10 / 109
🌹『翠玉のケエス:芽吹』🌹 本編 💎 The HIEROPHANT:U 💎
Drop.004『 The HIEROPHANT:U〈Ⅰ〉』【2】
しおりを挟む
(――なるほど……。――あれで懲りたんじゃなく、ただ警戒して、しばらく寄り付かなかっただけね……。――まぁ、大したことじゃないから、別にいいんだけど……)
法雨は、彼らが再び店に現れた事に対しては何も感じなかったが、来る夜明けから再開されるであろう密会を見据え、その日、店に着てきた私服の事を想った。
(――今日の服。汚したくないのよねぇ)
そんな事を考えながら、法雨は、特に絶望するでもなく己が運命を受け入れると、その後も通常通り、バーの業務をこなして過ごした。
💎
そして、その日の零時頃の事――。
法雨は、嫌な胸騒ぎを覚えていた。
いつもなら明け方の閉店間際まで居座っていた彼らが、まだ日を跨いで久しいその時刻にすでに会計を済ませ、店を出ようとしていたからだ。
終業後の法雨を密会に連れ込むために、明け方まで店に居座る事が常であった彼らが、わざわざ店に来ておいて、何故このような早い時間に――。
(――まさか……、他の子を……?)
あの大柄なオオカミを警戒し、標的を法雨から他の従業員に変えたのかもしれない。
(――ふざけるんじゃないわよ。――他の子にあんな事させるなんて、絶対に赦さない……)
そして、そんな懸念から、胸騒ぎを怒りに転じさせた法雨は、近場の従業員に嘘の断りを入れると、先ほど店から出て行ったばかりの彼らを足早に追った。
💎
その後――。
すぐに彼らに追いついた法雨は、夜の街に消えゆこうとしているオオカミたちの背に、鋭い声を放った。
「――待ちなさいっ!」
すると、その声に若いオオカミたちの何人かが肩をびくつかせるようにし、恐る恐る振り返った。
そして、戸惑うようにしながらも法雨の制止に応じた彼らは、それぞれ法雨の事を見るなり、気まずそうに目を反らした。
その中、あの――群れのリーダーでもある灰色の彼が、その毛並みを揺らがせ、法雨の声に応じるように、仲間たちの間を割りながら歩み出てきた。
そして、法雨と向き合うようにすると、不機嫌そうな表情で言った。
「なんだよ。――今日は何もしてねぇだろ」
そんな彼に目を細めるようにすると、法雨は厳しい表情と声で言う。
「今は、――いえ、――アタシには、ね。――これは一体どういう風の吹き回し? ――まさか、今度は別の子に手を出してるんじゃないでしょうね」
「してねぇよ」
その法雨の言葉に苛立たしげにした彼は、噛みつくように強く否定した。
だが、それにも気圧されず、法雨はただ黙したまま目を細め、彼を見返す。
「………………」
「――なんだよ……」
法雨は、その彼の問いに対し、さらに黙して応じた。
すると、その責め立てる様な法雨の視線に耐えられなくなったのか、彼はついに怒鳴るようにして言った。
「――っだから、――なんもしてねぇって言ってんだろ!! 疑うなら確認してみろよ!!」
法雨は、彼らが再び店に現れた事に対しては何も感じなかったが、来る夜明けから再開されるであろう密会を見据え、その日、店に着てきた私服の事を想った。
(――今日の服。汚したくないのよねぇ)
そんな事を考えながら、法雨は、特に絶望するでもなく己が運命を受け入れると、その後も通常通り、バーの業務をこなして過ごした。
💎
そして、その日の零時頃の事――。
法雨は、嫌な胸騒ぎを覚えていた。
いつもなら明け方の閉店間際まで居座っていた彼らが、まだ日を跨いで久しいその時刻にすでに会計を済ませ、店を出ようとしていたからだ。
終業後の法雨を密会に連れ込むために、明け方まで店に居座る事が常であった彼らが、わざわざ店に来ておいて、何故このような早い時間に――。
(――まさか……、他の子を……?)
あの大柄なオオカミを警戒し、標的を法雨から他の従業員に変えたのかもしれない。
(――ふざけるんじゃないわよ。――他の子にあんな事させるなんて、絶対に赦さない……)
そして、そんな懸念から、胸騒ぎを怒りに転じさせた法雨は、近場の従業員に嘘の断りを入れると、先ほど店から出て行ったばかりの彼らを足早に追った。
💎
その後――。
すぐに彼らに追いついた法雨は、夜の街に消えゆこうとしているオオカミたちの背に、鋭い声を放った。
「――待ちなさいっ!」
すると、その声に若いオオカミたちの何人かが肩をびくつかせるようにし、恐る恐る振り返った。
そして、戸惑うようにしながらも法雨の制止に応じた彼らは、それぞれ法雨の事を見るなり、気まずそうに目を反らした。
その中、あの――群れのリーダーでもある灰色の彼が、その毛並みを揺らがせ、法雨の声に応じるように、仲間たちの間を割りながら歩み出てきた。
そして、法雨と向き合うようにすると、不機嫌そうな表情で言った。
「なんだよ。――今日は何もしてねぇだろ」
そんな彼に目を細めるようにすると、法雨は厳しい表情と声で言う。
「今は、――いえ、――アタシには、ね。――これは一体どういう風の吹き回し? ――まさか、今度は別の子に手を出してるんじゃないでしょうね」
「してねぇよ」
その法雨の言葉に苛立たしげにした彼は、噛みつくように強く否定した。
だが、それにも気圧されず、法雨はただ黙したまま目を細め、彼を見返す。
「………………」
「――なんだよ……」
法雨は、その彼の問いに対し、さらに黙して応じた。
すると、その責め立てる様な法雨の視線に耐えられなくなったのか、彼はついに怒鳴るようにして言った。
「――っだから、――なんもしてねぇって言ってんだろ!! 疑うなら確認してみろよ!!」
0
あなたにおすすめの小説
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる