卯の花の門に

まーくん

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 だが簡単に『はい/いいえ』を答えることができない。
 どちらかといえば、期待は持たせないようにすべきではないかという気持ちが強い。

 この国では学生時代の恋は人生を彩るための花火に過ぎない。
 燃え上がって永遠を誓って、それでも成人後は家に繋がれる。
 引き裂かれた悲恋の自分に酔いしれて、利害の一致した相手と生涯を共にする。
 ただの建前だ。

 恋の陶酔も、引き裂かれたという運命も、その後の穏やかで優しい人生の刺激に過ぎない。
 ただの記憶だ。

 もはや人間に、少なくともアオイの国民には、肉体的弱点はほぼなくなっている。
 四百年前の新世紀元年当時、すでに発達した医学があったことや、利便性の理由から、平均身長は据え置かれているが、間接部などの筋力は格段に上がっている。
 遙か古代の身長体重を大きく超えても、肉体負荷は軽減されているくらいだ。
 視力も平均的に、二十五メートル先の砂粒の表面を認識できるほどである。
 非公式ではあるが、老化を克服することも可能であるとか……
 このような完全で退屈な時代の人々の関心事は、いかに彩りのある人生を送るかである。

 そんな世界で、民が人生の暇つぶしに選んだのが、けっきょくは権力闘争であるというところが最高に滑稽だ。

 クロは馬鹿馬鹿しいと思っている。
 みんながつながって完成したシステムに。

 ただそれは、自分が出世とは無縁の家庭に生まれた人間だから思うことなのか。
 あるいは自分が頂点に立っても同じ気持ちでシステムを一蹴できるのか。自信はない。

 結局はしがらみに縛り付けられるだけだ。
 システムを破壊しても、新しいシステムに絡め取られるだけだ。
 システムとは、この世の理であるからだ。

 だから、マルガレーテの気持ちを理解できても、彼女を愛おしく思っていても、『俺も同じ気持ちだ』と言ってあげられないのだ。
 そんな単純な話ではない。
 人生を単純化してしまうような、危うい世界は存在しない。

 しかし、そんな事情を知っていながらも、口に出してしまうマルガレーテ。
 それは彼女が外国にルーツを持つからなのか。
 いや、アオイ国民として受け入れられたときから、この国の教育を受けているはずだ。

 ふと気になったクロは、彼女の扉を舌で開け、部屋の中をやさしく解きほぐしながら、頭の中で彼女のキャリア情報に接続した。

 ただの思いつきだったのに、いきなり後悔した。
 記憶からすべてを消し去る。
 彼女の情報は、クロに対して完全オープンにされていたからだ。
 内心に関わることすら見えるようになっていた。
 父親が同化政策によって選出されたため、四人の家族でアオイに移住してきたのが十年前。
 それだけを残した。

 十年。これだけあれば、この国の氏と呼ばれるシステムも、家門という役割も理解できているはずだ。
 それなのに、なぜ受け入れられないのか。

 いや、彼女の気持ちはシステムへの反逆ではない。
 はる新島にいじまみずきりさめ クロガネ・セキチクへの執着だ。

「なんでもします……」

 激しい刺激の中でマルガレーテが呟く。
 クロは彼女の秘部から唇を離して、顔を近づける。
 おでことおでこをこっつんこさせて言う。

「もし俺をつなぎ止めておきたいのであれば、受け入れるのではなく自分を持ち続けてほしい」

 どアップのマルガレーテの瞳に、懐かしいなにかが見えた。

 碧い世界。
 溢れる涙。
 押し寄せる波のよう……
 マザー

「そうすれば、きっといい結果になる」

 いまはこれが精一杯だった。
 両親は味方になってくれるはず。ならばあとはみずの長たちを説得するだけ。
 考えるだけなら簡単。

 ベッドの上で同じ身長の男に覆い被され、マルガレーテは背中に回していた腕を彼の首に移動させて力を込める。
 唇を合わせて、彼の中に舌を侵入させる。

 もう力任せのべったべたのぐっちょぐちょだ。
 ムードも何もあったものではない。

 男女の駆け引きとか全くない。あるのは好き好き攻撃だけだ。
 成績優秀、知性と理性を高度に制御する達人のはずなのに、性技は乱暴だ。
 経験のなさを技巧でなんとかしようとするクロとは対照的である。

 クロは自分の口の中で飛び跳ねる彼女の舌を自由にさせておきながら、なんだかおかしく感じていた。
 はじめてキスしたときから思っていたが、どんどん感情が爆発している様子が彼女の中にうかがえる。
 彼女の断片的な言葉を集めて整理するなら、ずっと押さえていたからこそ決壊したときの勢いは抑えきれないと言うことなのだろうか。

「次はどうする?」
「あ」

 自分でプランがあるとか言っておきながら、あんまりにも夢中になりすぎて、クロに促されるまで忘れていた。
 彼が離れなければ、彼の歯のひとつひとつの形を覚えるまで続けていた気がする。

