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第8話 ヒント
しおりを挟む美保子はもう一度窓の外を見た。
[ホントに何だったんだろう?]
「アリサちゃん?さっきの怪獣は夢に出てきたの?」
アリサが【怪獣】と言ってた事から、アリサが再現した世界に間違いはない。
アリサが再現した世界は、全世界で人気のゲーム『モンスター・スレイヤー』
原始世界を模したフィールドに現れる数々のモンスター達を、1人でのソロプレイから4人までのマルチプレイによって討伐して行くゲーム。
『モンスター・スレイヤー』は1作目が発売されてから25年程。それよりも以前からインドで研究に没頭し、その後電脳世界に入りアリサを守る事だけを考えていた美保子には、知る由もないゲームだった。
「怪獣見たい…?」
美保子の問に、アリサは不安そうに答えた。
「見たくはないけど…何なのかな?って…(笑)」
美保子は嶋が現実世界へ復活した後の、実質的な電脳世界の支配者ではあるが、美保子自身にそんな自覚はなく、やはり【怪獣】や【恐竜】の猛獣の類いは恐ろしい。
瞬間!世界がまた太古の原始世界に変わった。
「ちょっと、アリサ!急に…」
だが【怪獣】も闘ってた戦士達も見当たらず、ただ原始風景が拡がっていた。
「あっ!」
アリサが何かを見つけ、美保子の腕を抜け
「きゃははははっ!」
と、駆け出して行った。
「あっ、待ってアリサ!危ないでしょ!アリサ!」
美保子が慌てて追いかけると、アリサは大きな木の根元で、しゃがみ込んでいた。
美保子が追いつくと、しゃがみ込んだアリサの前には、リスの様な小動物がいた。
「か~いい~(笑)」
アリサが、そ~っ…と手をのばすと、リスの様な小動物は逃げて行ってしまった。
「あっ!あぁ~~…」
アリサは悲しそうな顔で、小動物が逃げて行った先を指差し、美保子を見上げた。
美保子はアリサを抱き上げ
「リスさんかな?逃げちゃったねぇ。」
「リスさん?」
「うん、リスさんだと思うよ?逃げちゃったね?」
「リスさん、か~いい~!逃げちゃった!」
まわりを見ると、小動物達がリラックスし遊んでる様にフィールドを走り回り、そらには小鳥が飛び、木の枝に止まったりしてさえずっていた。
[この辺は安全そうだな。]
美保子はそう思いながら、アリサを抱いてあるいていると
「あっち、あっちいく!」
アリサが森の先、日の指す少し開けた様な場所を指差した。
水の流れる音が聞こえる。
[川かな?]
美保子はアリサの指差す方へ進むと、やはり小川があり、拓けた場所にテントがあった。
「わぁ…おりりゅ、おりりゅ。」
アリサは美保子の胸から降りると、テントの方へ走って行き、テントを覗き込んだ。
「誰かいる?」
「うううん…いにゃいよ?」
美保子も少しテントを覗き、その後まわりを見渡した。
石で積み上げられたカマドには火が焚かれ鍋が置かれていたが、人の気配はない。
「誰かいませんかーっ?」
美保子はテントの主であろう人物がいないか大きい声で呼びかけたが返事はなく、驚いた小鳥達が飛び立ち、小動物達も慌てて逃げたのか、森の茂みがガサガサと音を立てた。
「ママッ!メッ!」
そ~っ…と小動物に近寄っていてたアリサが怒った。
「あっ、ごめんね…(笑)」
その時、美保子の後ろで
ーーードサッ!ーーー
と言う音がした。音の方を見ると、空中に文字が浮き出ていた。
【あいたたた…ヤラれちゃった~…
えっ?!】
その文字の下、地面に放り出された様に派手なドレス風の衣装の少女が倒れていた。
その衣装に似合わない身長を超える日本刀に似た刀を背にした少女が立ち上がろうとしたが、美保子とアリサを見て固まった。
美保子は驚いた顔、アリサも驚いて口を開け、でも興味津々に目をキラキラさせて固まっていた。
【えっ?えっ?えっ?あれっ?えっ?】
少女戦士は両手で自分の身体と衣装を確認し、続いて普段着の美保子と、可愛らしいアリサを見比べて、状況理解に苦しんでいた。
「あっ、あの…」
美保子も戸惑いながら手を差し出したが
【えっ?普通の人?NPCじゃない?普段着?なんで?えっ?女の子?えっ?】
少女戦士はまだ戸惑っていた。
「おっぱいっ!」
その時アリサが、突拍子もなく叫んだ!
