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10話
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侯爵から処分を言い渡された、私とリュカ様。
2人で夜が更けるまで、今後の事についてお話を致しました。
「クロエさん。本当に良いのですか?先ずは私の補佐を務める、という形でも宜しいのですよ」
「いえ、この度の侯爵から下された処分は、私にとっていい契機となりました。ずっとそうしたいと、考えていたのに今まで踏み出せなかったのです」
思案気な表情をされるリュカ様でしたが、次第に微笑みに変わっていきました。
「分かりました。そういう事でしたら、私も全力で取り組ませて頂きます。パートナーとなるクロエさんの為です。どんなサポートも惜しみません」
そして、私とリュカ様は、握手を交わしました。
「パートナーと、言われると少々照れ臭いですね。でも、これから宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いします。それでは、明日。いえ、もう今日でしたか。お迎えに上がりますね」
「はい。お待ち申し上げています」
そして私は、ジュール侯爵家のお屋敷を後にしました。
我が家に着いた時、既に父は床に着いていたようです。
「良かった。今日は、色々あって疲れたし、急いで準備もしないと」
ベッドの上で、そのような事を呟きます。
その時、不意にノックの音が聞こえました。一瞬、父が来たのかと思いましたが、思えばあの人が、私の部屋にノックして入る事なんて有りませんでしたね。用事があれば、髪を掴まれて、強引に起こされていましたから。
「ナタリー?」
ドアをほんの少しだけ開き、ナタリーが顔を覗かせました。
「お嬢様。深夜に申し訳ございません。入っても宜しいでしょうか?」
「ええ、勿論よ。丁度良かったわ。私も貴女とお話がしたかったの。でも先ずは、貴女の話を聞かせて。マリー様の件よね?」
「はい。仰る通りで御座います。災難でしたね」
「災難?マリー様からは、どのように話が伝わっているのかしら?」
ハア、と溜息を吐くナタリー
「そうですわね。かい摘んでご説明いたしますと、お嬢様と、ジュール侯爵の御子息に難癖をつけられていきなり殴られたと」
あら、脚色というよりは最早、事実無根ですね。確かに殴りましたけども。
「大丈夫ですよ。お嬢様。少なくとも私は、マリー様の虚言癖を理解しています。先ほど申し上げた“災難”は、お召し物を見れば何となく理解できます」
言われてみれば、赤ワインが掛かったままの、ドレスを着ていましたわ。
「どうせマリー様が余計なことをして、クロエお嬢様とご子息のお怒りを買っただけでしょうに。それよりも、です。例の如く、旦那様はマリー様の発言を鵜呑みにしております。クロエお嬢様に、どんな罰を与えようかと息巻いている始末です。私は既に我慢の限界です。これでもし、クロエお嬢様に酷い仕打ちをされるようでしたら、私は旦那様に打って出ます」
私の身を案じて、息巻くナタリー。やっぱり優しい女性です。
「そう、教えてくれてありがとう。でも、もう大丈夫だから」
私の発言を聞いて、ナタリーは不思議そうな表情をしています。
「大丈夫、ですか?」
「ええ、ナタリー。これから私の言う事を聞いて、決めて欲しい事があるの。勿論、無理強いもしないし、どんな関係になっても、私にとって貴女が大切な人だという事に変わりはないわ」
そして私は、ナタリーにお話をしました。今日の事、そしてこれからの事を。
私の話を聞き終わったナタリーは、ニヤッと笑いました。
「最高ですわね。お嬢様」
「それじゃあ、良いの?」
グッ、と親指を立てるナタリーの表情は嬉しそうです。
「そういう事でしたら、直ぐに準備を致します。終わり次第、直ぐにクロエお嬢様のお手伝いをさせて頂きますね」
彼女は勢いよく、私の部屋を飛び出しました。
さあ、私も準備を急ぎましょう。
…この家を発つための。
2人で夜が更けるまで、今後の事についてお話を致しました。
「クロエさん。本当に良いのですか?先ずは私の補佐を務める、という形でも宜しいのですよ」
「いえ、この度の侯爵から下された処分は、私にとっていい契機となりました。ずっとそうしたいと、考えていたのに今まで踏み出せなかったのです」
思案気な表情をされるリュカ様でしたが、次第に微笑みに変わっていきました。
「分かりました。そういう事でしたら、私も全力で取り組ませて頂きます。パートナーとなるクロエさんの為です。どんなサポートも惜しみません」
そして、私とリュカ様は、握手を交わしました。
「パートナーと、言われると少々照れ臭いですね。でも、これから宜しくお願い致します」
「こちらこそ、宜しくお願いします。それでは、明日。いえ、もう今日でしたか。お迎えに上がりますね」
「はい。お待ち申し上げています」
そして私は、ジュール侯爵家のお屋敷を後にしました。
我が家に着いた時、既に父は床に着いていたようです。
「良かった。今日は、色々あって疲れたし、急いで準備もしないと」
ベッドの上で、そのような事を呟きます。
その時、不意にノックの音が聞こえました。一瞬、父が来たのかと思いましたが、思えばあの人が、私の部屋にノックして入る事なんて有りませんでしたね。用事があれば、髪を掴まれて、強引に起こされていましたから。
「ナタリー?」
ドアをほんの少しだけ開き、ナタリーが顔を覗かせました。
「お嬢様。深夜に申し訳ございません。入っても宜しいでしょうか?」
「ええ、勿論よ。丁度良かったわ。私も貴女とお話がしたかったの。でも先ずは、貴女の話を聞かせて。マリー様の件よね?」
「はい。仰る通りで御座います。災難でしたね」
「災難?マリー様からは、どのように話が伝わっているのかしら?」
ハア、と溜息を吐くナタリー
「そうですわね。かい摘んでご説明いたしますと、お嬢様と、ジュール侯爵の御子息に難癖をつけられていきなり殴られたと」
あら、脚色というよりは最早、事実無根ですね。確かに殴りましたけども。
「大丈夫ですよ。お嬢様。少なくとも私は、マリー様の虚言癖を理解しています。先ほど申し上げた“災難”は、お召し物を見れば何となく理解できます」
言われてみれば、赤ワインが掛かったままの、ドレスを着ていましたわ。
「どうせマリー様が余計なことをして、クロエお嬢様とご子息のお怒りを買っただけでしょうに。それよりも、です。例の如く、旦那様はマリー様の発言を鵜呑みにしております。クロエお嬢様に、どんな罰を与えようかと息巻いている始末です。私は既に我慢の限界です。これでもし、クロエお嬢様に酷い仕打ちをされるようでしたら、私は旦那様に打って出ます」
私の身を案じて、息巻くナタリー。やっぱり優しい女性です。
「そう、教えてくれてありがとう。でも、もう大丈夫だから」
私の発言を聞いて、ナタリーは不思議そうな表情をしています。
「大丈夫、ですか?」
「ええ、ナタリー。これから私の言う事を聞いて、決めて欲しい事があるの。勿論、無理強いもしないし、どんな関係になっても、私にとって貴女が大切な人だという事に変わりはないわ」
そして私は、ナタリーにお話をしました。今日の事、そしてこれからの事を。
私の話を聞き終わったナタリーは、ニヤッと笑いました。
「最高ですわね。お嬢様」
「それじゃあ、良いの?」
グッ、と親指を立てるナタリーの表情は嬉しそうです。
「そういう事でしたら、直ぐに準備を致します。終わり次第、直ぐにクロエお嬢様のお手伝いをさせて頂きますね」
彼女は勢いよく、私の部屋を飛び出しました。
さあ、私も準備を急ぎましょう。
…この家を発つための。
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