1 / 4
おれのこと大好き大好きって言ってくれたじゃないですか
心臓がうるさい。
あとすこし、あと少しだ。そのほんの数秒が永遠ほど長く感じる。ついに結び目がほどけた時、一層鼓動は高鳴り鼓膜をとどろかせた。
拘束具が外れる。興奮と、些かの恐怖に息が乱れる。足首に色濃く残る戒めの痕。淀みかけていた怒りが蘇るが、今は不要な感情を抱いていたくなかった。心を静かに保ち、降っておりたチャンスに集中していたい。
震える足で立ち上がる。そのまま部屋を出ようとして、思いとどまった。クローゼットの扉を開き、目についた服をハンガーから取り外す。焦りに手が滑り、何度か引っかかった。なにをしているんだ、はやく、はやく。下着はもういい。探している暇がない。最低限人前に出られるような形にして部屋の扉を開く。音を立てないよう、慎重に。廊下を見渡す。本当に人の気配がないか、耳を澄ませていたいのにあまりにうるさい鼓動が邪魔をする。できる範囲で感覚を研ぎ澄まし、廊下を進む。一歩踏み込むたびにきしむ床が憎かった。いつも通り家から出ていく気配は感じた。仕事が終わる夕刻まで、帰ってくるはずはない。とにかく外に、外に出られたら。外にでて、警察に駆け込んで。そうすれば終わりだ。ぜんぶ、ぜんぶ終わりにできる。急かす気持ちとは裏腹に、囚われた体は不自由に緊張していた。呼吸が浅く速くなる。靴を履くのも忘れて、鍵を開けようとした時だった。
指先に触れた錠が、きぃ、と音を立てて、ひとりでに回った。
「先輩。どこにお出かけですか?」
そこにいるはずのない男の姿が、扉の前に立っていた。
「最近従順だったから」
落ちついた声色だった。
「ちょっと試してみたくなったってのが本音です。昨日だって、おれのこと大好き大好きって言ってくれたじゃないですか。ちがいますって。貶めたかったわけじゃない、……信じたかったんですよ、おれは」
彰吾はベッドに引き戻されながら、
「昨日の態度はぜんぶ嘘だったんですか?」
「う、そに決まってるだろ……っ!」
おまえなんか、お前なんかだれか、とひどく震える声で喚いた。こんなこと言ったら余計ひどくされるのがわかっている。でももう限界だった。激情が沸きだす。言葉が溢れる。
「もうやだっ、こんなのやだッ……もう、もう帰せよ! この変態っ、くそ野郎、おれの、おれの人生ッ……こんなのやだ、っう゛!」
首を掴まれて、ベッドに押しつけられる。きつく締められ、はくはくと唇が開いた。その上に蓋のない小瓶が傾けられる。
「がぼっ、がっ……!」
甘い液体を、とくとくと注がれる。喉で溢れてかえりそうになったところを手の平に塞がれ、彰吾は溺れかけながら必死に口内のものを飲み干した。
「っごほ! っが、げほっ、はっ、はっ……!」
「そっか。ぜんぶ嘘か」
舌に残る味を覚えている。その後のことも。ほんの少しの服用で自分を見失うほど溺れた記憶に肌が総毛立つ。それを、いま、どれだけ飲まされた?咄嗟に口元に差し向けた手を掴まれた。
「た、高瀬……」
仕様もない子を見守るような、やさしい笑みが、怖い。怯えた姿なんてみせたくないのに。勝手に身体が震えあがり、歯の根が合わずに音を鳴らす。
「今日は先輩のすきなこと、たくさんしましょうね」
あなたにおすすめの小説
元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話
ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生
Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158
ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/
fujossy https://fujossy.jp/books/31185
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。