とてつもなく嬉しそうな顔で、目をキラキラさせて、ぴょんぴょん飛び跳ねながら。
「【おっ…おっぱい?!】」
予想外の言葉に、美保子と少女戦士は同時に叫んだ。
少女戦士のドレスの様な衣装は、胸元が大きくあき、大きい胸の谷間が丸出しになっていた。
お子様は、おっぱいが大好きだ。
【ちょっ、おっぱい?ちょっ、ちょっと待って下さいね?】
少女戦士は固まったままで、空間に浮かび上がってる文字達は、古い順番に消えて行った。
すべての空間の文字が消えた時
「聞こえますか?音声チャットにしました。聞こえますか?」
少女戦士と思われる女の子の声が聞こえて来た。
「聞こえ…ますけど…」
恐る恐る美保子か応えると
「あの…あなた達は?なんか普通の服だし…
NPCでもなさそうだし…
クエストも、救出クエストじゃなくて、討伐クエストなんだけど…ええぇぇぇ?!」
少女戦士が問いかけてる間にアリサは、少女戦士に近づき胸元を覗き込んでいた。
再度になるがお子様は、おっぱいが大好き。
「ちょっと、アリサちゃん!ダメでしょ!」
美保子は慌てて駆け寄ってアリサを抱き上げた。
「ご…ごめんなさい!この子ったら…ほんとにごめんなさい!」
「ママ、メッ!おりりゅ!」
アリサは美保子の腕の中で身体をよじって降りようとして暴れた。
「もう!変な事しちゃダメよ?」
そう言って地面に降ろすと、アリサは少女戦士の前に立ち、両手をにぎにぎしながら、目をキラキラさせながら、少し前のめりで頬を興奮で赤らめて見上げた。
美保子以外の初めての【人間】。それもキラキラ衣装の可愛い女の子。
小さい子供が、可愛いお姉さんに興味を持つのは、本能とも言えるか。
いつの間にかアリサはまた、ぴょんぴょんと跳ね出し、両手を少女戦士に向け
「抱っこ、抱っこ!」
「ちょ…っ、アリサ!」
美保子がアリサの手をつかもうとしたが、少女戦士はアリサを抱き上げた。
「あははははっ!アリサちゃん?可愛い!お姉ちゃんの事、好きになってくれたの?」
アリサは少女戦士の腕の中で、さっきまでの積極さは消えて、少し恥ずかしそうに、少しうつむき、それでも上目遣いで嬉しそうに少女戦士の目を見つめていた。
「あの…みんな呼んでいいですか?仲間達とクエストしてたんで…」
「他にも…お友達ですよね?部外者は私達ですから…お邪魔じゃないですか?」
[クエスト?NPC?この世界には、この女の子は?不思議じゃないのかな?
私は不思議だらけなのに…]
美保子は混乱から抜け切れずに居たが、少女戦士は初めこそ混乱してた様だったが…、アリサの人懐っこさに押され、気にしなくなってる様だった。
実際少女戦士も、突然現れた現実風の【人間】に戸惑ったが
[何かのイベントか、ネット上のバグかな?]
と思い、現状を楽しもうと言う思いで受け入れていた。
それに現実世界でもまだ20歳手前の少女には、警戒よりも好奇心、細かい事は気にしない明るさが、彼女を適応させていた。
「みんな、おもしろい事あるからキャンプに来て?討伐はいつでも出来るから!」
少女戦士が呼びかけると
【おもしろい事って?】
【討伐いいの?】
【は~い!】
と、空中に文字が浮き上がった。
「あっ!来る時、音声チャットで!すごく驚いて、すごく楽しいから!」
その後すぐに空から3人の同じ様な派手なドレスの衣装で、同じ様に武器を背にした少女戦士達が着地した。
「わあぁぁぁっ!お空飛んできた!ママ、見た?お空だぁ!」
アリサは最初の少女戦士の腕の中で、興奮して言った。
「う…うん…見た…」
美保子は言葉がそれ以上出なかった。
「あれ?あれ、あれ、あれ?誰?ナナ、これって…」
最初の少女戦士は【ナナ】と言う名前だった。
「わっ!可愛い女の子!」
自分を見て言われた事に、アリサは恥ずかしそうに、ナナの首に抱きついた。
「なに、なに、なに?新しいクエスト?サプライズイベントかな?
