卯の花の門に

まーくん

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 三度目のデートは、マルガレーテがみず領にやってきた。

 この時代、夫婦は比較的行動を共にすることが多いが、親子はほぼ別に暮らしている。
 家庭とは何か。
 住宅の位置づけが曖昧だ。

 ある程度の年齢に達すれば、一族から各個人に、広大な土地が与えられる。
 親子の愛情はもちろん重要だが、教育(学力だけではなく、行動指針や哲学的な問いについても)は、一族や、あるいはもっと大きな枠組みである氏が責任を持つものと考えられているのだ。

 つまり家門とは、国に次ぐ安全保障の枠組みであり、有機体である。

 クロも、七歳年上の男性を同世代リーダーとして、そのグループ内で知識や社会正義、国家制度のあり方を成人まで学ぶこととなっている。それが学生といわれる身分の役割だ。

 もちろんそのグループは、全員が成人したからといって解消されるものではない。
 生涯、同じ課題に取り組む仲間なのだ。


 クロとマルガレーテは、連れ立って空港に降り立った。
 毎日寝る前に顔を見て会話しているはずなのに、なぜか嬉しい……。

 空高くまで人間の手が届いているこの時代、直接会って、呼吸に触れて、体温を感じなければ我慢できないことなんてないと思っていたのに。そう信じていたのに。

 自分の変わりようにびっくりする。
 異性に影響されるなんてカッコワリーって思っていたのに。




 前回のデートから一ヶ月。
 ふたりは集合講義に参加した後、共にクロの地元に移動してきていた。

 講義には机を並べて参加した。

 ふたりの親密な関係は、同級生達からすれば突然のものではあったが、彼らの中には軽い祝福の言葉を口にする者こそあれ、冷やかすような者はいなかった。

 同級生たちは、純粋に、同じ年齢の一族にカップルが成立したことを好ましく受け取っただけだ。
 この国の一般的な価値観では、学生時代の男女交際は、人間的に成長するためのよい経験になるものという認識だからだ。

 成人すれば、人々はそれぞれ家の決めた相手と一緒になることになるだろう。
 そのような宿命を、“受け入れる”という覚悟を持つまでもなく、それを当然のものとしているのだから、学生時代は、自分の選んだ相手と恋愛を楽しむことが、人間的な成長に繋がるのだという理屈である。

 また、その他に、同級生カップルの成立も、この国では催物のような感覚で受け止められているのだ。
 強靱な肉体を持ち、もはや飢えや病気に悩まされることのないこの国の民にとって、同級生の恋愛成就も人生の刺激として消費される。
 まさに、彼が兄貴から諭された通り、『人生のエンタメ化』だ。

 しかし、完成された人類の暇つぶしと簡単に決めつけてしまうこともできない。

 結局、完全な人類が、人生の目的として権力争いというつまらないことを選んでしまった以上、このような催し物イベントも、後の人生のための人脈となり得るからだ。

 交際を祝福し、受け入れるという行為の裏で、そのような思惑が無意識に行われていることについて、当然の結果であるとも、さみしいとも、もはやジャッジする者は誰もいない。
 むなしく思う。

 成人したら、お互いの家門のために策を巡らせる間柄になるかもしれない。
 だが、このように一族家格関係なく集まる場では、小さな出来事の積み重ねが、きっとよい影響を学生達に与えてくれる。
 利益追求だけではない。氏族うじぞくもそう考えているからこそ、このような場を用意しているのだと思う。
 思いたい。
 この高度通信の時代、“そこに実在することを意識する”といった冗談のような理由だけで集合させているわけではないだろうと、クロは考えるようになっていた。

 ほらね。友達から半歩近づいただけなのに、こんなに成長できてしまうんだ。
 問題は、半歩近づくために、走らなければいけないこと。
 ただの半歩。でも若さがあれば、まだ走れる!




