卯の花の門に

まーくん

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 クロがバスローブを羽織って戻ってくると、マルガレーテはベッドの上に腰掛けていた。

 青い瞳で彼を見ていた。
 あのとき、水族館の入口で見たときと同じ瞳だった。

 技術的には再現可能でも、遺伝的には受け継がれにくい瞳だ。
 ノイゲシュタルト時代は、髪の色も瞳の色も、けっこう自由自在に作ったらしいが、顕性遺伝に上書きされてしまって、すっかり見かけなくなった。いまでは彼女のような外国人だけだ。

「ずっとこうなりたいと思っていました」
「積極的」

 クロは緊張をごまかす感じで軽く笑ってみせる。

「この国では女性に奥ゆかしさが求められると聞きましたが」
「建前ではね」

 クロがマルガレーテの横に腰掛ける。

「まわりくどく詩を送り合ったりして、恋愛をゲームのように楽しんでいるけど、やっぱり初めての夜は男女に関係なく自分の意思を伝え合うのが重要なんだって。兄貴からの受け売りだけど」

 マルガレーテは、彼の言う“兄貴”が、実の兄ではなく、一族の世代を束ねるリーダーであることを理解していた。
 そういう家族の立ち入った事情すら話す間柄となっている。
 だから、全裸になって、体の隅々を見せてもいいと判断できたのだ。
 いや、マルガレーテが彼の隅々まで見たいと思ったんだけどね。

 そうだ。機械ですべてが可能なこの世界でも、人間を成長させるのは人間との関係だ。
 いまの彼がここにいるのは、彼の両親の人間関係が出発点だし、彼を彼たらしめる人格形成も、彼が周りの人に影響を受けてきたからに他ならない。
 この国の、家門という大家族制度の意義について、移住してきて十年。ようやく納得できた。
 いままでは、グループダイナミクスによる生存戦略の一形態ぐらいに考えていたのだ。
 行動規範による“制限”を受け入れることによって生活の保証を受けるというバランスだと思っていた。
 災害時などには有効なんだろうけどねーとか考えていたのだ。

 でもわかってしまった。
 彼の寵愛を受けるだけでは不十分であるということに。
 交際は個人同士の問題なのに、それ以上を求めるならば、それでは足りないということだ。

 家の一員になりたいと思った。
 心でつながって、肉体でつながって、そして縁をつなぐ。

 無愛想なマルガレーテは、やはり人一倍情熱的なのかも。
 でもそれって、けっきょく、『一緒にいたい』って気持ちからだよね。
 方程式は変わっても、進みたい道は一緒ってことだ。

 しかし、移住国民の彼女が、知識として持っていても、完全に理解できないのも当然なほどに、この国の婚姻は複雑怪奇だ。

 そもそもとして、婚姻は家系の維持と都合によるものと考えられている。
 だから、人々は、学生期間を、恋愛感情でつながった人と過ごして、成人として認められる年齢になったら、大人という責任の名の下に、家門の維持、名誉のために活動する。

 これが現在のアオイ国民のスタンダードな生涯である。

 法で決まっているわけではない。
 結婚相手は、家門の利益のためにもっとも適しているとされる人物を、指導者たちが選ぶ仕来りになっている。
 だが、これを拒否することも許されている。
 ただ、ほとんどの人が受け入れている慣習ということだ。

 事実、生涯独身者も一定存在し、特に美術や音楽と言った芸術にのめり込んだ人はその傾向が強いとされている。
 指導者たち(長)も、無理を通そうとはしない。
 家族制度を破壊しない程度であれば多様な価値観が認められている。
 なぜなら、この制度を長続きさせるためには、鉄の掟ではなく、ある程度の寛容さが必要であると理解しているからだ。

 クロも、このような一般的アオイ国民の価値観で行動を決定している。
 だから、恋愛は恋愛と割り切ることが基本的な考えであり、そうであるが故に、マルガレーテの突き抜けた情熱に戸惑っている。
 悪い気持ちなんかない。
 成人したら、恋人とは綺麗に別れて、それぞれの新しい道を新しいパートナーと歩む。
 これを当然と、いまでも考えているが、それでも、自分のためにすべてを失わずにいたという少女の熱意を嬉しく思う。
 泣いちゃいそうなくらい。

