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9話
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そこからは、何と申しましょうか、、、
会場は、非常に混沌とした空気に包まれました。
両頬に紅葉のような跡を残し、泣き喚くマリー様を、従者の方々が抱えて会場を後にしました。
ざわめく会場内の皆様を、お城の方々が宥めています。
私とリュカ様といえば、別室へと通されました。ここで2人、ジュール侯爵がいらっしゃるのを待つようにとの、指示がなされました。
侯爵をお待ちしている間、私はリュカ様に謝罪致します。
「あの、リュカ様。申し訳ありませんでした。私の所為で、折角の社交界の場を台無しにしてしまって」
リュカ様は微笑みながら、首を横に振られました。
「お気になさらないで下さい。お母様の形見を、あの様に扱われたら怒るのも当然です。まあ、手を出したのは如何かと思いますが。私もやってしまいましたしね」
少々、照れたように笑う、リュカ様。
その後、真剣な眼差しをされました。
「ですが紳士として、何よりも男として、女性を叩いてしまったことは恥ずべき行為だと思っています。その点に関しては、どんな罰も受ける覚悟は出来ています」
私は、そのお言葉を否定せずにはいられませんでした。
「そんな!リュカ様は私の為に怒って下さったのです。罰を受けるなら、私が全て受けるべきです」
「クロエさん。貴女のお気持ちは嬉しいのですが、悪いことをしたら罰を受ける。それは当たり前の事です。後悔はしていません。私もマリー嬢の行為に関しては、強い憤りを覚えましたから」
私は、二の句が繋げずにいました。巻き込んでしまった事に対する、リュカ様への申し訳なさで胸が一杯になるばかりです。そして責任を取ると決心された方に対して、これ以上物申すのは、侮辱にも為り得るのではないかと考えたためです。
そんな沈黙を破るように、ノックの音が響きました。そして、ドアの向こうからは、ジュール侯爵がお姿を現します。
私は、急いで立ち上がりました。
「ジュール侯爵。お初にお目に掛かります。私はクロエと申します。この度は、大変なご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
そして、深く頭を下げます。
「父上!私もこの度の騒動について、謝罪させて下さい。侯爵家という立場にありながら女性に手を上げるなど、恥ずべき行為です。どんな罰でも受ける所存です」
「頭を上げなさい。クロエ嬢」
ジュール侯爵の、低くよく通った、その声を聞いて、私は視線を侯爵に向けました。
「君の事は知っている。ご母堂がお亡くなりになられたことは、私も非常に残念だった。非常に聡明な女性だったからね」
そして、私をジッと見つめると、侯爵は、小さく笑われました。
「君もご母堂によく似て、非常に賢いのだな。全く、親子2代で商戦に負けるとは」
仰っている意味が分からず、私は閉口しました。そんな私を見つめたまま、侯爵はコホンと軽く咳払いをされます。
「さて…大体の事は既に聞いている。君が憤りを覚え思わず手を挙げたことも、仕方のない事かもしれない。そして、リュカ。お前の行動もまた、クロエ嬢の事を想っての事だろう」
その言葉を聞いて、私は少々安堵しました。
ですが、、、
「しかしだ。それと、マリー嬢へ暴力を振るったことに対する責任は別問題だ。当然、先方に謝罪を入れるし、マリー嬢が望むのなら治療費もお支払いする」
「はい。後日、クロエ嬢と共に、謝罪にお伺い致します」
リュカ様は、伏し目がちに、そう仰いました。
「そして、ゴーティエ家の屋敷内にて問題を起こした。私も勿論、足を運んで下さった皆様にもご迷惑をお掛けしたことも理解しているな」
私は、再び頭を下げました。
「はい。重々承知しております。何でも仰って下さい。お許し頂けるのならば、私に出来る事を何でもさせて頂きます」
「…ほう。何でもかね?」
「左様で御座います」
私とリュカ様の目を、交互に鋭い眼光で見つめる侯爵。生きた心地がしません。
「分かった。ならば、2人に処分を言い渡す。心して聞くように」
