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第5話 殿下とお姉さまの喧嘩
しおりを挟む「殿下。お待たせして申し訳ございませんでした。……あら?メリッサ泣いているの?殿下、メリッサに何をしたのですか?」
静かにはらはらと涙を零す私を見て、ステラお姉さまは顔色を曇らせた。
涙に濡れた目ではステラお姉さまの新調したドレス姿もぼやけてしまう。
「ああ、すまない。メリッサ嬢に意地悪を言って泣かせてしまったよ。まさか、泣くほど嫌がるとは思ってもみなかったよ。」
ステラお姉さまに詰め寄られて、スチュワード王太子殿下は苦笑いをした。ステラお姉さまはスチュワード王太子殿下の言葉を聞いて目を吊り上げた。
ステラお姉さまは切れ長の目をしている。なので、目を吊り上げるととても恐ろしい表情になるのだ。まさに、その表情は悪役令嬢そのもの。私はステラお姉さまを悪役令嬢になどしたくないのに。
「ステラお姉さまっ!違うのですっ!私が、私が悪いのです。私が……。」
私はステラお姉さまの怒りを鎮めようと必死に声をあげる。でも、言い訳をする言葉が浮かばない。未来視ができるなんてステラお姉さまに言うことはできない。それは、ステラお姉さまからスチュワード王太子殿下を奪うことになるから。でも、既にスチュワード王太子殿下は私が未来視できることを知っている。ステラお姉さまに言わないことの方が裏切りになるの?
私はまとまらない思考のままステラお姉さまに縋りつく。
「私はステラお姉さまがとても好きなのです。ステラお姉さまが笑って過ごしていただけるのならば、それが一番良いのです。ステラお姉さまが幸せになることが私の一番の幸せなのです。」
「……メリッサ。スチュワード王太子殿下に何を言われたのかはわかりませんが、メリッサはメリッサ自信の幸せを見つけていいのですよ。私のためではなく、メリッサ自信のために生きて欲しいと思っているわ。」
ステラお姉さまは慈愛に満ちた表情で私を抱きしめると、優しく背中をポンポンッと叩いた。まるで赤子を泣き止ませるかのように優しく。
「ステラお姉さまっ!ステラお姉さまっ!」
私はステラお姉さまにしがみつくように泣き叫ぶ。ステラお姉さまは私が泣き止むまで黙って側にいてくれた。スチュワード王太子殿下もステラお姉さまの隣でバツが悪そうに私を見ていた。
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