 講義終了日、寮で制服から着替えたマルガレーテは、銀糸の刺繍が入ったブラウスとロングスカートの出で立ちとなっていた。

 なんか講義中は、相変わらず硬い表情の愛想なしだったが、着替えただけで柔らかい印象が現れる。
 制服はかわいい。
 ブレザーは言うまでもなく、すっかすかに見えるミニスカだって、実は隙がない。
 シャツの第一ボタンは、デザインとして付いているだけのもので、閉めることはない。
 でも、『隙あり!』だなんて、手を突っ込めない。
 首元の守護者リボンが守っているからだ。
 よく考えられた形だと関心する。

 そんな彼女も、ブレザーから着替えたら、肩のラインが一気に曲線になって、やさしい雰囲気を持つ。
 ミニスカもいいけど、ロンスカもいい。
 ミニスカのギリギリの攻め姿勢は素敵だけど、ロンスカから発せられる包容力は、男にはかなり作用する。

 俺には通じないけどね。

 クロはふんと鼻を鳴らす。
 ほんとかな?

 マルガレーテは、もともとウェーブのかかった金髪だけど、今日はちょっと強めに巻いている。

「今日は(巻き)強めだね」

 そうクロが指摘したら、顔を真っ赤にしてそらした。

 え、そこ?
 わけわからん。

 ふたり並んで空港から出ると、出迎えのカーゴが待っていた。
 今日は観光目的ではない。家門の所有する専用車に乗り込んだ。
 自宅に直行はせず、レストランに向かう。
 みずの人間だけに限らず、アオイの国民は、すべて家事全般が得意である。
 そのように躾けられている。
 クロもそうだ。
 すべての家事を機械が代行する世界でも、それができるように訓練しておくことは無駄じゃない。

 料理に関しては、調理も献立も、すべて家の管理システムに丸投げすることができる。
 だけど、自分の口にするものは、自分で作りたいという意識を持つ人は、この国では多い。
 クロもそうだ。
 料理は、面倒なことではなく、自分で食べるものを作る喜びのあることと捉えている。

 ただ、こうして外食の機会ももちろんある。
 領内にある飲食店は、いつでも利用可能だ。

 レストランに到着したふたりは、食事の後は歩くことに決めて、カーゴを待機場所に帰るよう指示する。
 ふたりがレストランに入ったことを見届けると、自動運転のカーゴは音もなく待機場所に帰っていった。

 今日は本当に一秒でも一緒にいたいのか。たとえ徒歩の中であっても、ふたりでいれば、そこに喜びがあるかの実験だ。

 レストランに入ったふたりの脳内に、メニューが届く。
 用意されたテーブルに着くまでの間に、脳が並列処理で、注文する。
 ふたりは軽い会話をしながら、迷いもなく用意されたテーブルに着席した。

 しばらく待つと、給仕が食事を運んできた。
 この国では、料理を転送することは、それこそ味気ないことと考えられている。
 人間の手で運ぶなんて無駄と考える国もあるようだが、それは価値観の違いにすぎない。
 領内では、全員が親戚関係にある。
 料理を運んできた給仕も、クロにとっては、顔と名前を知る程度の知り合いだ。
 同じ領内に住んでいるということは、ちょっとさかのぼれば、すぐに共通の先祖にたどり着くことだろう。
 ただ、いまは、サービスをする側と、受ける側の顔を使っているだけに過ぎない。
 お互いに、敬意を持った態度が必要ということだ。

 また、レストランは、ただ食事を摂るだけの場所ではない。
 学んだマナーを披露する場所でもあるのだ。
 ふたりは、出された料理をおいしくいただくだけではなく、どのような手順で美しく食すかが試される。

 クロはもちろんのこと、マルガレーテも、しっかりと卒なくこなして、何ら問題なく食事を終える。
 食事の間、会話は途絶えていたが、それは言葉によるコミュニケーションではなく、食事を摂るというコミュニケーションに代わっていただけのことだ。
 食後、ふたりは、あたたかいお茶を飲んでレストランを後にした。

