16 / 40
新入り
2
しおりを挟む
「自己紹介は終わったか」
ちょうどいいところで神谷総監督が戻ってきた。
「それじゃあ、『マナン可視化』の儀式をやってしまおう。三人ともこっちに来て」
神谷総監督は寧々、祐太郎、柚葉の順に額を合わせた。
「これで寧々はマナンが見えるし、柚葉は祐太郎がいることでマナンが見える。祐太郎は元々見える人だからな」
「はい」
へぇ、マナンが元々見える人って神谷総監督以外に初めて見た。
「それと、『マナン可視化』に加えて……」
神谷総監督の声を遮るようにサイレンが鳴り響いた。
「ほや!」
え、今の声、柚葉ちゃん……?
「ほやって、あの宮城県で有名な海産物のほやのこと?」
なんでこのタイミングで?
「あ、いや、違うんです! 私、びっくりした時とか、咄嗟の時につい『ほや』って言っちゃうんです。だから特に意味はないっていうか……前に住んでた宮城の方言ですかね?」
柚葉がえへへと笑う。
「や、違うと思います……」
私の親戚で宮城に住んでいる人がいるがそんな話聞いたことない。たぶんオリジナルだ。
「驚かせてしまったな。これはマナン出現のサイレンだ。ちょうどいい機会だな。大月班の戦闘に同行して戦い方を学んでくれ。マナンやそれぞれの役割については前に説明したとおりだ。ガーディアンと執行官の武器は祐太郎に渡しておく」
神谷総監督は大月班が持っているのと同じ、どピンクと真っ黒の塊を祐太郎に手渡した。
「朔、案内を頼んだ」
「分かりました」
私達六人は送迎の車がつけてあるデパート裏に向かった。
「さすがに狭いね……」
八人乗りのワンボックスカーに今までは運転手を含めて四人で乗っていたから、七人で乗ると狭く感じる。助手席に朔、二列目につるぎと私と柚葉ちゃん、三列目は小野さんと寧々ちゃんだ。私が二人に挟まれてるからよりそう感じるのか。
「真希ちゃんって呼ぶのは、馴れ馴れしいですか?」
隣に座る柚葉が真希に声を掛ける。
「ううん! じゃあ、私も柚葉ちゃんって呼ぶね」
心の中ではもう呼んでたけど。
反対隣のつるぎが柚葉の方に顔を出してくる。
「大丈夫ですよ柚葉。真希は初めて会った時から年上の私に馴れ馴れしかったですから、そのくらいで文句は言いません」
「だって! それは同い年だと思ってたし、それにつるぎって呼んでいいって言ったから!」
「ふふ。冗談ですよ。柚葉、私のこともつるぎでいいですよ」
「ありがとうございます。つるぎちゃん」
後ろの席から声が掛かった。
「はぁー、そんなんだからぬるいんだよ。……仲良くしたって、どうせ肝心な時には助けちゃくれないんだから」
真希が振り返ると足組み&腕組みをした寧々がこちらを睨んでいた。
「私達はそんなことしません。あなたのことも守ります。もちろん、あなたが私達と同じ志を持って全力を尽くすならですが」
あれ、ちょっとまたバチバチしてる。この二人は混ぜるなキケンだな。
「あのー、僕も仲間に入れてもらえませんか。実際の戦闘を見学させてもらう前に色々話も聞いておきたいですし」
「小野さん……」
寧々の隣に座る小野さんが話に入ってくる。
これはたぶん、空気が悪くなる前に介入してきてくれたんだな……グッジョブ、小野さん!