 この国の慣習は、法の遵守、治安維持、生産性に大きく貢献していると思う。
 家の都合による婚姻は、離婚が非常に困難であるのは事実だ。

 だがしかし、現在の男女が配偶者に求めるものは、容姿でも資産でもなんでもない。
 ともに支え合う存在だという共通意識を持っているかどうかだ。
 古い言い方なら、家門の中で、自らが主体となって、新しい家族を作るという覚悟である。
 少なくとも、クロはみずというグループの中で離婚騒動など聞いたことがない。
 男女のどちらか一方に強い負担が強いられているということも聞いたことがない。
 家長という強い権限を背景に持つ調停制度があるが、誰もこれを利用していない。
 できないのではない、する必要がないのだ。
 割り切って婚姻した相手だからこそ、欠点に寛容になれるということだろうか。

 でも、そんな国に生き、そんな価値観を持つクロでさえ、胸が締め付けられるような切ない感情があふれ出ていることを自覚できた。

 クロの手がマルガレーテの頬に触れた瞬間、浮かれていた彼女の無表情が崩れた。

「そうだ」
「なんだ?」
「私、プランがあるんです」
「はい、どうぞ」

 マルガレーテは、彼の手を握ると、

「まずキスをします」

 チュッ
 クロがマルガレーテの唇を奪う。

 マルガレーテがしたような、押しつけるような唇と唇の衝突ではなく、唇で唇を軽く包み込むような引っ張りの力学であった。
 ぱっくん、ちょ。のリズムである。

「しました」

 クロがそう言うと、マルガレーテは真っ赤な顔をして混乱した。

「エロティックすぎです!」
「しろって言ったからだろ!」

 クロの抗議は、まあ妥当。
 でもマルガレーテは、じと目で文句を言い始める。
 普段は国民に理性的な行動を求めるこの国でも、はじめての夜は、多少感情に流されても許容の範囲であろう。
 それぐらいならクロも、『こいつかわいい…』と内心でわがままを許してしまう。

「クロくん、慣れてます。ホントは何人もの女とこうしたんでしょ?」
「してません」
「嘘です」
「嘘じゃありません。グレッチェがはじめてです」

 やっぱり彼女は『うう』と唸っている。

「次は?」

 クロがそう言うと、気を取り直したマルガレーテは、
「私が、クロくんの全身にキスします」
「ほうほう」
「まず首から」

 そう言って、彼女はクロの首元にキスした。

「噛んでもいいよ」

 ちゅっちゅと二回クロの首元にキスして顔を上げたマルガレーテに、彼はそう言った。

「え、それは怖い…… それとも、そういう刺激が必要ですか?」

 ちょっとだけ目を伏せながら、マルガレーテが問う。

「正直、もうかなり高まっているので……」

 クロは、体がより強い刺激を求めていることを口にした。
 焦れているのだ。
 マルガレーテは少し機嫌のいい風な顔をしたが、本心ではもっと上機嫌になっていた。

「ああ」

 自分が間違っていないのだと知ったからだ。彼女は、そのままクロのバスローブをはだけさせて彼の乳首にキスした。

「くすぐったい」

 クロは、それが奉仕だと考えている自分の女に正直な感想を述べる。
 確かに、いままでの自分にはなかった新たな刺激だけどさ。
 くすぐったいけど、不快ではないし不快ではないが、くすぐったい。
 性的な満足度は低いけれど、彼女の奉仕の心が伝わってきて嬉しくなる。

 マルガレーテは立ち上がると、バスローブを脱いだ。
 クロの前に彼女のありのままの姿が現れる。
 予想通りの美しい体であった。

 事実として、アオイでは、容姿は重要視されていない。
 どちらかといえば、個性的であることが望ましいとされているくらいだ。
 エルプフォルム(遺伝子コントロール技術)によって、すべての赤子が整った容姿を持って産まれた時代、いわゆるノイゲシュタルトの時代から百年が過ぎている。

 また、その流行以前から、人類の肉体は主要な疾患への耐性を標準装備しており、非常に緩やかな老化など、四百年が経過した、カレンダーの変更以前とは比べようもないほど強靱化しているのだ。

 中でもアオイ国の技術は突出しており、あくまで噂ではあるが、不老不死にも手が届くほどらしい。
 しかし、そのような科学の発展は、人類文明の極致と評価される一方で、変革を欠いた停滞期として認識される。

 クロたちは、このような『人類にとって栄華の時代、そして退屈な時代』を生きている。
 最先端技術を持つこの国の民が、より優雅な立ち振る舞いを求めるのも、このような理由からだ。

 ノイゲシュタルトとは、遺伝子制御技術によって整った容姿の人間を生み出そうといった流行につけられた名称であったが、その流行はすぐに飽きられて、今では逆に個性が重視されているようになっている。
 とても皮肉的な話で、人間の欲望は本当に無い物ねだりの我が儘であるということの象徴的なエピソードと、クロは考えていた。

 ただ、そういった意味では、マルガレーテの手足長くて小顔なのに胸が大きすぎるというアンバランスな体型なのも、個性の現れと言えるのだろうかと愉快に思ったりもしたのだ。

 実は整った容姿の中にも個性があったのだという更なる皮肉で、それが欠点によるものかもしれないという裏の裏の皮肉だ。

 もう何から何まで嘘っぱちに見える。

 でも、で、ある。
 それでも、クロの中でマルガレーテの存在は本当だ。
 端的に言うならば、クロは、マルガレーテの容姿、大きな目も、青い瞳も、大きな胸も、細い腰も、長い足も、綺麗な肌も、すべてを愛しているということだ。
 乱暴に言うなら、長所とか短所とか、関係ない。ということだ。

 そう、いま恋人の生まれたままの体を見て、クロは、『ノイゲシュタルト以前の人は、恋人の姿を見ただけで、これほどまでに感動していたのか』と思い知らされていた。
 それほど感激していた。

 ただ、恋人に素直な気持ちを伝える方法がわからないだけだ。

 とりあえず、『素晴らしい』って言っとけばいいのかな?
 四百年前のご先祖様はどう思う?

 『何も足さず、何も引かずの精神が重要だよ』

 そうか……
 と納得したはずなのに、

「ヘアは自分で処理したの?」

 性衝動よりも、感動の方が上回っていたためか、うっかりストレートに聞いてしまっていた。
 こういうところがダメなんだよな。と自己嫌悪する。
 デリカシーが足りない。これからは気をつける。

「ええ。姉が『彼氏ができたら処理する』と言っていたので、それに習って……」
「そんなものなのかな?」

 クロは理解できていないだけで、否定しているわけではない。

「もしかして、あったほうがよかったですか?」

 彼女の問いに、クロはとっさに答えられなかった。
 どちらでもよかったからだ。

「これからまた伸ばします……」

 彼の沈黙を肯定と受け取ったのであろう。
 マルガレーテの、ちょっぴり悲壮感のにじむ言葉を耳にして、ここでようやくクロは慌てて修正する。

「いや、どっちでもかまわない。グレッチェの好きなようにしてくれている方がうれしいよ」
「そうですか……」

 マルガレーテは、ほっと胸をなで下ろす。
 ヘアのあるなしだけで、この騒ぎである。
 若い恋人ってめんどくさいよね。

「つづき、していいですか?」
「どうぞ」

 クロがそう言うと、マルガレーテは彼のバスローブを脱がせていった。
 クロがベッドから少し腰を浮かせて手伝い、マルガレーテは彼から最後の一枚を奪うことに成功した。
 彼の一部は驚くほど硬くなっていて、へそまで反り返っている。

 マルガレーテの瞳が好奇心で輝く。
 はじめて見る男性器である。
 幼い頃に父親とお風呂に入っていたような気もするけれど、記憶はおぼろげだ。
 それならば、間違いなくはじめて目の当たりにする男性器なのである。
 ましてや臨戦態勢のものなど見たことがあろうはずもない。
 知識として持つだけである。

「大きいです」

 素直な感想だ。

「自分ではわからないけど…… ちょっと恥ずいな」
「ごめんなさい。目が離せなくて」

 そういうと、彼女は彼の性器を一度両手で包み込んでから手を離して顔を上げ、またもや唇にキスをした。
 舌をからめる積極的なキスだ。
 彼女も、クロのように情感を感じさせるような甘いくちづけをしたいと思っている。
 なのに、唇が触れあった瞬間すべてが消し飛んで、彼の口の中が全部ほしくなるのだ。

「唾液を飲ませてください」
「え? あ、ああ」

 クロは彼女からのリクエストに、頑張って口の中に唾液を溜めて、彼女から重ねてきた口内に送り込んだ。

 喉を鳴らして彼女はそれを飲み干す。
 すっごく嬉しそうな、いや、恍惚的で、満足な表情を浮かべている。
 なんだか申し訳ないような恥ずかしいような、不思議な感じで、クロは彼女の性行為に身を任せていた。
 今日は彼女のやりたいようにさせてあげたい。
 そう考えていたから。

「私以外とキスしたことがないんですよね?」
「そうです」

 よかった……と彼女は呟いたが、なにがよいのか彼女自身もわかっていない。ただの独占欲なのか、なんなのか。どんな気持ちか。どんな理由か。
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