卯の花の門に

まーくん

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 恐ろしく乱暴に、彼女は彼の男性器を自分の体内に導いた。
 貫かれるという表現が、まさしくと言える。

 彼女の処女膜は傷つき、出血した。
 どんなに肉体が強靱になっても、痛覚は存在する。
 強い痛みが彼女の体に広がる。
 ドンと体いっぱいに痛みが走ったと思えば、次は腰付近から体中にじわりと広がっていく。

 クロは、いま目の前で操を失った少女の肌に鳥肌がたっていることに気付いた。
 神経系の制御を最低レベルにしている証拠だ。
 苦痛を精神ではなく肉体の反射に委ねる理由がわからない。
 合理的な説明ができない。きっと彼女は、猛烈な寒気と吐き気に襲われていることだろう。
 自分の体にしがみついて、顔を見せてはくれない。
 マルガレーテは、辛いのか、苦しいのか、恥ずかしいのか、どうなのか、なんだかよくわからない感情で、彼と顔を合わせられなかったのだ。

 涙が溢れて顔はぐちゃぐちゃ。こんなブス顔、好きな人に見せられない。
 痛いから涙が出るし、嬉しいから涙が出る。
 彼を迎え入れたエントランスからは、じんじんとした痛みが全身に広がっている。
 すごく痛い。
 でも、そんな中でも冷静な自分は、『彼が大きすぎて、入り口どころか、いきなり部屋にまで上がり込んできている』なんて気持ちがあって、笑っちゃってる。

 クロは、もちろんそんな彼女の複雑な気持ちなんてわからない。

 ただ、自分の体の上で震えている少女の背中をなで続けた。
 鳥肌の治まった背中は、すごくすべすべ肌だ。
 あんまりになめらかすぎて、『本当に毛穴があるのか?』なんて疑問が浮かぶほどだ。

 クロは、はじめて包まれる女性の体内から、強い快感を得ていた。
 マルガレーテが感じているものとは正反対の感覚。
 対等なはずの関係なのに、まるで自分がズルをしている気になる。

 彼はマルガレーテの背中を撫でる右手とは反対の左手を強く握りしめた。
 痛覚を最大限にして思いっきり握る。
 あと少しで骨が砕けるということろまで強く握る。
 左手を握る。
 そんな感覚。
 性器が握られる。
 彼女の体内に。
 やわらかいのに固い。不思議な感覚。
 そんな不思議な感覚が、自分の男性器を包んでいる。
 やわらかな手で握られている。

 のような表現が、適切な気がする。

 彼女の口の中と似たような感覚ではあるが、口内は、舌という柔らかな部分と、口蓋や歯という固い部分が明確に分かれている。
 これに対して、膣内は、柔らかさと硬さを同時に持ちながら、全体的に均等な感触の不思議なものだった。
 もちろん、生まれて初めて感じるものだ。

 なるほどなるほど。確かにこれは気持ちいい。

 肉体制御を最低レベルにしているため、このまますぐに快感の波に飲み込まれて、射精に至ってしまうだろう。
 それでいいと思う。
 やがて、制限をガチガチにかけて、一日中互いの体内を楽しむような日がくるかもしれない。
 でも今日は、このままありのままに彼女がくれる気持ちよさを味わおう。
 この快感の波に流されて、どこか遠くに……

 そう思っていると、マルガレーテは両腕を立てて上半身をおこす。
 下半身でつながっている同じ身長のふたりの視線が正面からぶつかる。
 マルガレーテの目からあふれた涙が、彼の顔にぼたぼたとこぼれ落ちる。
 クロは恋人にいろいろな言葉を投げかけたかった。
 『気持ちいいよ』とか、『嬉しいよ』とか。
 でも、なにも言わない。
 それはいままでの、そのほうがいいという理由からではない。
 
 大粒の涙がこぼれる彼女の青い瞳。
 海だ。
 あの日、水族館で見た海。
 生命の根源。
 すべてのはじまり。
 すべてが流れ帰る場所。
 どんな遠くに流されても、たどり着く場所は、彼女か?
 そんなことを思った。