「はは。僕も祐太郎でいいですよ。名前で呼んでもらえる方が距離近い感じがしますし、嬉しいです」
そう言って祐太郎は微笑んだ。
うちの不器用二人を見ていたからこんなに素直だと好感が持てるな。
「何でも聞いてください、祐太郎さん」
「それじゃあ聞きたいんですけど、マナンとの戦闘は実際どんな流れで行うんですか?」
戦闘の流れかぁ……
「それは僕が答えよう」
それまで黙っていた助手席の朔が入ってきた。
「まずマナン出現場所に着いたら、目的のマナンの姿を捉える。僕は能力で探せるが、祐太郎はDAMで使っている検知器を使うといい。総監督が渡すの忘れてたみたいだから後で戻ったら聞いておいてくれ。ああ、早いところガーディアンにマナンが見えるようにしておいた方がいいな」
「なるほど」
祐太郎は熱心な様子で朔の話を聞いている。
「そしてマナンが見つかったら、戦闘開始だ。ただ、マナンが既に人と融合していたら先にマナンを人から引き離さないといけない。それはその人の苦しみの根源をどう紐解けるかがカギになる。単体のマナンはガーディアンがコアを破壊することで消滅させることが出来る。執行官はそのサポートだ。最近は攻撃してくるやつもいるからな。二人のコンビネーションが重要なんだ」
「あの、結局指令官って実践ではあまりやることがないですか?」
確かに、その説明だけ聞くとそう思うか。朔は祐太郎のほうを振り返ってニヤッと笑った。
「見ていれば分かる」
柚葉が私の方に顔を向けた。
「そういえば、初めのほうに朔君が言っていた能力っていうのは何ですか?」
つるぎがまた柚葉の方に顔をだす。
「柚葉、朔君なんて呼びにくいから変えた方がいいですよ」
「じゃあ、さっくんにします!」
「おい、僕の名前で遊ぶな!」
にぎやかだなぁ……
「柚葉ちゃん、能力っていうのはね、さっきのマナン可視化の儀式でそれとは別にもらった力のことなんだけど、能力の内容は総監督にも分からないみたい。どんな能力になるかはその人の願望が反映されるんだって。まあ、その時が来たら自然とどんな能力か分かるから、今はそんなに構えなくていいよ」
「分かりました」
「あたしは強いからな! どんなに強くてかっこいい能力か楽しみだぜ!」
三列目から興奮した寧々の声が聞こえる。
いや、でも、そういう感じの能力じゃないんだよな……私達三人もそれほど戦闘向きじゃないし。
車が駐車場に止まった。着いたみたいだ。
「怖気付いて逃げ出すなよ? ……それじゃあ、行くぞ!」
朔の掛け声に続いて私達は車を降りた。
ちょうどいいところで神谷総監督が戻ってきた。
「それじゃあ、『マナン可視化』の儀式をやってしまおう。三人ともこっちに来て」
神谷総監督は寧々、祐太郎、柚葉の順に額を合わせた。
「これで寧々はマナンが見えるし、柚葉は祐太郎がいることでマナンが見える。祐太郎は元々見える人だからな」
「はい」
へぇ、マナンが元々見える人って神谷総監督以外に初めて見た。
「それと、『マナン可視化』に加えて……」
神谷総監督の声を遮るようにサイレンが鳴り響いた。
「ほや!」
え、今の声、柚葉ちゃん……?
「ほやって、あの宮城県で有名な海産物のほやのこと?」
なんでこのタイミングで?
「あ、いや、違うんです! 私、びっくりした時とか、咄嗟の時につい『ほや』って言っちゃうんです。だから特に意味はないっていうか……前に住んでた宮城の方言ですかね?」
柚葉がえへへと笑う。
「や、違うと思います……」
私の親戚で宮城に住んでいる人がいるがそんな話聞いたことない。たぶんオリジナルだ。
「驚かせてしまったな。これはマナン出現のサイレンだ。ちょうどいい機会だな。大月班の戦闘に同行して戦い方を学んでくれ。マナンやそれぞれの役割については前に説明したとおりだ。ガーディアンと執行官の武器は祐太郎に渡しておく」
神谷総監督は大月班が持っているのと同じ、どピンクと真っ黒の塊を祐太郎に手渡した。
「朔、案内を頼んだ」
「分かりました」
私達六人は送迎の車がつけてあるデパート裏に向かった。
「さすがに狭いね……」
