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事故物件2
巾着
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巾着は、床に落ちていた。
「おい。ネズミ女。本当にその中か?」
「嘘ではないでちゅ」
「罠ではないな?」
「もちろん、罠でちゅ」
おい……悪びれもなく……
「なんじゃと?」
「忘れたでちゅか? あの巾着は、私が優樹君に渡した物。その中に何があったのか」
「お札か。忌々しいぞよ。菖蒲。取り出してみるぞよ」
「はい」
蔦が巾着に入ろうとするが、巾着の入り口に入った途端、蔦は光る粒子となって消滅してしまう。
「馬鹿者! 蔦ではなく、おまえが直接手を突っ込むぞよ」
「えええええ!」
「なんじゃ! その嫌そうな顔は?」
「あのお札は、かなり強そうですよ」
「今のおまえは、人間の肉体に憑依しているから平気じゃろう」
「分かりました」
渋々悪霊は、巾着に手を突っ込むが……
「ひいいいい!」
悪霊は悲鳴を上げて、巾着から手を引っ込めた。
かなり痛そうだけど、魔入さんの肉体は無事だろうか?
「人間に憑依していても無駄でちゅ。今ここで、この巾着に手を入れられるのは優樹君だけでちゅ」
「何を言っているぞよ。わらわだって、人化してしまえば……」
タンハーが巾着に手を入れた。
「ふぎゃあ!」
タンハーは悲鳴を上げて、巾着から手を引っ込める。
「熱いぞよ! 痛いぞよ!」
「無理でちゅ。そのお札は、正式な段取りを経て転生した人間でないと触れられないでちゅ」
「なんじゃと?」
「その様子だと、おまえは正式な段取りで転生していないでちゅね。大方、誰かの身体を乗っ取ったのでちゅね」
「ぐぬぬ」
悔しそうにタンハーは歯軋りする。
「さあ。スマホを取り出したかったら、優樹君を解放するでちゅ」
「そんな必要はないぞよ」
そう言って、タンハーは巾着を持ち上げた。
何をする気だろう? と思って見ていたら、タンハーは巾着の入り口を広げるとひっくり返した。
「しまった! その手があったでちゅ」
いや、普通予想できるだろ。
巾着内にあったスマホは床に落ち、お札が宙に舞う。
「バカめ! わざわざ手を突っ込まなくても、万有引力の力を借りればこんな事楽勝じゃ! これぞ科学の勝利ぞよ」
「思いっ切り非科学的な存在のくせに、『科学の勝利』とか言うなでちゅ」
「なんとでも言うぞよ。これでわらわの勝利ぞよ。あはははは! ふぎゃあ!」
馬鹿笑いしていたタンハーの顔が、突然苦痛に歪む。
どうしたのだ? あ! 空中を漂っていたお札の一枚が、タンハーの頭にくっついている。
「ふぎゃあ! 痛い! 痛い!」
お札はすぐに落ちたが、そうとう痛かったのかタンハーは涙を流していた。
ちょっと可哀想かな。
「非道い目にあったぞよ。でも、目的は達成したぞよ」
タンハーは、床に落ちていたスマホを拾い上げた。
「おお! これぞ間違えなくわらわの霊界スマホ」
タンハーの身体が発光した。
霊体化したのか。
「これさえ取り返せば、もうここに用は無いぞよ。菖蒲。わらわはもう帰るから、後は好きにしていいぞよ」
「はい、タンハー様。好きなようにいたします」
タンハーは天井を抜けて出ていった。
タンハーを見送った後、悪霊は僕の方を向いて舌なめずりする。
「さあて、坊や。たっぷり可愛がって上げるわよ」
ひいいいい!
「おい。ネズミ女。本当にその中か?」
「嘘ではないでちゅ」
「罠ではないな?」
「もちろん、罠でちゅ」
おい……悪びれもなく……
「なんじゃと?」
「忘れたでちゅか? あの巾着は、私が優樹君に渡した物。その中に何があったのか」
「お札か。忌々しいぞよ。菖蒲。取り出してみるぞよ」
「はい」
蔦が巾着に入ろうとするが、巾着の入り口に入った途端、蔦は光る粒子となって消滅してしまう。
「馬鹿者! 蔦ではなく、おまえが直接手を突っ込むぞよ」
「えええええ!」
「なんじゃ! その嫌そうな顔は?」
「あのお札は、かなり強そうですよ」
「今のおまえは、人間の肉体に憑依しているから平気じゃろう」
「分かりました」
渋々悪霊は、巾着に手を突っ込むが……
「ひいいいい!」
悪霊は悲鳴を上げて、巾着から手を引っ込めた。
かなり痛そうだけど、魔入さんの肉体は無事だろうか?
「人間に憑依していても無駄でちゅ。今ここで、この巾着に手を入れられるのは優樹君だけでちゅ」
「何を言っているぞよ。わらわだって、人化してしまえば……」
タンハーが巾着に手を入れた。
「ふぎゃあ!」
タンハーは悲鳴を上げて、巾着から手を引っ込める。
「熱いぞよ! 痛いぞよ!」
「無理でちゅ。そのお札は、正式な段取りを経て転生した人間でないと触れられないでちゅ」
「なんじゃと?」
「その様子だと、おまえは正式な段取りで転生していないでちゅね。大方、誰かの身体を乗っ取ったのでちゅね」
「ぐぬぬ」
悔しそうにタンハーは歯軋りする。
「さあ。スマホを取り出したかったら、優樹君を解放するでちゅ」
「そんな必要はないぞよ」
そう言って、タンハーは巾着を持ち上げた。
何をする気だろう? と思って見ていたら、タンハーは巾着の入り口を広げるとひっくり返した。
「しまった! その手があったでちゅ」
いや、普通予想できるだろ。
巾着内にあったスマホは床に落ち、お札が宙に舞う。
「バカめ! わざわざ手を突っ込まなくても、万有引力の力を借りればこんな事楽勝じゃ! これぞ科学の勝利ぞよ」
「思いっ切り非科学的な存在のくせに、『科学の勝利』とか言うなでちゅ」
「なんとでも言うぞよ。これでわらわの勝利ぞよ。あはははは! ふぎゃあ!」
馬鹿笑いしていたタンハーの顔が、突然苦痛に歪む。
どうしたのだ? あ! 空中を漂っていたお札の一枚が、タンハーの頭にくっついている。
「ふぎゃあ! 痛い! 痛い!」
お札はすぐに落ちたが、そうとう痛かったのかタンハーは涙を流していた。
ちょっと可哀想かな。
「非道い目にあったぞよ。でも、目的は達成したぞよ」
タンハーは、床に落ちていたスマホを拾い上げた。
「おお! これぞ間違えなくわらわの霊界スマホ」
タンハーの身体が発光した。
霊体化したのか。
「これさえ取り返せば、もうここに用は無いぞよ。菖蒲。わらわはもう帰るから、後は好きにしていいぞよ」
「はい、タンハー様。好きなようにいたします」
タンハーは天井を抜けて出ていった。
タンハーを見送った後、悪霊は僕の方を向いて舌なめずりする。
「さあて、坊や。たっぷり可愛がって上げるわよ」
ひいいいい!
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