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71 トーマ、ギルマスと話す
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木の葉を揺らす風の音、楽し気にさえずる小鳥たちの声、そして、柔らかな光……。
俺は、久しぶりに《木漏れ日亭》の木の上のバンガローで、心地よい目覚めを迎えた。
昨夜は、俺とポピィの帰還を祝って、夕方から食堂は臨時閉店、顔見知りの客たちを交えての宴会になった。
俺とポピィが、今回の旅のハイライトをかいつまんで話すと、皆は興奮して大盛り上がりになった。まあ、なにしろ、獣人やらスーリア族やらホムンクルスやら、この辺りでは見られない種族や魔物が話に出てくるのだ、そりゃあ興奮するよな。
そんなわけで、夜遅くまで楽しく騒いだ俺は、いつもより遅い朝の目覚めになった。
「あ、おはよう、トーマさん。すぐ朝食持ってくるね」
「おはよう、エルシアさん。ありがとうございます」
裏の井戸で顔を洗って、スノウとちょっとじゃれ合ってから食堂に行くと、すでに商人たちは出ていった後らしく、食堂にいるのは冒険者らしい男女二人組だけだった。
「……そっかぁ、だから王都からも応援が来ていたわけね」
「ああ、そういうことだ」
朝食が来るのを待っていると、少し離れた席にいる男女の話が耳に入ってきた。
「でも、なんで急に魔物が増えたのかしら……」
(ん、魔物が増えた?)
俺は、女性の言葉が気になって、さらに集中して聞き耳をたてた。
「さあな……〈魔の森〉のことは分からねえ。奥に行けるのはBランク以上だし、情報量が絶対的に足りねえんだよ」
(なるほど……パルトスの街の近くの森に魔物が増えた。それは、おそらく〈魔の森〉からやって来ているようだが、詳しいことは分からい、ということか……)
『ちょっと気になりますね、マスター。〈魔の森〉といえば、ラトス村の西に広がる森ですよね。村に影響がなければいいのですが』
(ああ、そうだな……よし、飯を食ったらギルドに行って話を聞いてみるか……)
俺がナビの言葉に頷いて考え込んでいると、耳元で大きな声が響いた。
「はい、朝食よ!」
「うわっ、びっくりした」
エルシアさんがパンとサラダ、スープが載ったトレイを抱えて横に立っていた。
「何を朝から深刻な顔してるんですか?悩みがあるなら、このエルシアにドンと打ち明けなさい」
「あはは……いや、何もありませんよ。ちょっと、今日の予定をどうしようかと考えていただけです。あ、そういえば、ポピィはもう朝食を食べたんですか?」
俺が苦笑しながらそう尋ねると、エルシアさんはにやりと笑みを浮かべて、厨房の方を指さした。
「母さんの手伝いをしながら料理を習っているわ。ポピィは、ほんとに健気で良い子よね」
エルシアさんはそう言うと、何やら意味ありげな微笑みを浮かべて俺を見つめた。
俺は思わず目をそらしながら、朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終えると、俺はポピィに声をかけてから冒険者ギルドへ向かった。ポピィは、自分も一緒に行くと言ったが、俺は彼女に、今日は宿でゆっくり休むように言って、一人で出ていった。
ポピィはもう、自分の身は自分で十分に守れる力を身に着けた。これからは、彼女自身のやりたいことを見つけ、自分のための人生を歩いていくべきだ。そのためには、自分で使う自由な時間を持つことが大切だ。
♢♢♢