八人乗りのワンボックスカーに今までは運転手を含めて四人で乗っていたから、七人で乗ると狭く感じる。助手席に朔、二列目につるぎと私と柚葉ちゃん、三列目は小野さんと寧々ちゃんだ。私が二人に挟まれてるからよりそう感じるのか。
「真希ちゃんって呼ぶのは、馴れ馴れしいですか?」
隣に座る柚葉が真希に声を掛ける。
「ううん! じゃあ、私も柚葉ちゃんって呼ぶね」
心の中ではもう呼んでたけど。
反対隣のつるぎが柚葉の方に顔を出してくる。
「大丈夫ですよ柚葉。真希は初めて会った時から年上の私に馴れ馴れしかったですから、そのくらいで文句は言いません」
「だって! それは同い年だと思ってたし、それにつるぎって呼んでいいって言ったから!」
「ふふ。冗談ですよ。柚葉、私のこともつるぎでいいですよ」
「ありがとうございます。つるぎちゃん」
後ろの席から声が掛かった。
「はぁー、そんなんだからぬるいんだよ。……仲良くしたって、どうせ肝心な時には助けちゃくれないんだから」
真希が振り返ると足組み&腕組みをした寧々がこちらを睨んでいた。
「私達はそんなことしません。あなたのことも守ります。もちろん、あなたが私達と同じ志を持って全力を尽くすならですが」
あれ、ちょっとまたバチバチしてる。この二人は混ぜるなキケンだな。
「あのー、僕も仲間に入れてもらえませんか。実際の戦闘を見学させてもらう前に色々話も聞いておきたいですし」
「小野さん……」
寧々の隣に座る小野さんが話に入ってくる。
これはたぶん、空気が悪くなる前に介入してきてくれたんだな……グッジョブ、小野さん!
「はは。僕も祐太郎でいいですよ。名前で呼んでもらえる方が距離近い感じがしますし、嬉しいです」
そう言って祐太郎は微笑んだ。
うちの不器用二人を見ていたからこんなに素直だと好感が持てるな。
「何でも聞いてください、祐太郎さん」
「それじゃあ聞きたいんですけど、マナンとの戦闘は実際どんな流れで行うんですか?」
戦闘の流れかぁ……
「それは僕が答えよう」
それまで黙っていた助手席の朔が入ってきた。
「まずマナン出現場所に着いたら、目的のマナンの姿を捉える。僕は能力で探せるが、祐太郎はDAMで使っている検知器を使うといい。総監督が渡すの忘れてたみたいだから後で戻ったら聞いておいてくれ。ああ、早いところガーディアンにマナンが見えるようにしておいた方がいいな」
「なるほど」
祐太郎は熱心な様子で朔の話を聞いている。
「そしてマナンが見つかったら、戦闘開始だ。ただ、マナンが既に人と融合していたら先にマナンを人から引き離さないといけない。それはその人の苦しみの根源をどう紐解けるかがカギになる。単体のマナンはガーディアンがコアを破壊することで消滅させることが出来る。執行官はそのサポートだ。最近は攻撃してくるやつもいるからな。二人のコンビネーションが重要なんだ」
「あの、結局指令官って実践ではあまりやることがないですか?」
確かに、その説明だけ聞くとそう思うか。朔は祐太郎のほうを振り返ってニヤッと笑った。
「見ていれば分かる」
柚葉が私の方に顔を向けた。
「そういえば、初めのほうに朔君が言っていた能力っていうのは何ですか?」
つるぎがまた柚葉の方に顔をだす。
「柚葉、朔君なんて呼びにくいから変えた方がいいですよ」
「じゃあ、さっくんにします!」
「おい、僕の名前で遊ぶな!」
にぎやかだなぁ……
「柚葉ちゃん、能力っていうのはね、さっきのマナン可視化の儀式でそれとは別にもらった力のことなんだけど、能力の内容は総監督にも分からないみたい。どんな能力になるかはその人の願望が反映されるんだって。まあ、その時が来たら自然とどんな能力か分かるから、今はそんなに構えなくていいよ」
「分かりました」
「あたしは強いからな! どんなに強くてかっこいい能力か楽しみだぜ!」
三列目から興奮した寧々の声が聞こえる。
いや、でも、そういう感じの能力じゃないんだよな……私達三人もそれほど戦闘向きじゃないし。
車が駐車場に止まった。着いたみたいだ。
「怖気付いて逃げ出すなよ? ……それじゃあ、行くぞ!」
朔の掛け声に続いて私達は車を降りた。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる