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事故物件2
クローゼット
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天窓が割れて、ガラスの破片が降り注いできた。
同時に、天窓から侵入してきた五本の蔦が僕に向かってくる。
咄嗟に抜いた退魔銃を、蔦の先端に向けた。
いや、待て……蠢く先端に当てるのはほぼ不可能。
狙いを天窓に変えた。
一度天窓を抜けて自由に動き回っている蔦を狙うよりも、狭い天窓に動きを限定されている部分を狙った方が当てやすい。
そのまま僕は、天窓に向かって撃ちまくった。
狙い通り、天窓を通っていた蔦はすべて退魔弾を受けて切断されていく。
ボト! ボト!
切断された蔦が、床に落ちてのたうち回った。
その中の一本が僕の足に絡みつくが、すぐに光る粒子となって消滅していく。
他の蔦も本体と切り離されたせいか、すぐに消えてしまった。
しかし……
「すぐに、第二陣が来るでちゅ」
ネズ子は、キョロキョロと周囲を見回す。
「優樹君! あそこにクローゼットがあるでちゅ。あの中に入って、新たな結界を張るでちゅ」
「分かった」
蔦の第二陣が、天窓から侵入してきたのはその時。
僕は退魔銃を撃ちながら、クローゼットに背を向けたまま後退していく。
「優樹君。クローゼットまでもう少しでちゅ。がんばるでちゅ!」
よし! なんとか逃げ込めそう。
「優樹君。クローゼットの扉にもお札が貼ってあるので、あたしでは触れないでちゅ。左手を誘導するから、クローゼットの扉を開いてほしいでちゅ」
「分かった! 頼む」
ネズ子が僕の左腕を掴んで誘導する。
その間も、僕は退魔銃で蔦を退け続けていた。
左掌が何かに当たる。
「それが、クローゼットの取手でちゅ。掴んで引っ張るでちゅ」
「分かった」
取手を掴み、思い切り引っ張る。
背後でクローゼットが開くのが分かった。
「わああ!」
突然、幼女の声が背後からかかる。
うわ!
後から何かが、僕の右足にしがみついてきた。
バランスが崩れる。
左手を床に着いて、なんとか顔面を打ち付けるのは防いだ。
腹這いになった状態で、後ろを見ると僕の右足にタンハーがしがみついている。
こいつ! クローゼット内に先回りしていたのか?
クローゼットの扉はお札を貼ってあったが、中の壁は無防備。霊体化してすり抜けてきたようだ。
「放せ!」
右足を振り回すが、タンハーはがっしりしがみついて離れない。
「放さないぞよ」
ネズ子がタンハーに掴みかかった。
「放すでちゅ!」
「邪魔するな! ネズミ女!」
「その呼び方止めるでちゅ! 三百年お風呂に入っていない不潔な半妖怪の同類と見られそうでイヤでちゅ」
そう叫びながら、ネズ子はタンハーを羽交い締めにして僕から引き離した。
「さあ、優樹君。今のうちにクローゼットへ」
言われるまでもなく、クローゼットへ向かおうとしたその時、背後から声がかかった。
「残念。手遅れでした」
え?
振り返ると、多数の蔦に支えられた魔入さんが、天窓から降りてくるところだった。
同時に、天窓から侵入してきた五本の蔦が僕に向かってくる。
咄嗟に抜いた退魔銃を、蔦の先端に向けた。
いや、待て……蠢く先端に当てるのはほぼ不可能。
狙いを天窓に変えた。
一度天窓を抜けて自由に動き回っている蔦を狙うよりも、狭い天窓に動きを限定されている部分を狙った方が当てやすい。
そのまま僕は、天窓に向かって撃ちまくった。
狙い通り、天窓を通っていた蔦はすべて退魔弾を受けて切断されていく。
ボト! ボト!
切断された蔦が、床に落ちてのたうち回った。
その中の一本が僕の足に絡みつくが、すぐに光る粒子となって消滅していく。
他の蔦も本体と切り離されたせいか、すぐに消えてしまった。
しかし……
「すぐに、第二陣が来るでちゅ」
ネズ子は、キョロキョロと周囲を見回す。
「優樹君! あそこにクローゼットがあるでちゅ。あの中に入って、新たな結界を張るでちゅ」
「分かった」
蔦の第二陣が、天窓から侵入してきたのはその時。
僕は退魔銃を撃ちながら、クローゼットに背を向けたまま後退していく。
「優樹君。クローゼットまでもう少しでちゅ。がんばるでちゅ!」
よし! なんとか逃げ込めそう。
「優樹君。クローゼットの扉にもお札が貼ってあるので、あたしでは触れないでちゅ。左手を誘導するから、クローゼットの扉を開いてほしいでちゅ」
「分かった! 頼む」
ネズ子が僕の左腕を掴んで誘導する。
その間も、僕は退魔銃で蔦を退け続けていた。
左掌が何かに当たる。
「それが、クローゼットの取手でちゅ。掴んで引っ張るでちゅ」
「分かった」
取手を掴み、思い切り引っ張る。
背後でクローゼットが開くのが分かった。
「わああ!」
突然、幼女の声が背後からかかる。
うわ!
後から何かが、僕の右足にしがみついてきた。
バランスが崩れる。
左手を床に着いて、なんとか顔面を打ち付けるのは防いだ。
腹這いになった状態で、後ろを見ると僕の右足にタンハーがしがみついている。
こいつ! クローゼット内に先回りしていたのか?
クローゼットの扉はお札を貼ってあったが、中の壁は無防備。霊体化してすり抜けてきたようだ。
「放せ!」
右足を振り回すが、タンハーはがっしりしがみついて離れない。
「放さないぞよ」
ネズ子がタンハーに掴みかかった。
「放すでちゅ!」
「邪魔するな! ネズミ女!」
「その呼び方止めるでちゅ! 三百年お風呂に入っていない不潔な半妖怪の同類と見られそうでイヤでちゅ」
そう叫びながら、ネズ子はタンハーを羽交い締めにして僕から引き離した。
「さあ、優樹君。今のうちにクローゼットへ」
言われるまでもなく、クローゼットへ向かおうとしたその時、背後から声がかかった。
「残念。手遅れでした」
え?
振り返ると、多数の蔦に支えられた魔入さんが、天窓から降りてくるところだった。
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