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21 礼奈、真由香と対面する ③
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「┅┅あなたたちは、どちらも与えることで満たされる愛の比率が大きいのだと思う。そんな二人が出会って、お互いを好きになって┅┅初めのうち、恐がりなあなたは、与える気持ちはいっぱいあるのに、与えられなかった。でも、相手の鹿島さんは、奪うタイプじゃないので、あなたから愛をもらわなくても不満一つ言わず、逆にあなたに愛を与え続けた┅┅」
「はい┅┅はい┅┅その通りです┅┅」
「┅┅もう少し時間が、それときっかけがあれば、あなたもいっぱい彼に愛をあげられたのに┅┅その前に、奪う愛を持つ男が現れた。その男は金と力で、あなたたちを引き離し、三年間という期限付きであなたから愛を奪おうとした。あなたは、体を奪われたけれど、心の中の愛は決して奪われないと考え、それに耐える決意をした。でも、鹿島さんは、あなたの決意を知らず、すべてが終わったと考え、あなたのもとから去っていった┅┅これが五年前のいきさつ、で良いかしら?」
真由香は必死に涙をこらえながら頷いた。
「うーん┅┅一つ疑問なんだけど、どうして、あなたは鹿島さんに決意を伝えなかったの?」
真由香は悔しげに拳を握りしめながら、うつむいた。
「早く言わなくちゃって思っていたんです。でも、その前に、母の口から、わたしが紫門に抱かれたことが優士郎に知られたと分かって┅┅言えなくなって┅┅自分のような女より、もっとふさわしい相手を見つけた方が、彼のためだって┅┅」
「自分の心にウソをついたのね┅┅」
「ええ┅┅もうどうしようもなかった┅┅せめて、抱かれる前だったら、彼に理解してもらえたかもしれない┅┅彼を裏切ってしまった、その事実だけで、もう何も言えなくなった┅┅」
「ただのケガでは済ませられない、って、その時気づいたの?」
「ええ┅┅いいえ、違う┅┅その前から分かっていた┅┅男の人にとって、女が他の男に抱かれることは、その女を奪われることだって┅┅でも、わたしの考えは違うの┅┅男が女を抱くは、逆に考えたら、女が男を抱くでもいいじゃない。なぜ、男の側からの価値観ばかりが優先されるの?わたしの感覚では、紫門に約束を確実に守らせるために┅┅それに、少し可哀想だから、抱かれてやったくらいの感覚だった┅┅でも、それは優士郎には通じないって思った┅┅」
真由香もいつしか敬語を忘れ、自分の言葉で本音を語っていた。
「どうして通じないと思ったの?」
「えっ、それは┅┅」
真由香は答えに詰まった。〝それが、普通の男の人の感覚だから〟と答えようと思って、やめた。優士郎は普通の男などではないと思ったからだ。
「その時、あなたの決意を話したら、鹿島さんは受け入れてくれたかもしれない、受け入れなかったかもしれない┅┅それが一つ。もう一つは、鹿島さんの中の〝奪いたい愛〟をどれだけ引き出せるか、だけど┅┅」
真由香は話が見えず、首を傾げながら、立ち上がった礼奈を目で追いかける。
礼奈はソファの横をうろうろしながら、考え込んでいたが、やがて考えがまとまったのか、真由香の方を振り返った。
「┅┅確認したいのだけど、あなたは、鹿島さんに会って、もう一度愛してほしいと頼むつもりなのよね?」
いきなり単調直入に問われて、真由香は赤くなりながら首を横に振った。
「┅┅さっきも言ったけど、本当は、彼に殴って欲しい、殺したいなら殺して欲しい┅┅でも、彼は絶対そんなことしないから、とにかく、謝って、謝って┅┅彼の四年間の苦しみをどうにかして少しでも軽くしてあげたい┅┅また愛してもらいたいなんて、そんなことは望んではいけないこと┅┅ずっと、ずっと守ってきたあの人への愛を分かってもらえれば、それだけでいいの┅┅」
「うん┅┅それは、分かってくれると思うわ。じゃあ、彼が新しい恋を始めると言っても、あなたはそれを喜んで祝福するのね?」
「┅┅それは┅┅わたしがどうこう言えることじゃないから┅┅」
「そう┅┅じゃあ、わたし決めた!鹿島さんをわたしのものにする┅┅ふふ┅┅」
真由香はあっけにとられて、礼奈を見つめた。
「ああ、でも心配しないで┅┅あなたが、鹿島さんに会うまでは、何も手出しはしないから」
