声の出ない少年と心を読む少女

てけと

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「はぁ・・・はぁ・・・レン・・・」

「そりゃ・・・息も切れるです・・・」

「そりゃあ・・・私がレンの上に乗ってるのは認めますけど・・・」

「駄目です!やめるなです!!あああ・・・」


 マリーはレンの首にガシッしがみつく。
 おんぶしていたマリーを降ろそうとしていたレンは諦めてマリーを背負い直す。

 ここは帝国にある高山。この高山の名前は龍の牙。飛竜たちが棲み処としている高い山だった。

「なんでこんな山を登ってるんですかねー」

「・・・まあそうですけど・・・路銀が尽きたからですけど・・・だって報酬がおいしかったですし・・・」

「ごめんっていってるです!そうです!私が初めて食べる甘味にお金をかけたせいです!すいませんでしたー!」

 クエスト依頼:竜の牙にて調査をお願いしたい。
 詳細:最近小型の飛竜を森でよく見かける。飛竜の牙で異変が起きているかもしれない。調査を頼む。
    解決した場合ベット報酬を上乗せ有。

 報酬:金貨10枚


「さっと行って見て帰るだけだと思ったんですが・・・こんな罠が・・・」

 最初は意気揚々とレンを引っ張るように歩いていたマリーだったが、あまりの急勾配と、山の高さに途中でギブアップ。 
 中腹辺りからレンがマリーをおんぶして山道を歩いていた。

「でもこのクエストを達成すればあのパフェなる甘味を・・・」

「ぐうのねも出ない正論を・・・2杯で我慢してやるです・・・」

 はぁ・・・とため息をつくレン。それでも彼の足取りは軽く、嫌がっているわけではないようだ。

「あ!見えましたよ頂上じゃないですか?」

 マリーが指さす先には山の切れ目から空が見えて・・・。
 マリーはレンの背中から飛び降り走り出す。レンはそれを追うために走り・・・。

「わぁーーーー!すごいです!」

 山の頂上。そこは青々とした草と色とりどりの小さな花が咲き乱れ、日の光を浴びてキラキラしていて・・・。

 クエストのことをすっかり忘れ、マリーは走り出す。

「レンも早く来るです!!」

 レンは警戒しつつも、無邪気にはしゃぐマリーを見て微笑ましく思っていた。
 あの街ではほぼ無表情だった彼女が、こうやって笑顔で走り回っている。

 旅に出てよかったな、本当にそう思っていた。

「―――――!?」

 レンは突如走り出す。

「本当に綺麗な場所ですね。幻想的ですし、空気はおいしいですし、人もいねぇですし、ここで暮らせたらいいのに―――」

 ドスンッ!!とマリーの前に何かが下りてくる。

「へ?」

 目の前に降りてきた物体の正体を見るためにマリーは恐る恐る見上げる。

「グルルルゥ」

 全長10メートルはあろうかという真っ黒な竜だった。真っ赤に光る双眸が、マリーを見つめていた。

「ひぇ・・・レン・・・」

 いつの間にか駆けて来ていたレンが、マリーを守るようにマリーと竜の間に立ち、剣を片手で構える。

「グアァァァァァァァァ!!!!!!!」

 竜の咆哮が辺り一面に轟く。空気が震え、体の内側まで振動する。

 しかしレンは目線を外すこともなく、怯えることもない。ただただ目の前の相手の対処方法を模索する。

 マリーはギュッとレンの服の裾を握る。

「ちょっと待つですレン。この竜は私たちの言葉が分かるっぽいです」

 驚いたようにレンはマリーの方を見る。

「『ほう?小娘。我の思考を読むか。それにそこの人間なかなか筋がいい』だそうです」

 レンは龍に向き直り、好奇な目で見つめる。

「『お主と一戦交えたいが、この場所を荒らしたくない。場所を変えよう』」

 そう言うと竜は片翼を地面に降ろす。

「乗れってことですかね?」

 マリーは恐る恐る竜の翼をよじ上り、レンはタンタンッと翼を軽やかに駆け上がる。



 二人が背中に跨ると、竜は翼をはばたかせて飛ぶ。

「わああーーー!!ってあぶねえです!?」

 空を飛び始めた竜に感動し、立ち上がったマリーだが、体勢を崩し竜の背中を転がっていく。
 ポスンッとレンがマリーを受け止め、マリーが落ちないようにギュッとレンはマリーの後ろから体を抱きしめる。

「あ・・・ありがとです。それよりも!すごいです!空を飛んでますよ私達!!」

「そうですね。とても気持ちいい・・・」

 空をゆっくり飛ぶ竜。
 マリーははしゃぎ、レンはどこか気持ちよさそうに風を感じていた。

 戦いの前の安らかな時間を、二人は身を寄せ合って感じていた。
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