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きっと君となら何でも楽しい
しおりを挟む荒れ果てた荒野。気も草も生えないこの場所で、レンと竜が向き合っていた。
(・・・)
レンは無心で竜と向き合い
(久々に楽しませてもらおうか!)
どこか楽しそうな竜。なんで言葉が通じるのに戦うんですかね・・・。
私は少し離れたところでその様子を見る。
あんな人外どもの戦いについていける訳ねぇですし・・・。
ただ・・・レンが死なない様に祈る事しかできない自分に少しだけ焦ってはいた。
戦いが始まる。
先手はレンだった。目にも止まらぬ体捌きでいつの間にか竜の首の付近に移動し、剣を振るう。
確かにとらえたはずの攻撃は、かすり傷を負わせる程度しかできなかった。
(ふん!そんな小枝のような武器で我がやられるとでも!)
竜は前足でレンに攻撃を加える。受けては吹き飛ばされると察し、レンは全力で後ろに飛ぶ。
すれすれで攻撃を躱したレンは再び竜の懐に入り斬りつける。
しばらく同じような攻防が続いた。竜の攻撃を皮一枚の所で避け、攻撃を与えるレンと、レンの攻撃など意に介さず、一撃あたれば勝てる竜。
戦闘を開始してから数十分。竜は異変に気付く。
レンは相変わらず一撃も食らうことはない。危うい場面もあるが、それでも結果から見れば無傷だった。
対して竜はいつの間にか首から赤い血がしたたり落ちる。時間が経てばたつほど、出血の量が増えていく。
(くくく・・・あーっはははは!なるほど!!)
突如竜が笑い出した。
(かすり傷にもならん傷がかすり傷となり、かすり傷はさらに致命傷に・・・驚くべき技量よ!!)
レンはどうやらやみくもに攻撃をしていたわけではなかった。ただひたすら・・・一・ミ・リ・の・狂・い・も・な・く・、おんなじ場所を斬っていたのだ。
激しく動き続ける敵のただ一点のみを斬るという人外の技術。
これはまずいと思ったのか、竜は翼をはばたかせ、空へと退避する。
(血を流すなんていつぶりか・・・貴様を強敵とみなし、我が必殺の一撃を贈ろう)
竜の赤い目光り輝き、竜の背後に大きな魔法陣が現れ、大きく開かれた口の先に何重もの魔法陣が展開する。
「ってやべぇです!!レン!!逃げるです!!」
一目散に走り始める。
何処までが攻撃範囲かはわからないがとにかく離れないとです!?
(皇龍の輝息ドラゴンブレス!!!)
一条の光が竜の口から放たれ―――。
チュンッ!と地面を貫き・・・。
ドッ―――――ッン!!!!と爆音が響く。
「ひえぇぇ!!」
爆風に吹き飛ばされ、体が横転し、ゴロゴロと転がされる。
ズザーーと地面を滑り何とか停止するとすぐ後ろを見る。
爆炎が濛々と空に昇り、黒い煙が青い空を覆いつくしていた。
「レンっ!?」
レンの居た所は陥没しており、全てが灰燼と化していた。ただの人であるレンが無事なはずはなく・・・。
(ふはははは!・・・わしやりすぎた?)
「やりすぎです馬鹿竜!!レンが・・・レンッ・・・・」
涙がこみ上げる。やっと見つけた私の安心できる場所が・・・・こんなバカな事で・・・。
(さすがに儂も殺されかけたとなるとな?だから小娘・・・ギャアアアア!?)
「え?」
突如悲鳴を上げる馬鹿竜。なんなんです?
(貴様・・・どうやって我が背中に・・・グッ!痛い痛い!!やめんか!!)
空で悶絶し、錐もみ飛行をしたり、高速で移動したり、何かを振り下ろそうとする馬鹿竜。
(まいった!!降参だ!!だからやめてく・・・ぎゃあああああああ!!)
叫び声をあげて墜落していく馬鹿竜。
ズンッと音と砂埃をあげ、地面に落ちると・・・。
背中から飛び降りたのは、肉片の付いた鱗を数枚腕に抱えているレンだった。
「レン!」
私はレンに向かって走る。近くに行くと、レンの防具は焦げ付き、髪の毛も若干チリチリになっている。
そして珍しくいらだちを顔に見せるレン。後ろには白目をむいて気絶している竜がいた。
(大丈夫かマリー?まさか巻き込むことになるとは思ってなくって・・・)
「私は大丈夫です。レンこそ・・・どうやってブレスを避けたです?」
多分だが、広範囲を焼き尽くすはずの攻撃を、魔法陣により圧縮し、レンのみに攻撃を行っていたのだろう。それでもあの爆風は人を殺すには十分の威力だったわけだけど・・・。
(飛んで避けて、後は爆風で空を飛んであいつの背中に着地・・・ってマリー血が!?)
「ん?こんなのかすり傷です。ほっとけば治るです」
滑った時にひざを怪我したようだ。皮膚をちょっと擦っただけなのでそれほど痛みもなかった。
(えっと確か・・・あった!)
