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契約と元夫 ーブリジットー
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しばらくするとアベルは王宮に勤め出したようだった。
朝、決まった時間に馬で出て行くのが寝室の窓から見える。
窓からアベルを見送った後は、庭を散歩したりたまに王都に服や文房具を買い物に行ったり。
この調子だと2年なんてすぐだな、と思うようになっていた。
そうして平和に過ごしていた、ある日の事だった。
寝室で昼下がりお茶を入れて教科書を読んでいるとずいぶん騒がしい。
最初はどうせカトリとマリーが仕立て屋だか宝石商だか呼んでいるのだろうと気にはしなかった。
(揉めている?)
大きな声が聞こえて思わず耳を澄ませた。
「え?」
思わず声が出た。
確かに聞こえた声は……
ドアをそっと開ける。
「セディ兄様?」
ドアの向こうに見えたのは半年以上振りのセドリックだった。
「一体どうしてここにセディ兄様がいるのですか?私は二度とお会いすることは無いと思っておりましたが。隣国とはいえ離婚した相手に会いに来るなんて公爵家の醜聞になりかねません。」
本音だった。
手紙のやり取りはしているものの、社交場で会う事があっても個人的に会う事はないと思っていた。
今ブリジット達は本邸の応接室に来て座っていた。
セドリックの来訪で離れはちょっとした騒ぎとなった。
カトリとマリーは拘束された。
本邸の使用人達も動揺は見られるもののなんとか落ち着いて仕事をしている。
「君がドレスや装飾品や高級食材を買い漁ってるなんて。そんなわけないじゃないか!そう思ったら居ても立ってもいられなかった!」
矢も盾もたまらず来てくれたのだろう。
それはセドリックの正義だ。
それでも。
公爵家嫡男として、セドリック本人が来るべきではなかったとブリジットは思う。
気になってもせめて代わりの誰かを寄越すべきだったのだ。
セドリックはアベルに向き直った。
「アベル!籍を入れたのになぜビジイが離れに住んでいるんだ!」
「セディ兄様。」
もうこれ以上は……
ブリジットは静止の意味を込めて強く名前を呼ぶ。
「これは夫婦の問題です。ここからは私たちで話し合います。」
ハッキリと言う。
これ以上セドリックがここに居たら収まるものも収まらない、そう思った。
しぶしぶ帰ろうとするセドリックにブリジットは声をかける。
「もう私に会いにきてはいけませんよ。セディ兄様。」
部屋を出て行こうとしていたセドリックがバッと振り返った。
そう言わないとまた来そうだ、と思ったのだ。
セドリックは泣き出しそうな顔をしていた。
そしてぎゅうっとブリジットを抱きしめる。
「僕のせいかい……。」
ぽつりと漏らす。
胸が痛んだ。
また期待に応えられ無いどころか悲しませた。
ブリジットはグッと奥歯を噛み締めるとセドリックの背中を宥める様に撫でる。
「いいえ、セディ兄様のせいだと思ったことは一度もございません。今も大好きな兄様のままですよ。」
そう言ってにっこりと笑った。
2人が出て行ったのを見届けるとブリジットはまた応接椅子に座った。
ぼんやりと考える。
どこまで知られたのだろう、と。
この屋敷に来たばかりの時は、セドリックから手紙が来てゴスルジカ公爵家に居た時のことはすべて契約だとわかれば、悪女の誤解も解けるものと思っていた。
そうなればアベルとちゃんとした関係を結べるのだと、そう信じていた。
しかしそんな事でいい関係が結べるには時間が経ち過ぎてしまった。
もうこの屋敷に来て何ヶ月経ったろうか。
真実などもう今更で、むしろ今まで黙っていたことで、噂を利用し悪女と偽って契約婚を結んだように思われても仕方がないのではないだろうか。
なんにせよ一度は契約で結婚した女なのだ。
また契約婚でお金を手に入れようとしてると思われても不思議ではない。
そもそも何を言っても信じてもらえるほどの関係などアベルとは築いていないのだ。
セドリックを見送り帰ってきたアベルに、話は明日にしようと言われブリジットは心底ホッとした。
朝、決まった時間に馬で出て行くのが寝室の窓から見える。
窓からアベルを見送った後は、庭を散歩したりたまに王都に服や文房具を買い物に行ったり。
この調子だと2年なんてすぐだな、と思うようになっていた。
そうして平和に過ごしていた、ある日の事だった。
寝室で昼下がりお茶を入れて教科書を読んでいるとずいぶん騒がしい。
最初はどうせカトリとマリーが仕立て屋だか宝石商だか呼んでいるのだろうと気にはしなかった。
(揉めている?)