ギルドの近くまで行くと、確かにさっきの男女の冒険者が言っていたように、以前より冒険者の姿が多くなっていた。〈魔の森〉が近いので、以前から冒険者が多い街ではあったのだが。
そんなことを考えながら、久しぶりにドアを開いて中に入ってみると、朝の遅い時間にもかかわらず、ロビーにもラウンジにも大勢の冒険者たちがいて喧騒と熱気に包まれていた。
「トーマ君、トーマ君じゃないかっ!」
喧騒の中に突然響き渡る叫び声に、ロビーは一瞬、驚きと静寂に包まれた。
「バークさん、お久しぶりです」
俺は周囲の冒険者たちの注目を一斉に浴びて、居心地の悪さを感じながらも、相変わらず誰も並んでいない受付で、ニコニコしながら手を振っている男性のもとへ近づいていった。
「良かった、元気そうだね。いつ帰ったんだい?」
「昨日の夕方です。それにしても、ずいぶん忙しそうですね?」
俺の言葉に、ニコニコしていたバークさんは急に真剣な顔になって頷いた。
「そうなんだよ。さっそくですまないが、トーマ君、僕と一緒にギルマスの所へ行ってくれないか」
バークさんの様子から察するに、状況はかなり切迫しているのかもしれない。
俺は、衆目の疑問の眼差しを受けながら、バークさんとともに階段を上がっていった。
「ギルマス、バークです」
バークさんが、二階の奥のギルドマスターの部屋のドアをノックすると、ドアの向こうから野太い声で返事が返ってきた。
「ああ、何だ?今、忙しいからもめ事ならお前がどやしつけてくれ」
バークさんは肩をすくめて苦笑すると、こう言った。
「そうですか……せっかくトーマ君が帰って来てくれたのですが、次の……」
バークさんがまだ言い終わらないうちに、ドスドスと足音がして、ドアが荒々しく開かれた。
「トーマっ、やっと帰って来やがったか、この野郎っ!」
ギルマス、ウェイドさんはそう叫ぶと、俺の頭をヘッドロックして、そのまま部屋の中に引っ張っていった。
「トーマ、近いうちに〈スタンビート〉が起きるんだ」
俺をソファに座らせると、ウェイドさんはいきなりそう宣言した。
「間違いないんですか?」
俺は、首をさすりながら聞き返した。
ウェイドさんは真剣な顔で頷くと、バークさんに目配せをした。バークさんは、無言でドアの所へ行くと、しばらく目をつぶっていた。
「大丈夫です。誰も盗み聞きしている者はいません」
ウェイドさんは頷くと、やや声を抑えて話を続けた。
俺は、久しぶりに《木漏れ日亭》の木の上のバンガローで、心地よい目覚めを迎えた。
昨夜は、俺とポピィの帰還を祝って、夕方から食堂は臨時閉店、顔見知りの客たちを交えての宴会になった。
俺とポピィが、今回の旅のハイライトをかいつまんで話すと、皆は興奮して大盛り上がりになった。まあ、なにしろ、獣人やらスーリア族やらホムンクルスやら、この辺りでは見られない種族や魔物が話に出てくるのだ、そりゃあ興奮するよな。
そんなわけで、夜遅くまで楽しく騒いだ俺は、いつもより遅い朝の目覚めになった。
「あ、おはよう、トーマさん。すぐ朝食持ってくるね」
「おはよう、エルシアさん。ありがとうございます」
裏の井戸で顔を洗って、スノウとちょっとじゃれ合ってから食堂に行くと、すでに商人たちは出ていった後らしく、食堂にいるのは冒険者らしい男女二人組だけだった。
「……そっかぁ、だから王都からも応援が来ていたわけね」
「ああ、そういうことだ」
朝食が来るのを待っていると、少し離れた席にいる男女の話が耳に入ってきた。
「でも、なんで急に魔物が増えたのかしら……」
(ん、魔物が増えた?)