 家まで徒歩十五分。風に当たっていれば着く距離である。
 四季の移り変わりが厳しい国だ。
 風はもう涼しく、または生暖かく、ふたりの間を通り過ぎていく。
 アオイの都市は、ひとつの建築物であることがほとんどであるが、クロの地元は屋外エリアも広い。
 まさに、いまふたりが歩いているのは屋外だ。
 屋内と見分けはつかないが、地表に飛び出している銀の建物の間から、右手には山、左手には海が見える。


「こうして一緒に歩いているだけでも嬉しい?」


 ふと、クロがマルガレーテに投げかけた問い。
 女の子と話なんてできないと考えていた彼とは違う。
 やさしくて、自然な呼吸で言葉が出た。


「はい」


 そんな突然のクロの問いかけに、マルガレーテは迷いなく答えた。
 考えてなんていない。
 そのような答えが体中に満ちているから、肺から息をふと吐けば、いっしょに言葉が出てくる。

 よい返事。
 好感度アップ!

 なーんて、クロはその言葉に満足していた。
 でも、自分は答えなんて用意していない。
 女の子の望む答えがどんなものかなんて見当もつかない。
 だから彼女になにかを問われたら、シナプスの発火速度を限界突破させても、彼女の脳内に失望の情報が伝達される前に、答えを発声しなければならない。

 手を繋いで歩く、ふたりの間に流れる新しい風は、涼しい風だった。

 特に意味はないけど、クロは横に並んで歩く美女の姿を眺める……

 今日はずいぶんと女性的で落ち着いた装いをしている。
 まあ手足が長いし、どんなファッションでも似合うんだけどな。

 と、勝手な納得をする。

 ん? これのろかも……

 でもやっぱり、胸が大きすぎてアンバランスには感じる。
 こいついっつも胸のこと考えているな。

 女の乳ばっか見てるわけじゃないぞ。

「変ですか?」

 いつか聞いた言葉だ。

 クロの視線を感じて、マルガレーテはすこし首をかしげる。
 以前のような不安そうな顔はしていない。
 でもにっこりもしない。不愛想だ。

 そんな彼女が多くの友人に受け入れられているのはどういうことからかな。
 美人だなんてこと、理由になりゃしない。
 成績優秀者だから、一目置かれているのかな。

「いいや。今日はずいぶん女の子してるなって思っただけ」
「えっと……」

 言いにくそう……ではないな。待ってましたとばかりに彼女は言葉を吐いた。

「この下に、性衝動を掻き立てるような下着を着てきました」
 『喜んでもらえるといいんだけど』とマルガレーテは視線を外した。

 驚きである。女子の行動力はけっこう前向きというか、計画的だなと思った。

 今日はお泊まりだ。

 だけど、別に同衾するような約束もしていないし、どこまで歩幅を進めるのかは、その場の雰囲気次第かと考えていた。
 空気が場を支配するのはいまも昔も変わらない。
 きっと四百年前の、大崩壊以前もそうであったはずだ。
 だから、今日は、いつもより長く一緒にいられるだけ。と、考えていた。

「今日は三回目だから、そういう日だって」
「え、なに、そんなルールあったの?」
「友達が言ってました」

 マルガレーテは、クロの手をぎゅっと握りしめた。

「姉に聞いても、『そうねぇ』って笑ってたし」

 クロも握り返す。

「でも、私もそうかな、って……」

 女子の中には、二回目のデートが成功だったら、次の関係に進む時期だという考えがあるのだろうか。
 つまり、成功で性交ってことか……
 う~む。
 確かに、二回のデートで為人ひととなりが掴めないようであれば、恋人関係になるべきではないという方程式が成り立つ気もする。

 二回デートして、その人の良さがわからなければ『ご縁がなかったということで……』ということになる。と、いうことなのかな。
 妥当なような気もするが判断はできない。
 男だし。

 冷静に考えたら、はやいんじゃないかなって気もするんだけど、性欲もあるし、男子からはすれば、『はい』『いいえ』の、どっちを選んでも嘘っぽくなってしまう。
 もう女子に任せるしかない!