「気持ちいいですか?」
「これ以上はないくらい」
「もっとしたいですか?」
「もっとしたい」
「毎日したいですか?」
「いや、それは無理かな」

 クロは微笑む。
 もちろん肉体的には毎日も可能。でも、他にやりたいことがいっぱいあるからね。
 どんなに肉体が強くなっても、一日は二十四時間。
 もっと彼女といろいろな時間を過ごしたい。

「いろんな女としたいですか?」
「いや。したいと思うのは恋人だけ」
「私ともっとしたいですか?」
「もっとしたい」
「もっとしたいと思っている間は、私を捨てたりしないですか?」
「そんなことにはならないよ」

 マルガレーテは、軽く彼に口付けると、そのまま目を瞑って腰を動かし始めた。
 クロには彼女の痛みがどれほどのものか想像できない。
 しかし、激痛に耐えているであろうことは予想できた。

 彼女はそんな痛みの中、一定のリズムで彼の男性器を自らの体内で刺激し続ける。
 彼女の痛みとは反対に、クロの体には快感が広がる。
 腰から背骨を伝って脳に『気持ちのいい刺激』という情報がもたらされる。

 肉体の制限レベルを最低にしているからだろうか。
 脳に運ばれた情報の中に不思議な信号が混在していることに気付いた。
 ひとつは、彼女の肉体から伝わってきたマルガレーテの精神内にある、妊娠承諾設定の許可信号だ。
 彼女は今日、クロが望むのであれば妊娠してもよいと設定したのだ。
 これは掟破りとも言える行為である。学生のうちは認められない。
 そしてもうひとつは、ノイズのような小さく乱れた信号であった。
 解析すると、非常に単純で強いメッセージが込められた内容であることがわかった。
 『女を孕ませろ』
 クロは衝撃を受けた。
 これの正体は、“本能”だ。
 自分の中にこのような信号が含まれていたことに今まで気付かなかった。
 自分のことなのに知らないことがある。そのことに驚愕する。
 ワニの脳部分に原始の信号が流れていった。

 なるほど。制御の第一歩は観測することなのか。
 クロは生物としての本能が発する信号を握りつぶした。

 馬鹿めが! 理性の勝利だよ!

 クロは改めて、自分が自分の肉体を支配していることを喜んだ。

 俺の支配者は後にも先にも俺だけだ。

 同時に、彼女の膣内によってもたらされる快感が押し寄せてくる。
 クロは満たされた心を観測していた。
 処女喪失の苦痛の中であっても恋人のために献身を尽くす彼女。
 非常に強い意志を持つ人であり、最高の仲間になってくれることは間違いない。
 家にとってどうかはわからないが、きっと自分にとってはかけがえのない存在だ。
 クロは、自分の腹の上で腰を動かし続ける恋人の腰を掴んで固定させた。

「出すよ」

 愛想なしの冷たい美人の彼女。
 無表情の天才少女。
 自然のおんちょうを一身に受けて生まれた女性。
 誰よりも熱い炎を心に秘める恋人。
 寒さにはゼロケルビンという理論上の下限があることに対して、熱さには制限がない。
 どこまでも燃え続ける。近付いてくる。
 それに賭けてみよう。

「はい」

 涙でぐっちゃぐちゃになった顔の美女の一番奥深くにクロは射精した。
 これほどかと思えるほどの快感だった。

 最後の瞬間、マルガレーテは、思わずクロの肩に噛みついていた。
 先ほどの傷が深くなる。
 ぐったりと自分の体の上に横たわる少女の髪を、クロはゆっくりと撫でる。
 何度も。近付いてくる。
 愛しいという気持ちは嘘ではない。
 でも、愛しいでは表しきれない、言語化できない思いがこの世にあることを思い知らされた。
 これがひとりの限界だ。ふたりだから乗り越えられるハードルがある。
 こんなちっぽけな壁。ふたりなら手を繋いで超えていける。