大きな声が聞こえて思わず耳を澄ませた。
「え?」
思わず声が出た。
確かに聞こえた声は……
ドアをそっと開ける。
「セディ兄様?」
ドアの向こうに見えたのは半年以上振りのセドリックだった。
「一体どうしてここにセディ兄様がいるのですか?私は二度とお会いすることは無いと思っておりましたが。隣国とはいえ離婚した相手に会いに来るなんて公爵家の醜聞になりかねません。」
本音だった。
手紙のやり取りはしているものの、社交場で会う事があっても個人的に会う事はないと思っていた。
今ブリジット達は本邸の応接室に来て座っていた。
セドリックの来訪で離れはちょっとした騒ぎとなった。
カトリとマリーは拘束された。
本邸の使用人達も動揺は見られるもののなんとか落ち着いて仕事をしている。
「君がドレスや装飾品や高級食材を買い漁ってるなんて。そんなわけないじゃないか!そう思ったら居ても立ってもいられなかった!」
矢も盾もたまらず来てくれたのだろう。
それはセドリックの正義だ。
それでも。
公爵家嫡男として、セドリック本人が来るべきではなかったとブリジットは思う。
気になってもせめて代わりの誰かを寄越すべきだったのだ。
セドリックはアベルに向き直った。
「アベル!籍を入れたのになぜビジイが離れに住んでいるんだ!」
「セディ兄様。」
もうこれ以上は……
ブリジットは静止の意味を込めて強く名前を呼ぶ。
「これは夫婦の問題です。ここからは私たちで話し合います。」
ハッキリと言う。
これ以上セドリックがここに居たら収まるものも収まらない、そう思った。
しぶしぶ帰ろうとするセドリックにブリジットは声をかける。
「もう私に会いにきてはいけませんよ。セディ兄様。」
部屋を出て行こうとしていたセドリックがバッと振り返った。
そう言わないとまた来そうだ、と思ったのだ。
セドリックは泣き出しそうな顔をしていた。
そしてぎゅうっとブリジットを抱きしめる。
「僕のせいかい……。」
ぽつりと漏らす。
胸が痛んだ。
また期待に応えられ無いどころか悲しませた。
ブリジットはグッと奥歯を噛み締めるとセドリックの背中を宥める様に撫でる。
「いいえ、セディ兄様のせいだと思ったことは一度もございません。今も大好きな兄様のままですよ。」
そう言ってにっこりと笑った。
2人が出て行ったのを見届けるとブリジットはまた応接椅子に座った。
ぼんやりと考える。
どこまで知られたのだろう、と。
この屋敷に来たばかりの時は、セドリックから手紙が来てゴスルジカ公爵家に居た時のことはすべて契約だとわかれば、悪女の誤解も解けるものと思っていた。
そうなればアベルとちゃんとした関係を結べるのだと、そう信じていた。
しかしそんな事でいい関係が結べるには時間が経ち過ぎてしまった。
もうこの屋敷に来て何ヶ月経ったろうか。
真実などもう今更で、むしろ今まで黙っていたことで、噂を利用し悪女と偽って契約婚を結んだように思われても仕方がないのではないだろうか。
なんにせよ一度は契約で結婚した女なのだ。
また契約婚でお金を手に入れようとしてると思われても不思議ではない。
そもそも何を言っても信じてもらえるほどの関係などアベルとは築いていないのだ。
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