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第十七章

とある二百年後のレールキャノン

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 バイザーに映った映像は、偵察ドローン採雲から送られてきたものだった。

 無数と思える曳光弾が飛び交う中、こちらのドローンが要塞に攻撃を仕掛けている。 

 時折、屋上からミサイルも上がってきた。

 だが、そのほとんどが無誘導のロケット弾というところを見ると、誘導弾の類いは撃ち尽くしたようだな。

 対空砲やロケット砲の他にも、自動小銃などでドローンを迎撃している兵士もちらほらと見かけられた。

 中には石を投げている兵士まで……

 ここまでくると末期だな。

『北村隊長、お戻りでしたか』

 不意にヘルメット内通信機から、鴨居三尉の声が流れた。

「さっき戻ったところだよ。今は甲板で補給中だ」
『では、軽く状況を説明させて頂きます』
「頼む」
『現在、要塞攻撃中のドローン戦力は、すでに六割を失っています。一方、敵の対空砲も半分は破壊に成功しました。敵も迎撃ドローンを数機上げてきましたが、すべて撃墜済みです』
「なるほど。それで、要塞内の敵戦力は、どのぐらい屋上に出てきたかな?」
『現在のところ、推定戦力の六割強が上がってきています』

 六割か。七~八割は引きずり出したかったが……

『こちらのドローンの数が減ってきたので、これ以上の敵兵を引きずり出すのは難しいかと……』
「そうか。ありがとう」

 欲を言ってはきりがない。せっかく屋上に引きずり出した敵兵に、また引っ込まれてはかなわんし、そろそろ一掃するか。

 数秒後、《はくげい》甲板上で八十ミリ電磁砲レールキャノンが鎌首をもたげた。
 
ー!』

 長津田艦長の号令の後、砲撃が始まる。

 それにしても、僕がいた時代の電磁砲レールキャノンと言ったら、砲弾には信管も炸薬もなく、ただ極超音速の弾丸で標的を貫くという兵器だったはず。

 当時は電磁砲レールキャノン射撃時の膨大な加速度や磁場に耐えられるだけの、炸薬や誘導装置がなかったからだ。

 命中率を上げるために、散弾のように分裂するような弾丸が開発されたりしていたが、基本的に電磁砲レールキャノンとは砲弾の運動エネルギーだけで敵を破壊するという兵器だったはず。

 しかし、二百年後のこの世界で僕が見た電磁砲レールキャノンは、砲弾内に炸薬も誘導装置も普通に装備していた。

 砲弾の発射速度も、極超音速から亜音速まで自在に調整できるというらしい。

 なんて、考えている間に砲弾は要塞上を一掃していた。。

 今回使用した砲弾は、対人榴弾。

 屋上付近で破裂して、周囲に鋼球をばらまくという人の殺傷に特化した弾丸だ。

 それが十発ほど撃ち込まれただけで、要塞屋上は地獄と化していた。

 いつ見ても嫌な光景だな。

 思わず僕は手を合わせる。

 迷わず成仏してくれ。次に君たちが生まれるときは、平和な世界になっていることを祈る。
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