カバンから緑色のポーションを取り出し、私の膝にゆっくりと垂らすレン。見る見るうちに傷がひいていき、血も綺麗になくなる。
「あ・・・ありがとです・・・ってレンの火傷の方がひどいです!それをさっさと貸すです!」
レンからポーションを取り上げ、火傷の酷い箇所に手で塗っていく。
レンはおとなしくマリーのするがままに任せ、火傷を負っていた場所はどんどん消えていった。
(ありがとうマリー)
「ど・・・どういたしましてです!・・・で?この馬鹿はどうします?今のうちに解体するですか?」
レンを殺そうとした竜に怒りを隠せず、スッと腰にあるナイフを抜く。
(ま・・・待て待て小娘よ・・・我が悪かった。お主たちに服従するとしよう。だから許してくれ。本気で戦闘できるなんて何百年ぶりか、つい滾ってしまっただけなんじゃ)
「むむむ・・・仕方ないですね・・・」
実際レンは無事だったし、空の散歩も悪くなかったので許してやろう。
(それよりも、お主らはなぜあんな辺境の山に来たのだ?人が来ることなんて百年前の勇者の腕試しの時くらいじゃったのに)
「あっ!?そうでした!クエスト!」
(あ~そう言えばそう言う目的だったな)
私はあの山に至った理由を竜に語った。すると竜は少し考え・・・。
(山の魔物・・・つまり儂らからすれば食料が、突如大量に山から下りて行った。それをあ奴らが追いかけたんだろう)
「なるほど?どうにかできるです?」
(別に我らは人を喰わん。襲ってこない限り手は出さんし、お主らの天敵である魔物が減るのだから別にいいのではないのか?)
「むむっ!確かにそうです」
(儂からもくれぐれも人は襲わない様に伝えておこう。そしてお主たちはそのことを伝えてほしい)
「わかったです。これで解決ですね!!うへへ・・・パフェ・・・」
調査だけでなく解決までしてしまった。ならば報酬は上乗せされ・・・うはうはです!!
(解決したのマリー?)
「ええ!解決です!この馬鹿竜が山を下りてる龍たちに人を襲わない様に言ってくれるそうです!」
(へぇ~・・・それってどうやって証明するの?)
「え?」
(こいつの声が聞こえるのはマリーだけじゃん?そんなの真に受けてくれるとも思えないんだけど・・・)
「確かに!?おい馬鹿竜!何か証拠を寄越せです!!私たちの味方になるようなそんなものをです!!」
(あ~・・・。それならそこの剣士が持ってるじゃろ?)
「ん?」
レンが腕に抱えているのは、肉片の付いた数枚の、直径一メートルはある大きく綺麗な鱗だった。
(鱗を剝がれるっていうのは、お主たちにとって爪を剥がれるのと同じじゃ。それをお主たちに与えたこととしようではないか・・・乱暴に剥がしよって・・・どれだけ痛かったことか)
「痛そうです・・・まあ因果応報です」
(まあ儂もその剣士を殺そうとしたわけじゃ、別に恨んでなどいない。儂は一応割と有名な龍じゃから、それを見せれば大体察するであろう)
「有名だったんですね。馬鹿の癖に・・・」
(馬鹿馬鹿言いすぎじゃて、悪かったと言っておろう。さて・・・用事は済んだようだし、儂も帰ろうかの・・・お主たちも人の町まで送ろう)
「そうですね。レン、帰るですよ」
(わかった)
そう言うとレンはマリーを抱えて竜の背中に飛び乗る。
マリーを竜の背中に座らせ、それをギュッと後ろから抱きしめる。マリーが落ちることのないように。
「では出発です!!」
とても気分がよくつい大声でそう叫んでしまう。それは空を飛ぶ楽しさによる喜びなのか、はたまた彼に抱きしめられているからなのか、今はまだ分からないけど、きっとこの後のパフェが楽しみなだけですよね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日とある町に大きな龍がやってくる。
竜の牙には歴戦の勇者が挑み、まるで歯が立たない龍がいると。
その龍は固い外皮と何者も切り裂く鉤爪、全てを掻き砕く牙。そして魔物としては有りえないほどの頭脳を持ち、魔法まで操るという。
挑んだ勇者によると、体長10メートルの漆黒の龍であり、あの飛竜が飛び回る場所のボスだそうだ。
そんな言い伝えだけが残された龍が、町の外れに降り立ち、その後すぐに龍は山の方へと飛び去って行った。
呆然とする町の住民たち。そんな事を気にすることなく、一組の冒険者が街に入ってくる。
一人は年端も行かない少女で、上機嫌でスキップしながら町を歩き、もう一人の少年は大きな鱗を片手で担ぎ、少女の後を追うように歩いて行った。
冒険者ギルドでは大騒ぎだった。詳しい話を聞こうと、少年が持っている鱗を売ってほしいと人が集っていた。
しかし少年はギルドに鱗を売却し、報酬を受け取るや否や少女を抱えて走って逃げていってしまった。
冒険者ギルドを出る際にただならぬ殺気を放ち、誰も追いかける気持ちになれなかった。
「レン。またその方法で行き先を決めるです?」
少年は剣を地面に立て、コマのように剣を回す。
「そうですか・・・父の形見の剣なのですね・・・」
剣が倒れる。剣を拾おうとする少年。しかしそれを手を掴んで止める少女。
「父親ばっかりに聞いていると母親が嫉妬するですよ?」
ポンッと手のひらを叩き、少年は腰に下げている短剣を地面に突き立て、剣と同様に回し始める。
くるくるとコマのように回った短剣は、倒れた剣に寄り添うように地面に落ちる。
「ふふっ・・・仲のいい夫婦だったのですね」
コクリと嬉しそうに頷く少年。
「では次の目的地はこの先にある町ですね!!行くです!」
少女は少年の手を取り、少年を引っ張るように走り出す。
この道の先にも、きっと楽しいことがあると確信しているように、二人は笑顔で走り出した。
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