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冥婚
コタツでトランプ
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「スリーカード」
僕はコタツの上に、自分のカードを並べた。
その横に荻原君がカードを並べる。
「フルハウス」
負けた。
「二人とも甘いわね」
そう言って樒がコタツの上に並べたカードの組み合わせは、ストレートフラッシュ。
「私の勝ちね」
勝ち誇る樒。だが……
「わらわは、ロイヤルストレートフラッシュぞよ」
「嘘!」
「嘘ではない」
そう言ってハーちゃんがコタツの上に並べたカードの組み合わせは、間違えなくスペードのロイヤルストレートフラッシュ。
「わーい! わらわの勝ちじゃ!」
ハーちゃんは、三個のミカンをお手玉にして喜ぶ。
「ねえ、優樹」
ん? 樒の方を向いた。
「疑問なのだけど」
「なんだい?」
「私たちさ、なんで荻原君の部屋でコタツに入って、ミカン食べながら……」
そこで樒は、ハーちゃんを指さす。
「こいつを交えて、ポーカーなんかやっているんだっけ?」
なんでだろう?
そう!
さっき、ハーちゃんが入ってきた後、荻原君の部屋で話をしようという事になって、二階の荻原君の部屋に入った後、ハーちゃんが『うう! 寒い!』と言ってコタツにもぐり込んでから、近くに置いてあるトランプを見つけて、話をする前にトランプをやろうと駄々をこねたのだ。
それで、すぐにポーカーを始めたのかと言うと、その前に七並べ、神経衰弱、ババ抜き、大貧民をやっていた。
「そうだったわね。ポーカーを始めた時には、なんでここにいるのかすっかり忘れていたわ」
樒は勝ち誇っているハーちゃんの耳を引っ張った。
「痛たた! 何をするのじゃ!? ポーカーで負けた腹いせに、か弱い幼女を虐めるなど最低じゃ」
「何が幼女よ。このロリババア! いい加減遊んでいないで本題に入りなさい」
「やじゃ! やじゃ! もっと遊びたいのじゃ」
「そもそも、あんたどうやって結界を抜けて入って来られたのよ?」
「わらわは死神じゃ! だから、すり抜けられたのじゃ」
「また、そんな嘘を。悪神のくせに」
「悪神なら、結界を抜けられないぞよ」
いや、こいつが結界を通れたのは肉体があったからだろう。
結界は霊体を通さないが、肉体を持った人間は通してしまう。
ハーちゃんの場合、自在に霊体を肉体に変える能力があるので、結界ではこいつの侵入を防げないんだ。
「いい加減、用件を言いなさいよ。私たちは忙しいのよ」
「せっかちな女じゃ。わらわは最初に『遊びに来た』と言ったはずじゃ。だから、遊んでいるのじゃ」
「うそおっしゃい! 荻原君を霊界に連れて行く気でしょ」
「もちろんじゃ。お昼になったら、新を黄泉の国へ連れて行く。その時間になる前に、この世の思い出作りにわらわは遊んでやっているのじゃ」
やはり連れて行く気か。
「あの……ハーちゃん」
「ん? なんじゃ新。トランプ以外の遊びをしたいのか?」
「そうじゃなくて……僕は黄泉の国へ行くなんて言ってはいないのだけど……」
「なんじゃと! ではおぬし、露を騙したのか!」
「いや……騙したわけじゃなくて」
「非道い奴じゃ。乙女心を弄びおって」
「いや……そうじゃなくて……」
「かわいそうにのう。露。好きな男に裏切られて……ううう」
「ええかげんにせんかい! このロリババア!」
パシ!
