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第五章 婚約者の存在

「お前、まだ倉田の事諦めてないのか」

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仕方なく、社長室に戻った。

リモート会議も終わり、昼休みの時間になった。

俺は早速経理部に挨拶に行く時間が確保できた。

経理部の部屋に入ると、本郷部長が一人だけだった。

「本郷部長、その節はお世話になり、ありがとうございます」

「おお、真壁、いや、真壁社長だな」

「みんな元気ですか、あの頃とメンバーは変わっていませんか」

「倉田の事聞きたいんだろ」

「バレましたか」

本郷部長は俺の気持ちは全てお見通しのようだ。

「倉田は頑張って働いてくれてるよ」

「まだ、フリーですよね」

「お前、まだ倉田の事諦めてないのか」

俺は真顔で答えた。

「当たり前です、静香に会いたくて五年かかる仕事を三年で片付けて日本に戻って来たんですから」

「そうなのか」

そこに静香が姿を現した。

「倉田」
本郷部長の言葉で、俺は振り向いた。

そこには静香が立っていた。

一緒にいたのは同期入社した恵美ちゃんだった。

恵美ちゃんは俺を見て声をかけてくれた。
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