侯爵から言い渡されたその内容は、控えめに言っても衝撃的なものでした。
会場は、非常に混沌とした空気に包まれました。
両頬に紅葉のような跡を残し、泣き喚くマリー様を、従者の方々が抱えて会場を後にしました。
ざわめく会場内の皆様を、お城の方々が宥めています。
私とリュカ様といえば、別室へと通されました。ここで2人、ジュール侯爵がいらっしゃるのを待つようにとの、指示がなされました。
侯爵をお待ちしている間、私はリュカ様に謝罪致します。
「あの、リュカ様。申し訳ありませんでした。私の所為で、折角の社交界の場を台無しにしてしまって」
リュカ様は微笑みながら、首を横に振られました。
「お気になさらないで下さい。お母様の形見を、あの様に扱われたら怒るのも当然です。まあ、手を出したのは如何かと思いますが。私もやってしまいましたしね」
少々、照れたように笑う、リュカ様。
その後、真剣な眼差しをされました。
「ですが紳士として、何よりも男として、女性を叩いてしまったことは恥ずべき行為だと思っています。その点に関しては、どんな罰も受ける覚悟は出来ています」
私は、そのお言葉を否定せずにはいられませんでした。
「そんな!リュカ様は私の為に怒って下さったのです。罰を受けるなら、私が全て受けるべきです」
「クロエさん。貴女のお気持ちは嬉しいのですが、悪いことをしたら罰を受ける。それは当たり前の事です。後悔はしていません。私もマリー嬢の行為に関しては、強い憤りを覚えましたから」
私は、二の句が繋げずにいました。巻き込んでしまった事に対する、リュカ様への申し訳なさで胸が一杯になるばかりです。そして責任を取ると決心された方に対して、これ以上物申すのは、侮辱にも為り得るのではないかと考えたためです。
そんな沈黙を破るように、ノックの音が響きました。そして、ドアの向こうからは、ジュール侯爵がお姿を現します。
私は、急いで立ち上がりました。
「ジュール侯爵。お初にお目に掛かります。私はクロエと申します。この度は、大変なご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
そして、深く頭を下げます。
「父上!私もこの度の騒動について、謝罪させて下さい。侯爵家という立場にありながら女性に手を上げるなど、恥ずべき行為です。どんな罰でも受ける所存です」
「頭を上げなさい。クロエ嬢」
ジュール侯爵の、低くよく通った、その声を聞いて、私は視線を侯爵に向けました。
「君の事は知っている。ご母堂がお亡くなりになられたことは、私も非常に残念だった。非常に聡明な女性だったからね」
そして、私をジッと見つめると、侯爵は、小さく笑われました。
「君もご母堂によく似て、非常に賢いのだな。全く、親子2代で商戦に負けるとは」
仰っている意味が分からず、私は閉口しました。そんな私を見つめたまま、侯爵はコホンと軽く咳払いをされます。
「さて…大体の事は既に聞いている。君が憤りを覚え思わず手を挙げたことも、仕方のない事かもしれない。そして、リュカ。お前の行動もまた、クロエ嬢の事を想っての事だろう」
その言葉を聞いて、私は少々安堵しました。
ですが、、、
「しかしだ。それと、マリー嬢へ暴力を振るったことに対する責任は別問題だ。当然、先方に謝罪を入れるし、マリー嬢が望むのなら治療費もお支払いする」
「はい。後日、クロエ嬢と共に、謝罪にお伺い致します」
リュカ様は、伏し目がちに、そう仰いました。
「そして、ゴーティエ家の屋敷内にて問題を起こした。私も勿論、足を運んで下さった皆様にもご迷惑をお掛けしたことも理解しているな」
私は、再び頭を下げました。
「はい。重々承知しております。何でも仰って下さい。お許し頂けるのならば、私に出来る事を何でもさせて頂きます」
「…ほう。何でもかね?」
「左様で御座います」
私とリュカ様の目を、交互に鋭い眼光で見つめる侯爵。生きた心地がしません。
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侯爵から言い渡されたその内容は、控えめに言っても衝撃的なものでした。
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