嘘泣きする幼女の頭を、樒がハリセンで叩く。
「なにすんじゃ! この大女!」
「大女言うな! そもそも最初に嘘をついていたのは、露ちゃんの方でしょ」
「ほう。露がどんな嘘を付いたというのじゃ? 露は新にバレンタインチョコを渡して『一緒に逝って』と言っただけじゃ。新はそれに同意したぞ」
「だから……それは……」
言葉に詰まった樒に代わり、僕がハーちゃんの相手をする。
「確かに露さんは嘘を付いていないけど、告知義務を果たしていないよ」
「なんじゃと?」
「まず、飯島露さんは、自分が死んでいる事を荻原君に話していなかった。そして行き先を言わないで『一緒に逝こう』と言った。飯島露さんが死んでいて、行き先が霊界だと分かっていたら、荻原君は断っていたはずだよ」
「確認もしないで返事する新が悪い」
「じゃあ飯島露さんは、最初から荻原君に勘違いをさせる目的で、実は死んでいるという重大な事実を隠していたというのかい?」
「重大な事実とは大げさな。たかが命があるかないかぐらい……」
ポカ!
いきなり樒が、ハーちゃんの頭を叩いた。
「痛い! いきなり何するのじゃ」
「《たかが命があるかないかぐらい》にビビッとしました……つーかムカついたから叩いた。次に命を軽んじるような事言ったら蹴るわよ」
「怖い女じゃ」
ハーちゃんは僕の方を振り向く。
「おまえ、よくあんな凶暴な女と、コンビを組んでいられるな」
好きで組んでいるのじゃないのだけど……
「とにかく、荻原君は、飯島露さんが言った『一緒にいこう』をデートの誘いだと思って承諾したのだよ。飯島露さんは自分が死んでいる事と、行き先が霊界である事を隠していた。告知義務を果たしていない。よって、荻原君には一緒に霊界に逝く義務はない」
「ううむ、難しい事はよく分からぬが、新は勘違いしていたというのじゃな?」
「そうだよ」
「そうか。では、仕方ないのお。では、露には諦めて一人で黄泉へ逝くように伝えよう」
納得したのか?
「喜んでいる露には、なんと説明すればよいものか?」
ハーちゃんは一人で部屋を出ていく。
しかし、なにか腑に落ちない。
何か他に企んでいるのでは……?
『荻原君。どうしてあたしを閉め出すの?』
これは!? 飯島露の声!
『荻原君。結界から出てきてよ。一緒に黄泉へ逝こうよ』
バカな! この結界は、幽霊の声だって遮るはずなのに……
僕はコタツの上に、自分のカードを並べた。
その横に荻原君がカードを並べる。
「フルハウス」
負けた。
「二人とも甘いわね」
そう言って樒がコタツの上に並べたカードの組み合わせは、ストレートフラッシュ。
「私の勝ちね」
勝ち誇る樒。だが……
「わらわは、ロイヤルストレートフラッシュぞよ」
「嘘!」
「嘘ではない」
そう言ってハーちゃんがコタツの上に並べたカードの組み合わせは、間違えなくスペードのロイヤルストレートフラッシュ。
「わーい! わらわの勝ちじゃ!」
ハーちゃんは、三個のミカンをお手玉にして喜ぶ。
「ねえ、優樹」
ん? 樒の方を向いた。
「疑問なのだけど」
「なんだい?」
「私たちさ、なんで荻原君の部屋でコタツに入って、ミカン食べながら……」
そこで樒は、ハーちゃんを指さす。
「こいつを交えて、ポーカーなんかやっているんだっけ?」
なんでだろう?
そう!
