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逃げたらだめですよ
しおりを挟む終電をのがした。
部署をまたいだ三次会終わり。後ろに三人の後輩を携えながら、タク代くらい出してやろうと鞄に手を突っこむも、
「おれの家にきません?」
その手をつかんだ後輩1が、ここから近いんです、と提案した。いいですねと後輩2が答え、おれもおれもと後輩3が乗るが。おまえら同期組はともかく、むしろおれは邪魔じゃないかと一歩引いてみたものの「この機会に、鷲見さんともっとお話したいです」なんて言われちゃワルイ気はせず、のこのことついていったのがすべての終わりで始まりだった。
「王様ゲームしません?」
つまみが錯乱する机の上に肘をつきながら後輩1、あらため烏丸がだした提案に鷲見は手を叩いて笑った。
「おっ、おま、王様ゲームって今どき」
「いいっすね。賛成」
「えっ」
「おれも賛成でーす」
「……まじ?」
今どき、ってか、このメンツで?男四人でやることか?しかし兎谷も馬渕も諸手をあげて賛成した。
「鷲見さん。いいじゃないすか」
ねっ、と烏丸が小首を傾げる。その爽やかフェイスと軽やかな声色で顧客の口から有無を奪うとされる男の前では自らも同様、まあいいかという気にさせられる。
「いいけど、やんならやるでつまんねー命令するなよ?」
「鷲見さんこそ。やだ、とか、だめとかはなしですからね」
「だは。なに命令する気だよ」
鷲見が笑うと、答えるように烏丸もほほえんだ。
最初の王様は馬渕だった。
「一番のひとが、すっげーエロく服を三枚脱ぐ」
なんだソレいっそ見たいわと笑ったが、一番は自分だった。
「仕方ねーな。お前ら、おれ渾身のストリップよく見てけよ」
見たこともないポールダンスを真似て、腰をくねらせながらワイシャツを脱ぎ捨てる。後輩らもキャイキャイと囃したてるので、興に乗ってそのままスラックスを脱いでから、手が止まった。あと一枚。さすがにパンツはアウトだろ。じゃあ残った半袖のアンダーシャツか?しかしこの空間にひとり上半身裸というのもどこか間抜けな気がして、捻った頭が靴下の存在に気づいた。するりと脹脛をすべらせ靴下を脱ぎすて、どや!と後輩らをみやるが、彼らの表情からは一切の笑みが消えていた。
「えっ」
まさか、滑ったのか。静かな視線にハラハラと冷や汗を垂らす心をよそに、烏丸がじゃあ次いきましょうかと促した。
「あ、次ぼくが王様でーす」
兎谷はだれよりも酔っていた。愛嬌のある顔を蕩けさせながら「2番と3番が濃厚チューで!」と命令を下す。鷲見はまた笑ったが、二番と書かれた棒をみて真顔になった。三番は烏丸だった。
「うぉ、おまえか」
「うおってなんですか」
「いや……わっ」
床に手をつきにじり寄ってくる。上から覆いかぶさるような体勢に、おもわず尻をずり下げた。
「先輩。逃げたらだめですよ」
「にげてな……んっ」
頬に触れた手に顔を上げさせられるやいなや、唇が重なった。ためらいゼロかよ。こいつもこいつで大概酔ってるな、とおもいながらつい唇を引き結んでしまうが、お題は濃厚チュー。ツンツンと唇をつく舌先を、口を開いて受け入れる。
「っ……ッ」
一瞬で口内を埋めつくすぶ厚い舌。ひけを取った舌は絡めとられ、ぬるぬると唾液をぬりつけられた。
「……ふっ……っ……」
烏丸の舌技は巧みだった。舌を絡ませ歯列をなぞり、尖らせたその舌先に上顎をすられるとゾクゾクと背筋が震えた。徐々に体勢が崩れ床に肘をつくも、烏丸は逃げるからだを追いかけるように密着させて唇を深く重ねた。
「……んっ、……ぅ!」
角度を変えて何度も口づけられ、呼吸を奪うような激しいキスに息があがってくる。頬に触れていたはずの指先がするりと耳を撫で、不意打ちに肩が跳ねた。すりすりと優しく触れられる度にたしかな欲が刺激され、目蓋に力がこもる。そのまま更に身を寄せられ、両足の間に割って入った烏丸の膝に股間を圧された同時、鷲見はその背を強く叩いた。
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