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第八章 告げられた真実

大失態を犯した理樹

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この申し出を断っていつまでも付き纏われては迷惑だし、一回食事でもすれば気が済むんだろうと鷹を括っていた。

亜紀に余計な心配をさせないように報告する必要はないだろうと考えたのが、俺の大誤算だった。

約束通り、愛理お嬢さんと俺は食事に出かけた。

車でドライブして食事をした。

亜紀には友達と出かけるとだけ伝えておいた。

「亜紀、折角の休みなのに、悪いけど友達と出かけてくるよ、留守番しててくれるか」

「大丈夫ですよ、お気になさらないでください」

「今度の休みは一緒に出かけような」

「はい」

なんて俺は調子がいいんだ。

こんなにもすらすらと嘘がつけるとは、自分で自分が怖くなった。

亜紀に本当の事を伝えて、心配させるよりは、嘘でも安心させておいた方がいいだろうと、この時は疑いもしなかった。

俺は愛理お嬢さんと待ち合わせをして、出かけた。
今日だけ思う存分楽しませてやれば俺の役目も終わる、そう思っていたが、まさか裏目に出るとは想像もつかなかった。

「理樹さんはなんでお父様の会社を継がなかったんですか」

「親の力は借りたくなかったんだ、男として自分の力で会社を経営したかったんだ」

「素敵ですわ」

やべ、愛理お嬢さんの目がキラキラ輝いてる。

惚れさせてどうするんだよ。

「理樹さん、今日はお食事はどこへ連れて行ってくださるのかしら」

「ああ、フレンチレストランを予約しておいた」

「なんてスマートな振る舞いなんでしょう、何が好きとか、どこ行きたいって、優しい感じですけど、それから予約じゃ間に合わないでしょう、わたくしはグイグイ引っ張ってくださる殿方が好きなんです、理樹さんは最高ですわ」

ああ、またしても大失態を犯した。

俺は面倒だから、さっさと決めたいし、逆に好みも聞かないで予約してと嫌われるパターンを狙ったのに、まさかの愛理お嬢さんの好みだったとは……

この日は失敗続きになった.。

でもこれで終わりだ、そう思ったのは俺だけだった。

俺は愛理お嬢さんをうちまで送り届けた。

「おお、付き合うことになったのか」

そう言って屋敷の入り口に姿を見せたのは愛理お嬢さんの親父さんだった。

「お父様、ただ今戻りました、理樹さんにデートして頂いて、送ってくださったのよ」

「それはご苦労様、娘の笑顔を見るのは久しぶりだよ、ありがとうな、東條くん」

「あ、いえ、でもこちらに伺うのは今日で最後です、付き合うことになったのではなく、思い出に最初で最後のデートのお誘いした次第ですから」

「そうじゃったか、よかったな、愛理」

「理樹さん、嫌です、最後なんて、こんなにもわたくしの心を理樹さんでいっぱいにして、さよならなんて、わたくしは諦めませんから」

そう言って愛理お嬢さんは俺に近づき、キスをした。

咄嗟の出来事に戸惑い、どうする事も出来ず、キスを受け入れた。

しばらくして、我に帰り愛理お嬢さんを自分から引き離した。

その時は親父さんの姿はなく、屋敷に入っていったところだった。

「約束が違うだろ、いい加減にしてくれ」

俺は大人気なく、声を荒げた。
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