さっき、ハーちゃんが入ってきた後、荻原君の部屋で話をしようという事になって、二階の荻原君の部屋に入った後、ハーちゃんが『うう! 寒い!』と言ってコタツにもぐり込んでから、近くに置いてあるトランプを見つけて、話をする前にトランプをやろうと駄々をこねたのだ。
それで、すぐにポーカーを始めたのかと言うと、その前に七並べ、神経衰弱、ババ抜き、大貧民をやっていた。
「そうだったわね。ポーカーを始めた時には、なんでここにいるのかすっかり忘れていたわ」
樒は勝ち誇っているハーちゃんの耳を引っ張った。
「痛たた! 何をするのじゃ!? ポーカーで負けた腹いせに、か弱い幼女を虐めるなど最低じゃ」
「何が幼女よ。このロリババア! いい加減遊んでいないで本題に入りなさい」
「やじゃ! やじゃ! もっと遊びたいのじゃ」
「そもそも、あんたどうやって結界を抜けて入って来られたのよ?」
「わらわは死神じゃ! だから、すり抜けられたのじゃ」
「また、そんな嘘を。悪神のくせに」
「悪神なら、結界を抜けられないぞよ」
いや、こいつが結界を通れたのは肉体があったからだろう。
結界は霊体を通さないが、肉体を持った人間は通してしまう。
ハーちゃんの場合、自在に霊体を肉体に変える能力があるので、結界ではこいつの侵入を防げないんだ。
「いい加減、用件を言いなさいよ。私たちは忙しいのよ」
「せっかちな女じゃ。わらわは最初に『遊びに来た』と言ったはずじゃ。だから、遊んでいるのじゃ」
「うそおっしゃい! 荻原君を霊界に連れて行く気でしょ」
「もちろんじゃ。お昼になったら、新を黄泉の国へ連れて行く。その時間になる前に、この世の思い出作りにわらわは遊んでやっているのじゃ」
やはり連れて行く気か。
「あの……ハーちゃん」
「ん? なんじゃ新。トランプ以外の遊びをしたいのか?」
「そうじゃなくて……僕は黄泉の国へ行くなんて言ってはいないのだけど……」
「なんじゃと! ではおぬし、露を騙したのか!」
「いや……騙したわけじゃなくて」
「非道い奴じゃ。乙女心を弄びおって」
「いや……そうじゃなくて……」
「かわいそうにのう。露。好きな男に裏切られて……ううう」
「ええかげんにせんかい! このロリババア!」
パシ!
嘘泣きする幼女の頭を、樒がハリセンで叩く。
「なにすんじゃ! この大女!」
「大女言うな! そもそも最初に嘘をついていたのは、露ちゃんの方でしょ」
「ほう。露がどんな嘘を付いたというのじゃ? 露は新にバレンタインチョコを渡して『一緒に逝って』と言っただけじゃ。新はそれに同意したぞ」
「だから……それは……」
言葉に詰まった樒に代わり、僕がハーちゃんの相手をする。
「確かに露さんは嘘を付いていないけど、告知義務を果たしていないよ」
「なんじゃと?」
「まず、飯島露さんは、自分が死んでいる事を荻原君に話していなかった。そして行き先を言わないで『一緒に逝こう』と言った。飯島露さんが死んでいて、行き先が霊界だと分かっていたら、荻原君は断っていたはずだよ」
「確認もしないで返事する新が悪い」
「じゃあ飯島露さんは、最初から荻原君に勘違いをさせる目的で、実は死んでいるという重大な事実を隠していたというのかい?」
「重大な事実とは大げさな。たかが命があるかないかぐらい……」
ポカ!
いきなり樒が、ハーちゃんの頭を叩いた。
「痛い! いきなり何するのじゃ」
「《たかが命があるかないかぐらい》にビビッとしました……つーかムカついたから叩いた。次に命を軽んじるような事言ったら蹴るわよ」
「怖い女じゃ」
ハーちゃんは僕の方を振り向く。
「おまえ、よくあんな凶暴な女と、コンビを組んでいられるな」
好きで組んでいるのじゃないのだけど……
「とにかく、荻原君は、飯島露さんが言った『一緒にいこう』をデートの誘いだと思って承諾したのだよ。飯島露さんは自分が死んでいる事と、行き先が霊界である事を隠していた。告知義務を果たしていない。よって、荻原君には一緒に霊界に逝く義務はない」
「ううむ、難しい事はよく分からぬが、新は勘違いしていたというのじゃな?」
「そうだよ」
「そうか。では、仕方ないのお。では、露には諦めて一人で黄泉へ逝くように伝えよう」
納得したのか?
「喜んでいる露には、なんと説明すればよいものか?」
ハーちゃんは一人で部屋を出ていく。
しかし、なにか腑に落ちない。
何か他に企んでいるのでは……?
『荻原君。どうしてあたしを閉め出すの?』
これは!? 飯島露の声!
『荻原君。結界から出てきてよ。一緒に黄泉へ逝こうよ』
バカな! この結界は、幽霊の声だって遮るはずなのに……
応援ありがとうございます!
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