「えっと、次は仰向けに寝てください」

 マルガレーテに言われるがまま、クロは彼女の上から体をよけて、そのままベッドの上に横たわった。
 部屋の全体が見渡せないほど大きな寝室の中央にある、おおきなおおきなベッドの上のワンシーンだ。

 マルガレーテは本当はすぐに彼の上に跨がろうと思っていた。
 でも、彼の横たわった体を見たら、すぐに衝動に負けてしまう。
 彼の胸、腹、そして下腹部をなでる。
 クロはもどかしいばかりで、あんまり気持ちがいいわけではなかったが、それでも好きなようにさせていた。
 下腹部にはへそまで伸びた、大きな彼自身。
 とてもたくましいという感想。

 彼の両親は、彼をデザインしたわけではないのだろう。
 ならば、彼の性器は、彼自身の遺伝子による無作為な形によるものということだ。
 それなのに、なんて大きくて、太くて、長くて、固くて、こんなにもエッチぃ形をしているのだろうか。
 目が離せないし、触れて撫でて口付けしたい衝動を抑えられない。

 あ、そうか。

 彼女の中で新しい解が生まれた。

 それは自分がヴァージンだからだ。
 処女でなくなれば、きっと触れて撫でて口付けするよりも、自分の中に迎え入れたいと思う気持ちの方が大きくなるのではないか。
 そんな風にひらめきながらも、彼のエッチぃ形を覚えようと必死に手を動かした。

 クロはもどかしいけど気持ちいいぬるま湯気分を楽しんでいる。
 なんと言っても一度射精しているのだから余裕がある。
 また、恋人の積極的な姿を見て、今日は、ここまでで終わってしまうのではないかという心配もしていない。
 けっきょく、彼の下腹部の上に、へそに向かってゆるやかなアーチをかたどる固い橋は、マルガレーテの手で撫でられまくって、舌でべろべろしまくられまくりまくって、唾液まみれになっていた。

 彼女は満足したというよりも、ようやく気がついた感じだ。
 もうとろとろの表情なのに、はっと我に返った感じで思いだしたのだ。

「えっと、次を……」

 彼女のめちゃめちゃ高揚した顔で発せられた言葉に、冷静なクロは吹き出しそうになるのをこらえた。

「好きにしていいよ」

 そうだ。今日はお泊まりだし、時間に余裕がある。
 なんなら明日一日かけてもいい。
 もちろん冗談だけど。

 彼らの肉体は、二十四時間程度からみあってても余裕なようにできている。
 クロは体内で、彼女の希望する精液量を想定して作り出している。

 彼女からとはいえ、自分も了承して好意を受け入れたんだ。
 今日は最後まで彼女の望むようにしてあげたいと思っていたし、自分が受け持つ半分の責任を理解していた。

「じゃあ……」といって、
 彼女は、名残惜しそうに(本当に名残惜しそうに)クロの男性器から手を離して、ようやく本来の目的である彼の上に跨がった。
 ふとももを伝う液体が冷えてしまうくらい時間が経過していることを自覚している。

 クロは『いよいよなのかな』と思った。
 もちろん期待はしているが、なるべく余計なことは言わないようにする。
 彼女は衝動に流されがちではあるが、なんらかの考えを持って今夜を迎えている。
 それは、ロマンティックな処女喪失を願うような幼い理想ではなさそうだ。
 まるできりさめクロガネという男をつかみ取るためであればなんだってするという意思にみえる。
 学生時代を楽しく過ごすためのパートナー探しでは済まない強いものを感じる。

 当事者であるにも関わらず、クロには一切わからない。
 十年分の情報を照らし合わせてみても、現在同じ身長であること以外、ふたりに重なるものがない。
 出身地、誕生日、なんら共通項がない。
 血液型という概念はこの世界にはない。全員同じであるから。

 十年分の学習成績を並べてみれば、実ははじめから成績優秀者であることがわかる。
 このことから、生まれながらに良い教育を受けていたことが想像できたが、それだけだった。
 本質はなにも見えない。

 彼女は何者なのか。俺の中になにを見ているのか。

 クロの上に跨がったマルガレーテは、またしてもクロへのキスに夢中になったが、今度は比較的早く、我に返ったようだ。
 彼の棒に自分の溝を当てて、ゆっくりとこすりはじめた。

 ああ、こういうことがしたかったんだな。

 クロは納得した。

 極限まで焦らす作戦なのだろうか。
 この場合、ある程度のところで俺が涙目で、『お願い、もう入れさせて』って懇願したら彼女は満足するのかな。とか考えていた。

 様子を見てみよう。

 精液はかなりの量を用意できるし、それこそ最後に溢れるくらいに出したら喜んでもらえるだろう。

 クロは焦れったさを感じながらも、余裕を持って彼女の好意を受け止めていたが、彼女のしたたりが思った以上であり、このように性器をこすりつけていたら、そのうちにするっと入ってしまうのではないかと心配になった。

 そう思って彼女の顔を覗くと、
 それはもうすんごい顔で腰を振っている恋人の姿があった。

 目を強く瞑って、顔面真っ赤ではぁはぁ言いながら自分の陰核を恋人の棒にこすりつけている。
 これはさすがに一回止めた方がいいなとクロは思った。
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