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嫌悪の魔神

霊能者ならではの方法

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 柴田さんは、そこで話を終えた。

 それにしても寒太の奴、思っていたよりもとんでもない悪ガキだな。

 ミクちゃんも顔に怒りを浮かべている。

「あのさあ、ミクちゃん。男がみんな、寒太みたいな奴だと思わないでほしいな」
「分かっているわよ。優樹君は、そんな事しないもんねえ」

 ミクちゃん、分かってくれてありがとう。

「どっちかというと優樹君って、セクハラをする方じゃなくてされる方だし……」

 まあ、それはともかく。

 僕はスマホにグー◯ルマップを表示した。

「柴田さん。昨日、寒太を目撃した場所を教えてくれないかな」
「はい」

 柴田さんは、マップの一カ所を指さす。

「最初に見たのはこの交差点です。それからこっちの方へ移動していきました」

 小さな手がかりだが、これはかなり助かった。

「ありがとう。これはささやかなお礼です」

 僕は千円の図書カードを差し出した。

 協力者への謝礼用として、協会から配布されているカードだ。

「ええ!? いいのですか?」
「たいしたものじゃないから、遠慮なく受け取ってください。それでは……」

 柴田さんに別れを告げると、僕たちは樒達と合流して柴田さんが昨日寒太を目撃した場所……八名駅前交差点へと向かった。

「でも、優樹。それっぽっちの手がかりで、どうやって捜すの?」

 樒の疑問も、もっともだな。

 警察なら付近の監視カメラの映像を調べるところだけど、僕たちの権限ではそんなことはできない。

 だけど、霊能者ならではの方法がある。
 
「霊能者ならではの方法? そんな方法あるの?」
「まあ見ていな」

 程なくして、交差点に着いた僕は周囲を霊視した。

 地縛霊や浮遊霊が十体ほどいる。

 この中で状態のよい地縛霊はいないかな?

 いた!

「すみませーん。ちょっとお話よろしいですか?」
 
 僕が声をかけたのは、八十代ぐらいのホームレスのおじいさんの地縛霊。

「なるほど、地縛霊に聞くのね。これなら確かに私達霊能者にしかできないわ」
「優樹君あったまいい!」

 樒とミクちゃんに誉められて悪い気はしないけど、この方法は別に僕が考えたわけじゃなくて、以前から警察の依頼を受けた霊能者はこういう事をしているのだ。

 僕の場合、父さんからの依頼でこういう事をよくやっていたのだけど……

 それとこの方法は、あまり人には言うなと言われている。

 犯罪者に対策を立てられるから。

 なので樒とミクちゃんには、このことは言わないよう釘を刺しておいた。

 まあ、それはいいとしてこの方法にも問題がある。

 死んでから時間の経ちすぎた地縛霊は、明確な思考ができなくなるという事だ。

 そうなると、まともな証言を得られないのだが、このじいさんはどうだろう?

「何かね? わしが見えるという事は、坊やは霊能者かい?」

 自分が幽霊だと自覚できているようだ。

 これならいけそう。

「ちょっと、人探しをしているのですが」

 そう言って僕は寒太を指さした。

「この男の子を、見かけなかったですか?」
「ん?」

 じいさんは目を凝らして寒太を見つめた。

「こいつは!」

 じいさんは驚いたような顔をする。

「いつも、わしに石を投げつけてくる悪ガキじゃ!」

 なに!

「おまえ、そんな事していたのか!」
「なんだよ。乞食に石を投げて悪いかよ」
「悪いに決まっているでしょ!」

 そう言って樒は、寒太の頭を殴りつけた。

「痛てえ! 子供を殴るのはいいのかよ!」
「悪ガキには、躾が必要よ!」
「ちくしょう! 生き返ったら、覚えていろ! 児童虐待で訴えてやるからな!」

 こいつを生き返らせて、はたしていいのだろうか? 

「そういえば、昨日も見かけたぞ」

 おっと! いけない! 今は、おじいさんの話を聞くのが先だ。

「昨日のいつ頃ですか?」

 聞いてみると、柴田さんが目撃した時刻とほぼ同じ頃。

「高校生ぐらいの女の子と手をつないで、そこの橋を渡っていったぞ。その後、左に曲がって行った」
「ありがとうございます。助かりました」

 お礼に成仏のお手伝いを……と言い掛けたとき、横から声をかけられる。

「あのう……もうお話は、よろしいでしょうか?」

 女の子のか細い声だった。
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