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12話
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マリー様のいる屋敷へと向かう馬車の中、私達は束の間の休息とでもいうのでしょうか。
ほんの少しだけ、ゆったりとした時間を過ごすのでした。
初めてお会いしたリュカ様とナタリーは、お互い自己紹介を済ませます。雑談を通して、ナタリーの事をリュカ様も気に入って下さっているようにお見受けしました。
「ところでリュカ様。先ほどは、随分と良いタイミングで入ってこられましたね」
私は、ジトっとした目でリュカ様を見つめます。
「…いや、お察しの通りです。予定の時刻を少し過ぎていたので、お屋敷に入らせて頂きました。ドアの前まで通して貰ったところ、皆さんの話声が聞こえましたので思わず聞き耳を立ててしまいました。ですが、あのタイミングの登場は中々のものではなかっですか?」
軽く頬を掻きながら、気まずそうに笑うリュカ様。
私は、笑みを零しました。
「いえ、実際に助かりました。私もお時間を過ぎてしまい申し訳なかったです。それに、今頃アントニー子爵は悔しがっていると思います。私とリュカ様が、お付き合いをしていると勘違いしたと思いますので」
そう、まさか私が侯爵家の御子息と懇意にしていると思えば、私を手放したことを大きな損失だと思っているはずです。侯爵家と親族になれば、享受できる権利は絶大なものですから。悔しがっているアントニー子爵を想像ると、胸がスッとしました。
「クロエお嬢様。今からマリー様のお屋敷へと向かうわけですが、その算段と申しますか、大丈夫なのでしょうか?」
ナタリーの質問に対して、リュカ様がお答えになります。
「ええ、問題はありません。昨晩のうちに使用人に頼んで、マリー嬢とマルタン伯爵宛てに、本日伺ってもいいかという旨の書面を出しておきました。ここに来る前に、了承のお返事をマルタン伯爵の署名付きで頂けました」
そして、私とリュカ様はお互い見つめ合いました。
「リュカ様。昨日お話をした通りの手筈で行きましょう」
「ええ、きっと上手くいきますよ。この件が片付いたら、3人で打ち上げといきましょう。我々の新たな門出に」
「それは素敵なご提案ですね」
そう言って、ナタリーは笑いました。そして直ぐに、真剣な眼差しを私に向けるのでした。
「クロエお嬢様。もしもの事があっても、私は貴方についていきます。今日限りで貴女を縛ってきた鎖を断ち切りましょう」
「ありがとう、ナタリー。ええ、今まで散々な目に合ってきたのです。それなりの報いは受けて頂きましょう」
私もまた、強い決意を持って窓の外を睨むように見つめました。
そして、各々の思いを乗せた馬車は、目的地まで力強く走るのでした。
ほんの少しだけ、ゆったりとした時間を過ごすのでした。
初めてお会いしたリュカ様とナタリーは、お互い自己紹介を済ませます。雑談を通して、ナタリーの事をリュカ様も気に入って下さっているようにお見受けしました。
「ところでリュカ様。先ほどは、随分と良いタイミングで入ってこられましたね」
私は、ジトっとした目でリュカ様を見つめます。
「…いや、お察しの通りです。予定の時刻を少し過ぎていたので、お屋敷に入らせて頂きました。ドアの前まで通して貰ったところ、皆さんの話声が聞こえましたので思わず聞き耳を立ててしまいました。ですが、あのタイミングの登場は中々のものではなかっですか?」
軽く頬を掻きながら、気まずそうに笑うリュカ様。
私は、笑みを零しました。
「いえ、実際に助かりました。私もお時間を過ぎてしまい申し訳なかったです。それに、今頃アントニー子爵は悔しがっていると思います。私とリュカ様が、お付き合いをしていると勘違いしたと思いますので」
そう、まさか私が侯爵家の御子息と懇意にしていると思えば、私を手放したことを大きな損失だと思っているはずです。侯爵家と親族になれば、享受できる権利は絶大なものですから。悔しがっているアントニー子爵を想像ると、胸がスッとしました。
「クロエお嬢様。今からマリー様のお屋敷へと向かうわけですが、その算段と申しますか、大丈夫なのでしょうか?」
ナタリーの質問に対して、リュカ様がお答えになります。
「ええ、問題はありません。昨晩のうちに使用人に頼んで、マリー嬢とマルタン伯爵宛てに、本日伺ってもいいかという旨の書面を出しておきました。ここに来る前に、了承のお返事をマルタン伯爵の署名付きで頂けました」
そして、私とリュカ様はお互い見つめ合いました。
「リュカ様。昨日お話をした通りの手筈で行きましょう」
「ええ、きっと上手くいきますよ。この件が片付いたら、3人で打ち上げといきましょう。我々の新たな門出に」
「それは素敵なご提案ですね」
そう言って、ナタリーは笑いました。そして直ぐに、真剣な眼差しを私に向けるのでした。
「クロエお嬢様。もしもの事があっても、私は貴方についていきます。今日限りで貴女を縛ってきた鎖を断ち切りましょう」
「ありがとう、ナタリー。ええ、今まで散々な目に合ってきたのです。それなりの報いは受けて頂きましょう」
私もまた、強い決意を持って窓の外を睨むように見つめました。
そして、各々の思いを乗せた馬車は、目的地まで力強く走るのでした。
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