殿下!婚姻を無かった事にして下さい

ねむ太朗

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6.再スタート

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「アレックス、気を利かせてくれてありがとう」

「ふっふーん。久しぶりのミレリア嬢はどうだった?」

「………………可愛かった」

 ニヤニヤした顔をしたアレックス。
 これ以上揶揄われたくなかったので、クロヴィスはアレックスの執務室を後にした。



 久しぶりにミレリアに再会をしてから幾日経っただろうか。
 片手では数え切れない程会っている。
 ミレリアには婚約者がいないようだ。
 それに、昔のように私に笑顔を見せてくれるし、これは期待しても良いのだろうか。

 覚悟を決めたクロヴィスは、後日ミレリアをバラが咲き誇る庭園に呼び出した。

「クロヴィス殿下、連れてきて下さってありがとうございます」

「喜んでもらえたなら良かった」

 クロヴィスはミレリアの笑顔を見られて一安心する。

「ミレリア嬢、もし君が私の事を許してくれるのであれば、君とやり直したい」

「えっ、えっと、それは」

 不思議そうな顔をしてクロヴィスを見上げたミレリア。

「夫婦として、君とやり直したい。やはり難しいだろうか」

 やはり、ミレリアを傷つけた自分に好意を伝えられても困るよな。
 クロヴィスの顔が強張った。

「夫婦……」

 ミレリアは驚いた様子で目を見張った。

「すまない。驚かせるつもりはなかったんだ。今のは聞かなかった事にして欲しい。出来れば今までのように会って欲しいのだが。いや、虫が良すぎる話だな。未練がましくて自分が恥ず」

「お待ち下さい」

 早口でまくしたてていたクロヴィスの言葉を、ミレリアは遮った。

「クロヴィス殿下。貴方に許していただけるのなら、私もやり直したいです。もう一度、私をクロヴィス殿下の妻にしていただけないでしょうか」

「本当に? 私は半年という長い間、君を傷つけた。本当にいいのか」

「はい。クロヴィス殿下がいいです。ずっとお慕いしておりました」

「私もミレリア嬢だけを想っていた」

 ミレリアは頬を赤く染めた。
 クロヴィスはミレリアの頬にそっと手を伸ばす。

「触っていいだろうか」

「はい」

「抱きしめてもいいだろうか」

「はい」

 はにかむ様子のミレリアを、クロヴィスはそっと抱きしめた。




 それから、二度目の結婚式を挙げて子どもも生まれた。
 そして、クロヴィスにとっての一番の問題だったアレックスは、今の所真面目に働いている。

 国王もアレックスに期待をするようになり、王位を譲る日もそんなに遠くないかもしれない。

「アレックス。あの日ミレリアと会わせてくれてありがとう」

「いや。兄上には王位を譲って貰ったからさ。少しでも役に立ちたいと思ったんだ」

「アレックスは王妃様の息子なんだから、元々王太子になるのはアレックスだっただろう? もとの形に戻っただけだから気にするな」

 アレックスは困った顔をしてクロヴィスを見た。

「とにかく、兄上が幸せそうで良かったよ。じゃあ、僕はこれからレオンを連れて叔父上に会いに行くから」

「そうか。引き止めてすまない」

 そう言うとアレックスは息子のレオンの部屋へ向かって行った。
 クロヴィスは仕事を片付けて、少しでも早くミレリアに会う為に仕事に集中したのだった。

(クロヴィス視点おわり)
 
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