 でも、ふたりは『好き』だなんて言ってないじゃないか。

 そんな気持ちがわだかまる。

 そもそも、この国は世界で最も長い歴史を持つ国ではあるが、貞操観念のラインは時代と共に変化している。
 自分の意思で体内の活動すらコントロールできる現代、容姿へのこだわりはないし、お互いに提供できる物質量で相手をはかることもない。
 クロはこれより前に女性と交際したこともないし、肉体関係も未経験だ。
 でも相手に処女性を求めることなど頭によぎったこともない。
 容姿や胸の大きさ、経験人数で女性を判断することはない。
 あえて言うならば、立ち振る舞いや言葉使いの美しさを大切に思っているぐらいだ。
 そう考えるなら、男女の体の違いに興味を持つほうが純粋な気もしてくる。

きりさめくん……」

 彼女の言葉に、通商用語のアクセントを感じることはもはやない。

「今夜から、クロくんって呼んでもいいですか?」

 彼女の吐息が近づいた気がした。
 錯覚だ。
 でも二回のデートで、俺も、いつの間にか、彼女がいっしょにいてくれる前提で、物事を判断するようになっている。
 いつの間にか、たちどまって見つめ合っている。
 目の前の彼女。
 ピカピカしてるブロンドと、キラキラしてる青い瞳。白い肌と歯。

 出会いはやっぱり奇跡だ。

 はじめて彼女の目を見た瞬間から……

「じゃあ、俺はなんと呼べば彼氏になれる?」

 もう二人の答えはとっくに出ていた。
 『好き』だなんて言ってなくても。
 こうして一緒に家へ向かう儀式をしているのだから。

「グレッチェ」
「ええ~、それちょっと子供っぽすぎない?」
「いいんです! 家族からはグレーテって呼ばれているから、クロくんだけ特別です!」
「特別。――は、嫌な気がしないな」
「なんかまわりくどい言い方です」

 マルガレーテはすねるポーズをした。

 百点満点中、六十点くらいな気分なのかも。

 そんな点数じゃ、合格はあげられないよね。

 あまりの愛らしさにクロは笑ってしまった。
 笑われたマルガレーテはますます頬を膨らます。
 その仕草も愛らしくてクロは笑ってしまう。無限ループかよ。

「グレッチェの特別は嬉しいな」

 クロは彼女の耳元にそう呟いた。裏の裏をかいた表現かもかもかも~。
 一年に一回くらいはこうしてもよいと思う。

「ズルイ!」

 マルガレーテはつないだ手を離して彼氏の胸を叩いた。
 同じ身長だし、右手には水筒の入った鞄を持ってるし、がっこんがっこん振動を感じながらクロは街灯のひとつに追い詰められた。

 そのタイミングで街灯が明かりを灯す。

 点灯タイミングは日照時間で計算されているので、何時と決まっているわけではない。
 でも、この瞬間に子供の時間が終わりを告げたのだ。
 夏の夜は遅い。
 学生の彼らにとって、そんな短いアダルトな時間。

 彼らの都市にある建物は、それぞれ発光性能を持っていて、どのような角度からでもあたりを照らすような設計になっている。
 発電は“フシ”と呼ばれる反応炉(AEリアクター)によって行われており、エネルギー問題は解決済みとの考えが一般的だ。

 子供の頃、町に必要な電力量と発電量とのバランス調整について学ばされた記憶がある。
 いろいろな社会貢献があるんだと気付かされた幼少時の思い出だが、現在では一般住宅にも広くフシが普及しており、明かりの問題は電力の確保ではなく町全体の同期に移り変わっていた。

 つまり、結局のところ、街灯は飾りということである。

 本来はなくてもいいものなのだ。
 都市デザインの余分な部分として、心理学的なアプローチから設置されているだけに過ぎない。
 このようなもので明かりを得なくても、この国の都市は、二十四時間つねに適切な光が灯っているのだから。

 でも、この街灯が、いま、一組の男女のゴール地点になっている。
 クロは背中に街灯を感じ、もう逃げ場所はないと自覚する。
 小顔のマルガレーテは、水平に、自分と同じ炎を持つ者の視線を感じる。

