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きっとたぶんめいびー
しおりを挟むレンとマリーは二人で冒険者ギルドに来ていた。赤のダンジョンの調査結果を伝える為に。
「大丈夫です。おま・・・レンが隣でずっと喋っててくれるからちょっとマシです」
夕方の冒険者ギルドは、人で賑わう。クエストの報告が行われるのが大体この時間だからだ。
マリーはいつも人がまばらな早朝に冒険者ギルドに訪れる。人が多いと心の声がごちゃごちゃ聞こえて気持ち悪い。
しかし今回の件は急を要するので仕方なかった。
「っ!?い・・・いきなり触るなです!?誰の許可を得て手を握ってるですか!?」
しかしその手が離されることはなく、ギュッと力強く握られる。
「・・・まぁ気がまぎれるので許してやるです・・・」
「あらあらずいぶん仲良くなったわね」
クエストの報告の順番待ちをしていると突然現れる女性。ギルドマスターである。
「別に仲良くなってなんか・・・」
「あなた達の報告は私が別室で聞くわ。来てちょうだい」
レンとマリーは列から外れ、ギルドマスターの後について行く。
招かれたのはとある個室。中にはソファーが二つと間に机が一つ。それ以外は何もない部屋だった。
「ここは秘密の会合室よ。私と私が許可した人しか入れないし、音が外に漏れることもないわ」
そう言ってギルドマスターはソファーに腰かけ、反対側に座るように二人に促す。
レンとマリーは手を繋いだままソファーに腰かける。
「それで?どうだったのかしら」
どこか緊張した面持ちでギルドマスターはマリーに尋ねる。
「最悪の予想です」
「・・・そう。これから忙しくなりそうね」
「赤のダンジョンはその機能を終えたです。赤のダンジョンコア曰く、鉱石級のダンジョンは危険度が上がるらしいです。他の色のダンジョンは大丈夫だそうです」
「文献の通りというわけね。幸い三賢者も順調に育っているから・・・何とかなるとは思うわ」
「ああ。帝国にも勇者、聖女、賢者がいるです。勇者様と聖女様は最近Aランクに上がったとか、賢者様は研究室に籠っているらしいですが、その実力はよく報じられるです」
「!?王国の勇者は既に聖剣を手に入れてるですか!?」
「っ!?本当なの?」
レンが首をかしげる。
「いやいや。聖剣、聖装、聖盾は女神からの神器です。それを持つにふさわしい実力がないと、踏破できない様なダンジョンの奥深くにあるです。そんなの子供でも知ってることです!」
「つまりすでに王国にいる勇者様はそれだけの実力を・・・ならば安心かもしれませんね」
うんうんと首を縦に振るレン。
「王国は三賢者がパーティーを組んでるですか、ならば連携も大丈夫そうですね」
「それでも帝国の三賢者にも伝えないと・・・これは世界の一大事ですから。それでは私は今回の事を各ギルド支部と皇帝に伝えないといけないので・・・報酬はここに置いておきますね」
カチャカチャと音のなる小袋を机の上に置く。それをマリーが受け取り、ギルドマスターの後に続いて部屋を出る。
「そういえば・・・二人はこれからどうするの?レン君はこの町で暮らすの?」
レンはカバンから木の板を取り出し、ナイフで文字を掘っていこうとしたが・・・。
「私が伝えるから私に言えばいいです」
そう言ってマリーはレンの手を取る。
「・・・マジですか?」
コクリと頷くレン。
「レン君はなんて言ってるの?」
「い・・・言わないといけないですか?」
「ん?マリーちゃんが伝えるって言ったんじゃない」
「そうですけど・・・んんっ!では伝えるです!『俺はマリーとこの町を出て帝国っていうのがどんな国か見たい』だそうです」
「え!?マリーちゃんもこの町を出るの!?」
「私も初耳ですよ!?何言ってやがるですかこいつ!」
「こいつって言ったから罰ゲーム?そんなのどうでもいいです!!私が何でレンについて行かないと・・・」
「そ・・そんな悲しいこと言うなです。ずるいです・・・」
「・・・わかったですよ!行けばいいんですよね!」
「何を言われているかはわからないけど・・・お熱いことね・・・何なら二人のパーティー申請を受理するけど?」
「なっ!?」
レンはギルドマスターの手を両手で握り、コクコクと頭を縦に振る。
「なんで手を繋いでるですか!」
パシンっ!とレンの手をはたき落すマリー。
「もう。マリーちゃん嫉妬はみっともないわよ」
「嫉妬じゃねえです!勝手にパーティー申請を――」
「Cランクパーティーということで申請しておくわね。二人とも、末永く仲良くしてね~」
そう言ってそそくさとその場を立ち去るギルドマスター。
レンはさっとマリーの手を取り、手を繋いで歩きだす。
「どういうことですか・・・いろいろ勝手に決めて・・・」
レンを睨みつけるマリー。しかしつないだ手を離すことはない。
「思ったより強引なんですね。そう言うのは嫌われるです」
ビクッ!と少し震えるレン。申し訳なさそうにマリーを見る。
「私以外にするんじゃねえです。仕方ないからレンの旅に付き合ってやるですよ・・・」
「お礼なんていいです。それに・・・」
「私も外の世界ってやつに興味はありますし・・・レンと二人ならそれもいいかな・・・って何恥ずかしいこと言わせるです!!」
二人で手を繋いで冒険者ギルドを出る。
ここから二人の物語が始まる。喋ることのできない少年と人の心の中を見ることができる少女。
きっとこの旅は、二人にとってかけがえのないものとなるだろう。
「罰ゲーム?私に恥ずかしいかった思い出なんてねぇです!!うるせぇしつけーです!!」
多分?
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