卯の花の門に

まーくん

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「お母さんとは?」
「うちの母さんは、そういうタイプじゃないなぁ。気の置けない友達って感じだね」
「私がクロくんのお母さんなら、きっと毎日キスします」
「そんな仮定、意味ないじゃん」

 クロはついに笑ってしまっていた。

「じゃあ、ペニスにキスするのも私が最初ですよね」

 そう言って、彼女はクロの股間に顔を埋めた。
 そして、彼の男性器の先端に口付けした。

 ちゅっ
 性的な快感は弱かったけど、彼女のその行為にクロの性欲はますます高ぶっていった。
 ふだん誰にも見せないような部分を、女の子にキスされているなんて、なんていうか、すごくすごい。

 ちゅっ、ちゅっ。
 なんども軽いキスをして、やがて彼女は舌を出して彼のペニスをなめ始めた。

 彼女の舌が“先端のくびれ”に触れるたび、腰にしびれが走る。
 気持ちいい。

「クロくん、お願い」

 股間から顔を上げたマルガレーテが彼に懇願しはじめた。
 クロは、彼女の潤んだ瞳を見て『交代してほしいということかな?』と思ったのだが、そういう意味ではないようだ。

「お願い。我慢しないで」

 彼女の願いの意味がわからなかったが、すぐに彼女の口から答えが出された。

「飲ませてください」

 そう言って、マルガレーテは今度こそ彼の男性器を口に含んだ。
 首を動かして、口内で彼の性器を刺激し続ける。
 激しい快感がクロを襲った。
 ペニスの付け根が痛い。
 へそまで反り返っていたペニスは口内で奉仕を受けるため、根元に強い力がかかっている。
 反対に、彼女の口内の天井部分、硬口蓋には、とても強い押し戻しの力がかかっていることだろう。
 それでもかまわず、マルガレーテは彼のペニスを口で奉仕続けていた。

「もう無理かも」

 肉体制御を解放していたため、すぐに限界が訪れた。
 彼が弱音を吐いた瞬間、マルガレーテは彼の腰を掴み、逃さない体制にした。

「……」

 言葉にならないうめき声。
 かっこ悪い声だと思ったが、別の自分たちが、
 『これはしかたない』
 『情けないなんて思う必要はない』
 『彼女に感謝すべきだ』
 と語り合う。

 クロは、とうとう堰を切ったように、マルガレーテの口内に精液を放ってしまった。

 マルガレーテはしばらく顔を動かすことをやめ、彼の射精が治まるのを目をつぶって待った。
 液体が放出されるたびに、クロの中に、嬉しくて恥ずかしい気持ちが一緒に溢れる。
 やがて、マルガレーテは男性器から口を離すと、目を閉じたまま喉を鳴らして彼の精液を飲み込んだ。

「お、おいしくないです……」
「そりゃそうだろうさ」

 クロは立ち上がって、水の入ったグラスを彼女に手渡す。
 水いっぱい用意していてよかったね。

「自分で望んだことですから」

 あまりの匂いと粘り気に少しむせてしまって、マルガレーテは涙目になってしまっていた。
 クロからグラスを受け取ると、冷たい水を喉に流し込む。
 でも、やっぱり涙をあふれさせてしまった。
 頬をつたう。
 せっかく彼が出してくれたものなのに、我慢できず水で流し込んでしまったことについて、不甲斐なく感じたからだ。
 クロにはけっして伝わらない心情の感情だ。

 彼の味を薄めてしまった……

 これ以上くやしい気持ちはない。
 目の前の男は、苦笑いしながら、サイドテーブルの上に生成されたタオルを彼女に手渡す。
 ぜったい、この気持ちは届かない。
 マルガレーテがくやしく思うのは、自分のことだけでないから。
 きっとクロは、『自分の精液は女の子を泣かせてしまうほどまずいのか』とか思ってるに違いない。

 でも、そのとき、クロは、マルガレーテの青い瞳から流れる涙について、男はなにか詩的な表現をしなければいけないのだろうかと考えていた。
 できそうで、できなさそうで、だからけっきょく大人はなにも言わないのかと、自分にがっかりする。
 これは逃げだ。でも、なにを言ってもダメだと思う。
 ぜったい、この気持ちは届かない。
 きっとマルガレーテには、女の涙になにも言わない理解ある彼氏に見えているに違いない。
 マルガレーテにはけっして伝わらない心情の感情だ。

 これからつながろうという男女なのに、こんなにすれ違っている。
 わかりあえるといのは幻想で、わかりあえているという錯覚を共有しているだけなのか。
 人類が初めて言葉を発したとき、そこに苦悩はあったのか、限界を感じたのか。記録はない。
 しかし、科学という強力な暴力で自然の摂理を手に入れつつある人類であっても、互いの気持ちひとつも理解できないのだ。
 ましてや男女の溝は深いのだろう。

「苦しいから泣いたのでも、嫌だから泣いたのでもありません」
「そうなのか?」

 マルガレーテから受け取ったグラスをテーブルの上に戻し、クロは気の利いた言葉も言えぬまま。

 でも、ただ彼と一緒にいるだけで、マルガレーテの中には愛おしさが溢れてくる。
 さっきのおいしくない液体が、彼を気持ちよくさせた証拠だとしたら、やはり嫌だなんて気持ちは微塵もない。
 なんでもしてあげたかった。
 彼が望むのであれば、望むだけ子供を産んでもいいと思えるくらいに。

「気持ちよかったですか?」

 さっき彼は感想を言ったはずなのに、また聞いてしまった。くどい。

「すごく」
「衰えないですね」

 はにかみながら、マルガレーテは彼の下腹部を見る。

 ベッドに座る彼女は自ずと上目遣いとなる。
 クロからは、その目線がとても官能的な仕草に見えた。
 全裸の美女が自分のすべてを受け入れると言っているのだ。これで興奮しないわけがないだろう。

「ずっと興奮してるから」
「私もです」

 マルガレーテはベッドの上に仰向けになった。

「今日は私の思うとおりでいいですか?」
「ああ。俺も今日は君の願い通りにしてほしい気分なんだ」

 マルガレーテは彼の中にどれほどの衝動が高まっているのかわからない。
 だけど、もっと焦らしたいと考えた。
 だって、このためにずっと空想だけで我慢してきたのだから。

「私が、どれくらい興奮しているか確認してください」

 そう言って、ベッドに寝転がっていたマルガレーテは両膝を持ち上げた。
 立てた膝、長い足が開かれ、彼女の秘密の場所が露わになる。
 光量を落とした室内照明に照らされて、なまめかしく光っている。

「濡れてるね」
「はい。ずっとずっとこうです」

 自分からしたポーズとはいえ、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。
 処女は大胆になる加減を知らなかった。

「あなたと一緒にいられると考えただけでこうなってしまいます」

 マルガレーテは、クロに近づくように促す。

「もっと見てください」
「うん」

 クロはベッドに近づいて、彼女の秘密を明かそうとした。

「変ではありませんか?」
「いや。綺麗だと思う」

 お世辞でも、その場限りの取り繕いの言葉でもない。
 正直な感想だ。

「よかった……」

 心底ほっとした様子である。

「いやだって言われたら、どうしようかと」

 そんなこと言うわけないじゃないかとクロは思った。
 嫌だと思っても思わなくても、そんな言い方はしない。
 でも、クロは本当に嫌だなんて感じることはなかった。
 なぜなら、マルガレーテの秘密は、まるで恥じらいを隠すように固く閉ざされていたから。
 こんなに成熟したプロポーションを持ちながら、まるで童女めのわらわのように見える。態度も、性器も。

 クロは一族の子供たちと風呂に入ることがある。システマティックな体の清掃とは違い、大人数での入浴はコミュニケーションの一環だ。
 そこで幼女たちの性器を見かけるが、それは男性を喜ばせる器官ではないという感想だ。
 興奮はしない。ただ、それと同じように無垢な存在なのに、彼女の子供のような性器には感動があった。

「綺麗に感じるよ」

 クロの言葉ひとつで、マルガレーテの心は晴れ上がる。
 子供っぽい性器なんて言ったら気分を害するだろうから表現しない。

「ずっとマスターベーションもせずに我慢してきましたから」
「そうなんだ?」
「はい。この日のために」

 クロには、やはり彼女の思惑は伝わらない。

「男子はほぼ全員自慰はするものだと思う」
「わかっています」

 まるで事情は把握していると言いたそうに、マルガレーテは足を開いたまま、そう言った。
 滑稽ではあるが、気持ちは維持できている。

「練習の意味もあるのですよね」

 そういって目を細めた。

「代替行為だよ」
「これからは私がいます」

 クロの返答に、ぎゅっと目をつぶった。

「いつでも、どんなときでも」

 恥ずかしいのなら、言わなきゃいいのにとクロは思う。

「あなたのために、すべてを残していました」

 なんだか不思議だ。
 二人の時間をはじめから望んでいたかのような台詞だ。

「あっ……」

 小さく呟いて、彼女は、そこでようやく自分の秘密がまだ閉ざされていることに気付いたようだった。
 両手の指で扉を引っ張る。
 白い肌の中は、薄桜色で、体内の方が色素が濃く見えるが、白とピンクの違いだ。若干の違い。
 どちらも美しく、そして男の劣情をかきたてる色だった。

「私の純潔の証、見えますか?」

 てらてらと光る彼女の扉の奥に、それはある。
 どんな誘惑だって拒む意思が形になったようだ。

「うん」

 クロがそういうと、マルガレーテはまたしても涙を流した。
 泣き虫だ。

「あなたのために、ずっと自分で見ることも触ることもせずに生きてきました」
「??」
「全部、あなたのために……」

 クロは恋人の男性遍歴にこだわりはない。
 優しくて美しい彼女に元彼がいても、そうだろうなと思うだけだ。

 学生時代は恋を謳歌して、成人してからは家の決めた相手と生涯を共にする。
 このような世界では、貞操のあり方が変化するのは当たり前。

 自らの意思で妊娠をコントロールできる肉体を持つに至ったアオイ国民には、恋の謳歌と肉体の対話は娯楽のひとつなのかもしれなかった。

「触れて、そして……」

 マルガレーテが言いにくそうにしているので、クロは彼女に近づいて、彼女の股間に顔を近づけた。
 さっきとは反対に、クロが舌を使ってマルガレーテに奉仕した。
 くちゅくちゅという水の音が響く。

「ああ」

 予想以上だった。
 マルガレーテは脊髄に強い電気信号を感じ、体をほんの少しだけ跳ねさせた。

「クロくん……、ク、クロ……、ホントに、気持ち、いい、……です」

 荒い呼吸でマルガレーテはそう言った。

「練習しておいてよかった」

 照れ隠しに、クロはさっき彼女が言った自慰の理由を茶化した。

「違います違います」

 マルガレーテの抗議は、自慰の有無と自分の快感には、相関関係にないという意味だ。
 そもそも彼氏が自慰していたとしても不潔だなんて思わないし、それを肯定するために自分の快感があるのだとも思わない。両方否である。

 想像以上の快感に戸惑っていた彼女であったが、またしても泣き出してしまった。

「嫌です。嫌です。私の知らない女に、こんな気持ちいいことを与えないでください」

 今度は本気で懇願する。

 クロはやはり不思議だと思う。
 こんな成績がすべて最高点の美女に、なぜ自分がここまで好かれるのか。
 まったく思い当たる節がない。

 ただ、クロは、マルガレーテがなにを願っているのかは理解できている。
 何度も何度も口にしている言葉。


 生涯を一緒にいたい。
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