俺は、女性の言葉が気になって、さらに集中して聞き耳をたてた。
「さあな……〈魔の森〉のことは分からねえ。奥に行けるのはBランク以上だし、情報量が絶対的に足りねえんだよ」
(なるほど……パルトスの街の近くの森に魔物が増えた。それは、おそらく〈魔の森〉からやって来ているようだが、詳しいことは分からい、ということか……)
『ちょっと気になりますね、マスター。〈魔の森〉といえば、ラトス村の西に広がる森ですよね。村に影響がなければいいのですが』
(ああ、そうだな……よし、飯を食ったらギルドに行って話を聞いてみるか……)
俺がナビの言葉に頷いて考え込んでいると、耳元で大きな声が響いた。
「はい、朝食よ!」
「うわっ、びっくりした」
エルシアさんがパンとサラダ、スープが載ったトレイを抱えて横に立っていた。
「何を朝から深刻な顔してるんですか?悩みがあるなら、このエルシアにドンと打ち明けなさい」
「あはは……いや、何もありませんよ。ちょっと、今日の予定をどうしようかと考えていただけです。あ、そういえば、ポピィはもう朝食を食べたんですか?」
俺が苦笑しながらそう尋ねると、エルシアさんはにやりと笑みを浮かべて、厨房の方を指さした。
「母さんの手伝いをしながら料理を習っているわ。ポピィは、ほんとに健気で良い子よね」
エルシアさんはそう言うと、何やら意味ありげな微笑みを浮かべて俺を見つめた。
俺は思わず目をそらしながら、朝食を食べ始めた。
朝食を食べ終えると、俺はポピィに声をかけてから冒険者ギルドへ向かった。ポピィは、自分も一緒に行くと言ったが、俺は彼女に、今日は宿でゆっくり休むように言って、一人で出ていった。
ポピィはもう、自分の身は自分で十分に守れる力を身に着けた。これからは、彼女自身のやりたいことを見つけ、自分のための人生を歩いていくべきだ。そのためには、自分で使う自由な時間を持つことが大切だ。
♢♢♢
ギルドの近くまで行くと、確かにさっきの男女の冒険者が言っていたように、以前より冒険者の姿が多くなっていた。〈魔の森〉が近いので、以前から冒険者が多い街ではあったのだが。
そんなことを考えながら、久しぶりにドアを開いて中に入ってみると、朝の遅い時間にもかかわらず、ロビーにもラウンジにも大勢の冒険者たちがいて喧騒と熱気に包まれていた。
「トーマ君、トーマ君じゃないかっ!」
喧騒の中に突然響き渡る叫び声に、ロビーは一瞬、驚きと静寂に包まれた。
「バークさん、お久しぶりです」
俺は周囲の冒険者たちの注目を一斉に浴びて、居心地の悪さを感じながらも、相変わらず誰も並んでいない受付で、ニコニコしながら手を振っている男性のもとへ近づいていった。
「良かった、元気そうだね。いつ帰ったんだい?」
「昨日の夕方です。それにしても、ずいぶん忙しそうですね?」
俺の言葉に、ニコニコしていたバークさんは急に真剣な顔になって頷いた。
「そうなんだよ。さっそくですまないが、トーマ君、僕と一緒にギルマスの所へ行ってくれないか」
バークさんの様子から察するに、状況はかなり切迫しているのかもしれない。
俺は、衆目の疑問の眼差しを受けながら、バークさんとともに階段を上がっていった。
「ギルマス、バークです」
バークさんが、二階の奥のギルドマスターの部屋のドアをノックすると、ドアの向こうから野太い声で返事が返ってきた。
「ああ、何だ?今、忙しいからもめ事ならお前がどやしつけてくれ」
バークさんは肩をすくめて苦笑すると、こう言った。
「そうですか……せっかくトーマ君が帰って来てくれたのですが、次の……」
バークさんがまだ言い終わらないうちに、ドスドスと足音がして、ドアが荒々しく開かれた。
「トーマっ、やっと帰って来やがったか、この野郎っ!」
ギルマス、ウェイドさんはそう叫ぶと、俺の頭をヘッドロックして、そのまま部屋の中に引っ張っていった。
「トーマ、近いうちに〈スタンビート〉が起きるんだ」
俺をソファに座らせると、ウェイドさんはいきなりそう宣言した。
「間違いないんですか?」
俺は、首をさすりながら聞き返した。
ウェイドさんは真剣な顔で頷くと、バークさんに目配せをした。バークさんは、無言でドアの所へ行くと、しばらく目をつぶっていた。
「大丈夫です。誰も盗み聞きしている者はいません」
ウェイドさんは頷くと、やや声を抑えて話を続けた。
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