救出?」
空から現れた少女戦士達3人は、美保子とアリサを見て、それぞれに思った事を言った後、ナナの側に集まり、ナナが抱くアリサのほっぺをつついたり、頭を撫でたりした。
アリサは嬉しそうに、でも恥ずかしそうにハニかんだ笑顔で挨拶した。
「あっ、ごめんなさい。私は美保子です。その子はアリサ。初めまして。」
あ然としてた美保子は、慌てて挨拶した。
「あっ!私も(笑)私はナナ、赤い装備がアユミ、大きい盾の装備がトモちゃん、びっくりハンマー持ってるのがエリザ(笑)」
全員がそれぞれの名前を紹介され、それぞれよろしくと応えたが
「びっくりハンマーて何よ!(笑)」
エリザは少し不貞腐れて言った。
彼女が持っていたのは、巨大なウォーハンマー。
[破壊力凄そう!重たくないのかな?]
美保子が【びっくりハンマー】を見ながら思っていたら、全員が声を揃えて
「「「「私達、ぬっこニャンニャーです!」」」」
全員集まり、猫ポーズを決めた。
[あっ!みんな猫耳ついてる!]
美保子はそれまで気づいていなかった。
「にゃんにゃん?にゃんにゃんにゃ~!」
アリサはすぐに4人の真似をして、4人はアリサの可愛さに全員でアリサをくすぐったり、ほっぺをつついたりした。
「きゃ~っ!ははははっ!くしゅぐったい!きゃははははっ!」
楽しそうな5人に美保子も微笑んだが
[でも…この世界な何だろう?この人達も、私とアリサを不思議に思わないのかな?]
そう考えていた。
「ところで…この世界は…みなさんは…クエストとか討伐とか…、少し前に似たような人達が恐竜みたいな怪獣と闘ってたんですか…」
美保子は恐る恐る聞いてみた。
「えっ?設定なの?どんな設定?モンスレにロープレ設定?なんて答えたらいいのかな?」
エリザの問に、他の少女戦士達はクビを傾げたが、ナナは笑って答えた。
「たぶんだけど、美保子さんとアリサちゃんはNPCじゃない。
これはクエストでもない。通信のバグか何かで、他から入っちゃったんじゃないかな?」
「「「バグ?」」」
全員が顔を見合わせた。
「美保子さん、モンスター・スレイヤーってゲーム知ってます?」
ナナの問に、美保子はただ首を振った。
「やっぱり!さっき美保子さんが見た怪獣と闘ってたのも、多分モンスター・スレイヤー、モンスレだと思います。
私達はそのモンスレのゲームプレイ中なんです。
そこへ美保子さんとアリサちゃんが、何かの間違いで、ログインして来たんだと思います。」
「ゲームの世界…」
「異世界だぁーっ!モンスレに異世界から転生者だぁーっ!」
「だぁーっ!(笑)きゃははっ!(笑)」
美保子が考えこんでいたら、トモが楽しそうに大きい声で言った。
トモの真似してアリサも。
[異世界転生者…私とアリサは実際にそうかもしれない!
現実世界からCPU、ゲーム世界への転生したとも言える!]
「そう、かもしれません…私とアリサは転生者…」
「美保子さんは、何のゲームしてたんですか?
親子でって事は…あつまれ!森の遊園地!」
『あつまれ!森の遊園地!』は仁天堂が幼児と母親向けに発売した知育ゲーム。
自宅のデザインやレイアウトから、庭へ花や遊具を設置して他のプレイヤーと交流したり、動物も遊べる環境をつくって動物と過したり、ゆる~く可愛いキャラと、ゆる~いほっこり環境で楽しく遊びながら、子供に優しい心を持ってもらう事を願って創られたゲームで、日本だけでなく、世界中の幼い子を持つ家族に人気のゲームだった。
ナナ達は全員が、あつまれ!森の遊園地!と思ったが、美保子はあつ森を知らない…
知らないが、そのネーミングのゆるさのイメージに
「そ…そうなの…」
と言いかけたが
「ちがうの!アリサはここだよ!」
アリサが風景を変えてしまった!