礼奈はにこやかにそう言うと、ぺこりと頭を下げた。
「お邪魔しました。美味しいアールグレイ、ごちそうさまでした」
茫然とした真由香を残して、礼奈はきびきびとした動作で部屋から出て行こうとしたが、ふと立ち止まって、バッグからパンフレットを取り出した。
「忘れるところだったわ。これ、鹿島さんに頼まれていたの、あなたに渡してくれって」
礼奈は、パンフレットを真由香に手渡すと、手を振りながら去って行った。
「はい┅┅はい┅┅その通りです┅┅」
「┅┅もう少し時間が、それときっかけがあれば、あなたもいっぱい彼に愛をあげられたのに┅┅その前に、奪う愛を持つ男が現れた。その男は金と力で、あなたたちを引き離し、三年間という期限付きであなたから愛を奪おうとした。あなたは、体を奪われたけれど、心の中の愛は決して奪われないと考え、それに耐える決意をした。でも、鹿島さんは、あなたの決意を知らず、すべてが終わったと考え、あなたのもとから去っていった┅┅これが五年前のいきさつ、で良いかしら?」
真由香は必死に涙をこらえながら頷いた。
「うーん┅┅一つ疑問なんだけど、どうして、あなたは鹿島さんに決意を伝えなかったの?」
真由香は悔しげに拳を握りしめながら、うつむいた。
「早く言わなくちゃって思っていたんです。でも、その前に、母の口から、わたしが紫門に抱かれたことが優士郎に知られたと分かって┅┅言えなくなって┅┅自分のような女より、もっとふさわしい相手を見つけた方が、彼のためだって┅┅」
「自分の心にウソをついたのね┅┅」
「ええ┅┅もうどうしようもなかった┅┅せめて、抱かれる前だったら、彼に理解してもらえたかもしれない┅┅彼を裏切ってしまった、その事実だけで、もう何も言えなくなった┅┅」
「ただのケガでは済ませられない、って、その時気づいたの?」
「ええ┅┅いいえ、違う┅┅その前から分かっていた┅┅男の人にとって、女が他の男に抱かれることは、その女を奪われることだって┅┅でも、わたしの考えは違うの┅┅男が女を抱くは、逆に考えたら、女が男を抱くでもいいじゃない。なぜ、男の側からの価値観ばかりが優先されるの?わたしの感覚では、紫門に約束を確実に守らせるために┅┅それに、少し可哀想だから、抱かれてやったくらいの感覚だった┅┅でも、それは優士郎には通じないって思った┅┅」
真由香もいつしか敬語を忘れ、自分の言葉で本音を語っていた。
「どうして通じないと思ったの?」
「えっ、それは┅┅」
真由香は答えに詰まった。〝それが、普通の男の人の感覚だから〟と答えようと思って、やめた。優士郎は普通の男などではないと思ったからだ。
「その時、あなたの決意を話したら、鹿島さんは受け入れてくれたかもしれない、受け入れなかったかもしれない┅┅それが一つ。もう一つは、鹿島さんの中の〝奪いたい愛〟をどれだけ引き出せるか、だけど┅┅」
真由香は話が見えず、首を傾げながら、立ち上がった礼奈を目で追いかける。
礼奈はソファの横をうろうろしながら、考え込んでいたが、やがて考えがまとまったのか、真由香の方を振り返った。
「┅┅確認したいのだけど、あなたは、鹿島さんに会って、もう一度愛してほしいと頼むつもりなのよね?」
いきなり単調直入に問われて、真由香は赤くなりながら首を横に振った。
「┅┅さっきも言ったけど、本当は、彼に殴って欲しい、殺したいなら殺して欲しい┅┅でも、彼は絶対そんなことしないから、とにかく、謝って、謝って┅┅彼の四年間の苦しみをどうにかして少しでも軽くしてあげたい┅┅また愛してもらいたいなんて、そんなことは望んではいけないこと┅┅ずっと、ずっと守ってきたあの人への愛を分かってもらえれば、それだけでいいの┅┅」
「うん┅┅それは、分かってくれると思うわ。じゃあ、彼が新しい恋を始めると言っても、あなたはそれを喜んで祝福するのね?」
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「忘れるところだったわ。これ、鹿島さんに頼まれていたの、あなたに渡してくれって」
礼奈は、パンフレットを真由香に手渡すと、手を振りながら去って行った。
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