 はぁはぁという深く荒い呼吸。
 自分の胸の上にふたつのボールがあるようで、なんだか不思議な気持ちになる。

 恋人の大きな乳房だ。
 夜空に浮かぶ、ふたつの月のように。

 自分の男性器は、まだまだ硬さを保ったままだ。
 少し身をよじるだけで、彼女の傷を刺激してしまう。
 クロは彼女の膣内からペニスを引き抜こうとしたが、恋人が彼の体をぎゅっと抱きしめていてそれを阻止する。
 大きなふたつの月を抱きかかえながら彼女の荒い呼吸を感じる。
 はあはあを超えて、ぜえぜえだ。
 脱力しながらぎゅっと抱きしめるなんて芸当、なんだかよくわからないけどすごい。

「グレッチェ……」

 それでも彼は恋人の中から自分自身を引き抜いて、自分の上に覆い被さる彼女を、大きなベッドの自分の横に寝かせつけた。

 大きな胸が大きく上下している。
 目は瞑ったまま。
 あ~ぁ
 彼女の股間はひどいことになっている。
 ぐちゃぐちゃの愛液と、自分の放出した精液が溢れて、その中に激しい出血の跡が混ざっている。

「肉体のダメージが違うのに、これで責任が半分ずつだなんて不公平だよな」
「それが性別による役割というものです」

 目を瞑ったまま、マルガレーテは彼の呟きに答える。
 でも、その先は言えなかった。
 彼が望まない限り。

 しかしそれが性別の役割という事実だ。
 彼の最大の味方をこの世界に召喚することができるのは、女の体を持つ自分だけだ。

「グレッチェ……」

 彼がもう一度自分の名を呼ぶ。
 彼だけに許した愛称。
 彼が頬に触れる。
 長くて繊細な指。女の子みたい。
 こんな指で、よくバスケットボールを掴んだりできるよね。
 な~んて、彼が休み時間に友達と遊んでいた姿を思い出す。
 あのときは、遠くからこの指を眺めるだけだった。
 今は自分の頬を撫でている。
 すごくうれしいという気持ちが、気持ちいいと錯覚させる。

「グレッチェ、俺は決して裏切らない」

 おでこをこっつんこする。

「だから、俺を疑わないで」

 近付いてくる。

「信じる以外の答えがありますか?」

 マルガレーテは、自分の頬を撫でる彼の手に自分の手を添える。

「一緒にいるだけで喜びがあります」
「そうか……」

 クロはそういって、彼女の横に並んで仰向けになった。

「そうだったな……」

 そうやって自分の中でなにかを納得させたような彼の上に、またしてもマルガレーテは覆い被さる。
 彼の胸の上に顔をのせる。
 彼の鼓動が聞こえる。

「あ……」

 彼女は彼の男性器がまだ硬さを保っていることに気がついた。

「もういっかい、しますか?」
「あ、ごめん。もういいよ。今日は休んで」

 彼の回答に安堵したマルガレーテは、やわらかい表情をして彼の胸の上で目を閉じた。
 と思ったら、また目を開いて彼の顔を見つめる。
 何を考えているのかわからない。
 さっきまでのぐちゃぐちゃの顔から、無表情の顔に逆戻り。
 まぶたは腫れているし、涙のあと、よだれのあとも残したまま、それでも愛想なしの美女だ。

 そう思っていたら、次はクロの髪を指でもてあそび始めた。
 つまんだり、くるくるってしたりする。
 なんだかわからないままだが、気に入ってくれているのなら、伸ばしていてよかったと思った。
 彼女の好みに合うのであれば、もう少し伸ばしてもいい。

 そうして夜は更けていった。

 熱くも、激しくもない夜だ。この世からふたりのヴァージンが失われただけのこと。
 ただ、希望が生まれた夜でもあった。
 やがてアオイを照らすであろう、ゆっくりと近付く太陽。
 それは、クロの中にある自然を尊ぶ価値観と、世界に祝福されるマルガレーテの存在が矛盾することのない証左となった。
 彼女の才色もまた、自然からの贈物ギフト。ならば、太陽に恋い焦がれるように彼女を求めたとしても、誰に非難される謂われがあるものか。
 何よりも、彼女は仄暗い海を漕いでいた自分に与えられた灯台なのだから。
 いま、クロの中に希望のともった。
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