モンスレの原始世界から、草原と美保子とアリサの住むログハウス風の一軒家。
ある意味、あつ森のスタート時の風景に似てはいるが、モンスレをプレイしていた4人には衝撃だった。
4人が4人とも自分の装備や姿を仲間に確認し、周りを見渡した。
「な…んで?どうなってんの?」
「あつ森のスタート?でも…」
「アリサのおうち!ママといっしょ!」
草原の一軒家を指さしてアリサが言った。
4人はアリサの指さした小さな家を見たが、全員が不思議と言うより、不安を浮かべた顔をしていた。
彼女達がプレイしていた『モンスレ』のゲームコンソールはSANYの『プレイポート6』。
ゲーム制作メーカーは『COMPAC』。
方や『あつ森』のコンソールは仁天堂の『スマッシュ』でゲーム制作も仁天堂。
互換性能はなかった。現実世界で言えばそれこそ異世界、まったく違う世界だ。
時々ではあるが、違うメーカー同士のタイアップコラボはあるが、あくまで時限的イベントであり、お互いの世界への行き来など勿論不可能だ。
それに…
「コラボ聞いてないし…」
コラボイベント等は、少なくとも1日前には発表されるし、それよりも前にメーカーは非公式に情報を流出させる。
お互いのゲームの宣伝の為で、【流出情報】の方が、ユーザーが盛り上がり宣伝になるからだ。
その『モンスレ』と『あつ森』のタイアップは、噂の段階でも上がっていなかった。
「美保子さん、これは…」
戸惑っているナナ達4人以上に、美保子は戸惑っていた。
[彼女達に本当の事は言えない…言ったとしても、信じる事なんか出来ない!パニックにさせるだけ…ならば!]
「私はプログラマーなの。極秘なんだけど、世界中のゲーム会社が共同出資で、3Dバーチャルの世界で、よりリアルな感覚を持たせる為の開発をしてるんだけど、私がそのプロトタイプの実験をしてたら、アリサまで入りこんじゃって…」
苦し紛れの言い訳だったが
「すごーいっ!共同出資!だから世界が変わったんだ!リンク出来るんだ!
凄い、凄いっ!美保子さんが実験中に、私達と出会ったんだ!
じゃあ、じゃあ美保子さんには、私達が目の前に立ってるの?
アリサちゃんは、私らがわちゃわちゃしたら、くすぐったいって、本当に感じてるの?
私達はモニター見ながらのコントローラの操作だけで、感覚なんかないけど…。
私達も美保子さんみたいにゲーム世界に入れたら、体温や、抱っこしてる感覚もあるって事?」
ナナは興奮して、一気にまくし立てた。他の3人も興奮していた。
「くすぐったいよ(笑)」
全員がまたアリサを見て、わちゃわちゃした。
「きゃ~ははは、きゃ~っ!くしゅぐったい!(笑)
ママ、たちけて~っ!きゃはははっ!」
アリサは笑いながら、喜びながら楽しそうに美保子に助けを求めた。
「アリサちゃん可愛い~っ!くしゅぐったいの?(笑)」
「うん、くしゅぐったい(笑)」
「美保子さん!私らが美保子さんみたいになったら、アリサちゃんのぷにぷにボディーをツンツン出来るんですか?」
エリザの質問に
「ムチムチボディーだよ(笑)出来ますよ(笑)」
「アリサちゃん、ムチムチわがままボディーなんだ!(笑)
ん~、ツンツンしたい!(笑)」
ナナはアリサを抱きしめた(笑)
「ムチムチ!(笑)きゃははっ!アリサちゃんムチムチ!(笑)」
喜ぶアリサを見て、美保子も笑顔になっていた。
[良かった、誤魔化せた…。でも、凄いヒントになった!
ゲームの世界へ人を!リサシテイションあれば、出来る!きっと出来る!]
出任せの取り繕いが、嶋へのメッセージの為のヒントになった。
どうメッセージを…何を使ってメッセージを送るか悩んでた美保子には、棚ぼたのアイデアだった。
[智彦さんも、オフの日はゲームしたりしてたし、きっと気付く!]
「美保子さん!私達にも協力させて下さい!」
他の3人も頷いていた。
「ありがとう!喜んで!」
アリサにも友達が出来た!
「アリサ?お姉ちゃん達がゲームしたら、いつでも見つけられるよね?」
「アリサ、できるよ!」
美保子は胸を撫で下ろし
「アリサは不思議な子で、この世界を自由に行き来できるみたいで。
その点は、私もまだ研究中なんですが…
アリサがいれば、いつでも合流出来ます。アリサと遊んで上げて下さい。
ただ、まだこの話は極秘なんで…現実世界に戻っても、秘密厳守でお願いします。」
4人は力強く頷いた。
自分達は、神の発明に協力してる!誰よりも早く、新しい世界の体験が出来る!
そう思った少女達は、次の約束をしてログアウトしていった。
美保子が彼女達と出会っていなければ、アリサが彼女達のフィールドをたまたま選んでいなければ、もしかしたら《シマー》は世に出ていなかったかもしれなかった。
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大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。
『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。
修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。
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