少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei

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73 トーマ、特別任務を受ける 2

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 俺は、ポピィとサーナさん、エルシアさんに、ギルドの特別依頼でしばらくの間、〈魔の森〉に調査に行くことを報告した。

「最近、森の方はとても危険だと聞きましたが、大丈夫ですか?」

 サーナさんの問いに、俺は微笑みながら頷いた。
「はい、魔物討伐ではありませんから、大丈夫です。魔物の動きを調査するだけなので」

「じゃあ、森の中で食事したり、眠ったりするの?何日くらい?」
 エルシアさんが心配そうに尋ねた。

「今の所、一週間を予定しています。キャンプは慣れていますので大丈夫ですよ」

 他にもいろいろ準備とか聞かれたので、適当に答えていたが、その間、ポピィはずっと無言で俺を見つめたり、何か考えるように下を向いたりしていた。が、二人の質問が終わったところで、真剣な表情でこう言った。

「いつ出発するですか?準備しないといけないので」

「ああ、いや、今回は俺一人で行ってくるよ。たいして難しい仕事じゃないし、一人の方が動きやすいからな」

 ポピィは明らかにショックを受けたような、戸惑うような表情になって、次の言葉が出てこない様子だ。
 まあ、予想通りの反応だった。

「ポピィちゃん、トーマさんもそう言っていることだし、心配いらないよ。ね、お菓子作りでもしながら、待っていようよ」

 エルシアの言葉に、ポピィはうつむいてじっと考えていたが、やがて無理に微笑みを作りながら顔を上げた。
「分かったです……トーマ様、気をつけて行ってきてくださいです……」
 ポピィは力なくそう言うと、そのまま自分の部屋に去っていった。

 俺は苦笑しながらため息を吐いて、サーナさんとエルシアさんに目を向けた。二人は、何か言いたげに俺を見つめていた。

「ポピィちゃんも、やっぱり女の子なのよねえ……うーん、難しいわねえ」
 サーナさんが、何やら当たり前のことを言いながら考え込む。

「一番問題なのは、トーマさんだと思うな」
 エルシアさんが、少し怒ったように俺を見ながら言った。

 おっと、こっちに穂先が向いてきた。逃げる準備をしなければ……。

「エルシア、それは無理よ。トーマ君は、どんなに大人びていても、まだ十二歳の男の子なんだもの……やっぱり、女の子の方が早く成長するからね」

 サーナさん、ありがとう。さすが熟…いや、大人の女性です。

「うーん、それはそうだけど……ポピィちゃんからすれば、煮えきらないっていうか……」

 うん、エルシアさんの言いたいことはよく分かる。何といっても、中身はアラサーのおじさんだからね。

 たぶん、ポピィにとって、俺は〝主人であり、保護者であり、唯一の家族であり、たぶん好意を抱いている異性〟なのだ。
 そうした《何重もの重たい鎖》で、俺と自分自身とをがんじがらめにしているのが、今のポピィなのだと思う。

 それに対して、俺のスタンスは〝ポピィは一人の独立した人格であり、これから自由に自分の生き方を見つけてほしい〟存在なのだ。
 もちろん、俺も彼女を好ましい異性と思っている。しかし、まだ今はそれをポピィに打ち明けるつもりはない。たぶん、その距離感の違いが、ポピィにとっては寂しく、物足りなく感じる点なのだろう。

 まあ、今は下手に慰めたり、言い訳をしたりせずに、俺は俺のスタンスを貫いていこう。

『難しい問題ですね。ポピィは純粋なだけに、思い込みが激しいというか、余裕がないというか……健気で良い子だけに、接し方が難しいですね』

(うん、そうだな……彼女の生い立ちから考えれば仕方がないと思うよ。まあ、彼女のことは大事にしながら、時間をかけて見守るしかないな)

『そうですね』

 俺は自分の部屋に戻ると、必要なものをストレージにしまい、防具を身に着けてから外へ出ていった。


♢♢♢

(ダンジョンがあるとすれば、山脈のどこかだろうな)

『はい、そうだと思います』

(よし、じゃあ西から順番に当たっていくか。ナビ、遠くの方の索敵を頼む)

『お任せください』

 森の入り口に着いた。俺はナビと簡単に打ち合わせを済ませると、さっそく〈身体強化〉と〈隠密〉のスキルを発動して、一気に山脈を目指して走り出した。

(おお、いるいる、わじゃわじゃいるな。ゴブリンにオーク、オーガ、ランドウルフか……狭い中で縄張り争いをしているようだな)
 やはり、魔物が増えているのは確実で、手前の方には比較的弱い魔物たちが、押し合いへし合いしながら、なんとか自分たちの生活領域を確保しようと争っているようだ。

 やがて、森の半分を過ぎる頃、新たな魔物の集団が現れ始めた。

(ん、あれは、クリムゾンエイプだな。それに、オーガの変種か?)
 何体かのオーガの群れの中に、紫色の体で特に巨大な一体がいた。

『はい、あれはオーガの進化上位種、オーガジェネラルですね』

 俺は木の上から、威嚇し合っている大猿とオーガたちを見ながら、どうしようかと考えた。こいつらは、森の外に出ればかなりの脅威になる。今、倒しておく方がいいのか……。いや、まだ全体像がつかめていない。まずは調査をして、帰りに殲滅した方がいいだろう。
 俺はそう思いなおして、再び奥へと走り出した。

 山脈の麓まで、あと数キロになったところで夜になったので、その日の調査を終わり、キャンプをすることにした。
 大木の根元を中心に直径五メートルの円状に結界を張り、ストレージから温かいスープとサンドイッチを取り出す。
 ナビが、調査した場所をマップに記してくれているので大変楽である。

 腹も満たされたので、木の裏側に土魔法で穴を掘り、小用を済ませてから寝袋に入った。

 時折聞こえてくる謎の鳥の鳴き声や魔物の叫び声を子守歌に、俺はすぐ眠りの中に入っていった。森の中の一人っきりのシンプルライフ……。
(いやあ、いいね、これこそ俺が理想とする生活だよ)
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