王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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控室の後始末と兄の愛

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『で、どうするの?ただでさえ帝国を招いての夜会で大変だったのに、終わった後までこんなだなんて…勘弁してほしいよ、全く』

控室でソファに沈むヨハネスに、アンドラは苦笑を浮かべ、テオドールが突っ込む。

『殿下、心の声がダダ漏れですよ。いくらなんでも皇太子殿下の御前で』

『知ってるよ!』

ヨハネスはアルビオンに視線を投げつつ、尚も悪態をつく。アルビオンは横目でヨハネスを眺め、淡々と問う。

『で、どうするつもりだ?』

フリードリヒはアルビオンの問いに、クラリスに視線を送った。

…え?私?

クラリスは少し考え込み、口を開く。

『まぁ、本音を言えば…どうでもいいというか…ですが、そうも参りませんわよね。でしたら、とっととパナン王国にお帰り頂いては?』

『お咎め無しか?』

アルフレッドは少し驚いた表情で顔を上げる。

『殿下の言葉を借りるなら…罰する価値もない、というところでしょうかね』

疲れ果てた面々が寛いでいると、突如飛び込んできたのはリントン王国のミハエルだった。

『ねえ、揃って逃げるなんて酷いよね?あの後だって大変だったんだからね!』

クラリスが呆れ顔で言葉を返す。

『卒なく終えましたの?』

ミハエルはテオドールを捕まえ、興奮気味に続ける。

『ねえねえ、聞いた?全く関係ない私にあの惨事の後始末をさせておいて、あの言い草ときたら』

テオドールはニヤリと笑った。

『そっくりですよ、兄妹』

ミハエルは不貞腐れ、今度はフリードリヒに文句を言う。

『ねえ、今回はえらく義兄にお世話になったでしょう?でも嫁の教育が成ってないんじゃない?』

『血は争えませんね…』

フリードリヒもまたニヤリと笑う。

その様子を見ていたアルビオンが口を挟む。

『ミハエル、落ち着けよ。お前には貸しがあるはずだ。このくらい当然だろ?』

『貸し?』

ミハエルは納得いかない表情でアルビオンを見上げる。

『アルビオン殿、あの程度の事で他国のイザコザの後始末をさせられたのでは割に合いませんが?』

アルビオンは呆れた様子で返す。

『あの程度って…あれはあれで結構大変だったんだからな?誰が好き好んであんなフェイクニュースを流したいものか!仮にも私は帝国皇太子だぞ?』

…フェイクニュース?

ヨハネスは沈んでいたソファから飛び上がった。

『私の嫁取りの件!殿下だったのですか!』

アルビオンは、そこにヨハネスがいたことをすっかり忘れていたらしく、バツの悪そうな顔でミハエルを見た。ミハエルはにんまり笑い、ヨハネスに同意を求める。

…いやいや、お前が仕込んだフェイクニュースだろ?

アルビオンは怪訝そうにミハエルを睨む。

『では、今回の本題ですが』

フリードリヒが口を開き、アルビオンは真っ直ぐに向き合う。

『微力ながら、ご協力いたしますよ』

…帝国の従属国となるのか?

その心の声を代弁したのはアルフレッドだった。

『殿下、それは従属国となるご判断をされた、ということですか?』

鋭い切り返しに、アルビオンは少し驚いた様子でアルフレッドを見つめる。フリードリヒは微笑みながら答える。

『いいや、そういうことではない。帝国は三つ巴の現状を打破するため、我が国に架け橋となって欲しいとの申し出をしてきたのだ』

アルビオンは王子たちを見渡し、淡々と口を開く。

『私は大王国が帝国になろうが構わない。一大勢力に拘るつもりはないからね』

立ち上がったアルビオンはフリードリヒに向かって言った。

『フリードリヒ殿、本丸も片付いたし助かったよ。礼を言う』

フリードリヒも見送りのため席を立つ。

『謝意なら義兄上にお願いします。我々よりずっとご苦労されたはずですから』

流石のアルビオンも、あの惨事の後始末を一人で背負ったリントン王太子ミハエルに向かって言った。

『ミハエル、礼を言う。おかげでエリザベスのコブを取り除くことができたよ』

アルビオンは満足げに控室を後にする。

…は?

一同は一斉にフリードリヒを見ると、彼は一人ケラケラと笑っていた。

…共犯かい!

テオドールは怪訝そうにフリードリヒを見る。フリードリヒは嬉しそうに頷く。

そう、アルビオンにとって三つ巴などどうでもよかった。弟の嫁となるエリザベスを気にかけ、皇族として生きる彼女の右腕となるミランダをどうしても守りたかったのだ。皇太子である前に、アルビオンは一人の兄だった――まさに『見えないところでの愛』であった。
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