼む」
「はい!」


 にっこりと笑ったレオンさんの言葉に、シヴァさんは私に優しげな笑顔を浮かべて言った。

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