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嫌悪の魔神
柴田さんの事情
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ランドセルの中でスマホの着信音が鳴ったのは、学校が終わって家に帰る途中、同じ方向に帰っていた友達と別れた時でした。
スマホの画面には『すみかちゃん』と出ています。
「もしもし。すみかちゃん。どうしたの? 授業にもホームルームにも出ないで……」
スマホからは、嗚咽が聞こえてくるだけで返事がありません。
「すみかちゃん。泣いているの? 何があったの?」
『絵里香ちゃん。あたし……人を……殺しちゃったよ』
「ええ!?」
すみかちゃんの話では、昼休みに寒太君に男子トイレに連れ込まれたとの事。
そして寒太君は『おまえは、給食費を払わないで給食をタダ食いしている。タダ食いした分、俺に裸を見せろ!』と言って、すみかちゃんを脱がそうとしたのです。
やっとの事で、すみかちゃんはトイレから逃げ出したのですが、寒太君はしつこく追いかけてきて学校の外まで逃げたのです。
ところが警報音が鳴り響く踏切を通ったときに、追いかけてきた寒太君の足が線路に挟まってしまいました。
すみかちゃんが振り向くと、遮断機が降りた踏切で寒太君は立ち往生しているのです。
すみかちゃんは、助けようか迷いました。
でも、助けたって寒太君がいじめをやめてくれるとは思えません。
悩んだ末に、すみかちゃんは寒太君を見捨てて逃げたのです。
すみかちゃんは、泣きながらそんな事を話しました。
一通り話を聞いてから、あたしはスマホに向かって……
「そんなの、すみかちゃんが悪いんじゃない。寒太君の自業自得……」
そこまで言い掛けたとき、あたしは目の前の光景を見て言葉が止まりました。
「すみかちゃん。寒太君……本当に死んだの?」
『うん。たぶん』
「たぶん? 死ぬところを、見た分けじゃないのね?」
『見てない。その前に踏み切りを離れたから』
「生きているよ」
『え? 生きている? 誰が?』
「寒太君。今、目の前にいる」
そう。電話をかけているあたしの目の前で、交差点から寒太君が現れたのです。
高校生ぐらいのお姉さんに手を引かれて……
『ええ!? うそ!』
見間違えかもしれないと思って、寒太君に気づかれないように近づきました。
間違えなく寒太君でした。怪我をしている様子もありません。
ただ、足には学校で使っている上履きを履いていました。
「近くまで行って見たけど、間違えなく寒太君だよ。高校生ぐらいのお姉さんと、一緒に歩いている」
『でも、どうして?』
「たぶん、すみかちゃんが踏み切りを離れた後で、誰かに助けられたんじゃないかな?」
『そっか……助かっちゃったんだ』
「すみかちゃん、明日は学校休んだ方がいいよ」
『うん。そうする』
だけど翌日、寒太君も学校を休んだのです。
スマホの画面には『すみかちゃん』と出ています。
「もしもし。すみかちゃん。どうしたの? 授業にもホームルームにも出ないで……」
スマホからは、嗚咽が聞こえてくるだけで返事がありません。
「すみかちゃん。泣いているの? 何があったの?」
『絵里香ちゃん。あたし……人を……殺しちゃったよ』
「ええ!?」
すみかちゃんの話では、昼休みに寒太君に男子トイレに連れ込まれたとの事。
そして寒太君は『おまえは、給食費を払わないで給食をタダ食いしている。タダ食いした分、俺に裸を見せろ!』と言って、すみかちゃんを脱がそうとしたのです。
やっとの事で、すみかちゃんはトイレから逃げ出したのですが、寒太君はしつこく追いかけてきて学校の外まで逃げたのです。
ところが警報音が鳴り響く踏切を通ったときに、追いかけてきた寒太君の足が線路に挟まってしまいました。
すみかちゃんが振り向くと、遮断機が降りた踏切で寒太君は立ち往生しているのです。
すみかちゃんは、助けようか迷いました。
でも、助けたって寒太君がいじめをやめてくれるとは思えません。
悩んだ末に、すみかちゃんは寒太君を見捨てて逃げたのです。
すみかちゃんは、泣きながらそんな事を話しました。
一通り話を聞いてから、あたしはスマホに向かって……
「そんなの、すみかちゃんが悪いんじゃない。寒太君の自業自得……」
そこまで言い掛けたとき、あたしは目の前の光景を見て言葉が止まりました。
「すみかちゃん。寒太君……本当に死んだの?」
『うん。たぶん』
「たぶん? 死ぬところを、見た分けじゃないのね?」
『見てない。その前に踏み切りを離れたから』
「生きているよ」
『え? 生きている? 誰が?』
「寒太君。今、目の前にいる」
そう。電話をかけているあたしの目の前で、交差点から寒太君が現れたのです。
高校生ぐらいのお姉さんに手を引かれて……
『ええ!? うそ!』
見間違えかもしれないと思って、寒太君に気づかれないように近づきました。
間違えなく寒太君でした。怪我をしている様子もありません。
ただ、足には学校で使っている上履きを履いていました。
「近くまで行って見たけど、間違えなく寒太君だよ。高校生ぐらいのお姉さんと、一緒に歩いている」
『でも、どうして?』
「たぶん、すみかちゃんが踏み切りを離れた後で、誰かに助けられたんじゃないかな?」
『そっか……助かっちゃったんだ』
「すみかちゃん、明日は学校休んだ方がいいよ」
『うん。そうする』
だけど翌日、寒太君も学校を休んだのです。
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