 黒い髪。深い茶色の瞳。

 彼女もまた、クロの色に心を奪われていたのだ。

 普通の男だ。
 取り立てて目立つところなんてない。
 友達が理解できる能力もない。
 百八十二センチメートルの身長は、まわりの人からは、ちょっと低めかもしれない。
 でも欠点もない。
 それって、すごく贅沢。
 誰よりも、平等な判断ができる人だ。
 私が見つけて、私が選んだ異性だ。
 独り占めしたい。
 心も体も奪いたい。
 あなたが必要なんだ。

 マルガレーテは、クロを街灯に強く押しつけて、そのまま唇を重ねた。

「どこにもいかないで」

 少し唇を離して、そう言ってもう一度くっつける。
 よだれが垂れるのも気にしない。
 彼の口内の舌を探して、自分の舌で絡め取る。
 彼の歯の裏側も丁寧になめあげる。
 彼の体はフェムト技術で維持されている。
 さっき食事をしたばかりだけど、口内はすでに中性に戻っているし汚れもない。

 この肉体も、そこに宿る魂も、全部私のものだ。

 そう思わなくては壊れてしまいそうだ。
 そのためには、自分もすべてを捧げなくてはならない。
 それぐらいの覚悟で挑まなくてはスタート地点に立てないことがある。

「私には価値がありますか?」

 マルガレーテは、べったべたの唇で距離数センチメートルの彼にそう呟いた。

「気がついたら好きになっていた。そうでなければ一緒にいたりしない」

 クロはそう返す。

 先に『好き』といったのは、本当にクロだったのか?

 先に水をあげたのは、クロだったのか?

 マルガレーテの大きな瞳(ちょっと吊り目)に、涙がたまってきた。
 そして決壊。あふれた涙が頬を伝う。

 そうかと、クロは思った。

 嬉しくても人は泣くんだ。
 大きな胸をぐいぐい押しつけられて呼吸困難。
 でも、クロはひとつ気付きを得たのだ。
 もしかしたら成長できたのかもしれない。
 枯れた枝でも芽吹けたのかもしれない。

「うう」

 マルガレーテが下を向いて、変な声を出した。

「えっと、えっと」

 独りで言い訳してるし。なんだか要領を得ない。

「グレッチェ?」

 クロが呼びかけると、マルガレーテは真っ赤な顔を上げてこう言った。

「えっと、私ダメみたいです。我慢できなくて」

 そう言った。

「あ、家もうすぐだから」

 クロの方は冷静だった。冷静ではなかったけど冷静だった。

「勃起してますか?」

 マルガレーテは不満だ。まるで自分だけリミッターが外されるのを待っているスーパーチャージャーV8みたいだから。

「さっき一瞬硬くなったけど、すぐ戻っちゃった」
「ショックです」

 マルガレーテは彼の状況を触って確かめたかったが、屋外なので躊躇ためらった。
 人通りなんてないんだけどね。
 今日、この町で誰かを見たのなんて、レストランの中でだけだ。
 監視カメラには、さっきから一部始終拾われているけど……

 散布されたフェムトマシンが、ずっとひとりひとりを監視しているし、脳波スキャンも頻繁に行われている。
 この国にプライバシーはない。
 だが、個人の情報が外部に漏れた事例はないし、今後もないと断言できる。
 この国で最も古い、みやと呼ばれるみっつの家族が、国家国民の情報を管理している。
 生まれた瞬間から、国のために生涯をかけることを宿命づけられた人々だ。
 日々権力闘争を繰り広げている氏族うじぞくですら、彼らの権威は不可侵としていた。

「じゃあ、行こう」

 クロが唾液べったべたの唇をハンカチで拭きながら、離してしまったマルガレーテの手を握った。
 マルガレーテは、せっかく巻いたのに、すっかり乱れてしまっている髪を気にするそぶりもなく、彼の手を握りしめて、ひっぱった。

「こっちですよね」

 さあ、セックスだ。
 セックスしなければ。
 セックス!セックス!

 マルガレーテの歩行速度は少しずつ速くなっていった。
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