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事故物件2

ソーラーLEDランタン

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 スマホの明かりを声の方に向けたが、扉があるだけで魔入さんの姿はない。

 声は、ドアの向こうから発せられたようだ。

 結界内に、入られたわけではないな。

「出ておいで。人の部屋へ勝手に入るなんて、悪い子だよ」

 大丈夫だ。お札がある限り、悪霊はこの扉には触れる事もできないはず。

「出てこいって言ってんだよ! このガキ!」

 ひいい! 急に口調が怖くなった。

「女の部屋に入りやがって、この変態エロガキ!」

 ショタエロ漫画なんか読んでいるような人に、言われたくないよ。

「お仕置きしてやるから、とっとと出てこい!」

 怖い!

「優樹君、大丈夫でちゅ。この部屋にいる限り、あいつは手を出せないでちゅ」

 スマホの呼び出し音が鳴ったのはその時。

 先生? と思ったら樒だった。

「もしもし、樒」
『優樹、大丈夫?』
「あんまし大丈夫じゃないけど……大丈夫」
『どっちなのよ?』
「今のところは、結界の中にいるので大丈夫。でも、結界の外には、悪霊に憑依された魔入さんがいて」
『分かった。もうすぐ……』

 そこで樒の声が途切れた。

 どうしたのだろう?

 うわ! スマホが電池切れ!

 室内はたちまち真っ暗になった。

「ネズ子さん。何か明かりはない?」
「ちょっと待つでちゅ」

 突然明かりが灯った。

 光源は、さっきから本棚の上にあったLEDランタン?

 なんで? 電池切れじゃなかったの?

 それとも……

「ネズ子さん。そのランタン、ネズ子さんが予め持ち込んでいたの?」
「違うでちゅ。元々、この部屋にあったでちゅ」
「じゃあ、なんで充電されているの? この家の電気は、何年も前に止められているのでしょ?」
「これ、太陽電池が着いているでちゅ」

 ソーラーランタンだったのか。

 しかし、この部屋の窓は何年も前から雨戸が閉じられていた。

 どこから日の光が差し込んでいたんだ?

「ごらあ! ガキ! 出てこい!」

 ドアの向こうでは相変わらず、悪霊に憑依された魔入さんががなり立てているが……これって僕らの注意を何かから反らすためでは?

 何から?

 ソーラーランタンが充電されていたという事は、この部屋のどこかに太陽光の差し込むところがあるはず。

 上を見上げるとそれは見つかった。

 天窓!?

 ここから太陽光が差し込んでいたのか。

 窓の向こうで蔦が蠢いているのが見えた。

 ヤバい! あそこから侵入される。

 お札を貼ろうにもあの高さでは手が届かないし、踏み台にできそうなものもないし……いや、あるぞ。

「ネズ子さん。本棚を動かすのを手伝って」
「どうするでちゅ?」
「天窓にお札を貼る」
「無理でちゅ。この本棚では、高さが足りないでちゅ」

 う! やっぱりそうか。 うわ!

 突然ネズ子が、僕の懐に手を差し込んできた。

「ネズ子さん! 何を?」
「じっとしているでちゅ。ヒョー様からの指示でちゅ」

 ネズ子は僕の懐から何かを取り出すと、素早くそれを巾着の中に放り込む。

 その直後、天窓のガラスが割れて蔦が進入してきた。 
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