一夜限りの思い出にもなるしと、拾ってくれた領主さまのために一肌脱いでみたところ。

鷲井戸リミカ

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「それで、お前は何が得意だ?」
「うーん、結構何でもできるけど?」
「何でもできると言う奴は、何もできないというのがお決まりの流れだ。もう少し自分の得意と不得意を見つめ直せ」

 そのままウォルトの屋敷に連れてこられた光は、ウォルトと今後の相談をしていた。

「炊事洗濯は得意かな」
「それは間に合っている」
「えー。ちなみに、この屋敷で働いているひとって、どういう基準で雇われているの? 俺に近い感じのひとって、何をしている?」

 そこで、奇妙な沈黙が続いた。ちなみに光は、この屋敷に着いてからもまだ着用していたバニーガールの服装を脱いでいない。そしてそんな光の姿を、どうにも忌々し気な顔でウォルトは上から下まで眺めていた。説明も妙に歯切れが悪い。

「虎族や獅子族は冒険者、海狸族は建設業、それから……」
「もしかして、兎族ってそういう夜の職業に就いているひとが多いの?」
「必ずというわけではない。食堂や酒場で働くことも多い。ただ見目が良いからな」
「まあ、冒険者とかには向かないだろうしね」
「ならば一応聞くが、その手の仕事の経験は?」
「まあ、ご要望とあらば……。あー、もしかして制圧とかでむらむらしちゃった感じ? 仕事が忙しいと、疲れマラになるとかいうよね。いいよ、とりあえず抜く? えーと、今すぐの方がいいのかな? でも、風呂には一応入りたいし」

 こともなげに光はバニーガールの衣装を脱ぎ始めた。そもそもこの衣装は、着心地が最悪なのだ。だがウォルトは慌てて光の動きを止め、なんとも言えない表情で疑問を口にした。

「下の世話はやりたくなさそうだな」
「やらずに済むならやらないのが一番じゃない? 俺は一夜の関係も愛人業もお断り。あー、あんたモテ過ぎてて、男女どちらからでも関係を迫られてたタイプ? なるほどねえ」

 ウォルトは返事をしなかったが、苦虫を噛みつぶしたような表情を見れば答えは一目瞭然だった。

「身体の関係はナシってことなら、俺的には万々歳だな」
「行為は嫌いか?」
「嫌いっつーか、苦手。圧迫感凄いし、苦しいし、下手な奴が相手だと痛いしさあ。まあ、できるだけ勘弁してほしいって感じ」
「……そうか。ならば、お前に無体なことはしないと誓おう」
「マジで!!! おにーさん、本当に優しい。俺、めっちゃ嬉しいわ。ありがとな!」

 本気で喜ぶ光を見て、胸が痛んだらしい。端正なはずなのに凶悪なウォルトの顔が、ますます悪人顔になっていく。顔が怖いって損だよなあと思いつつ、他人事のように光は肩をすくめた。

「いや、別に俺の今までの人生って、あんたのせいじゃないじゃん。でもまあ、同情してくれるんならこれからは俺のことちゃんと大事にしてよ。俺、か弱いうさちゃんなんだからさ」
「調子に乗るんじゃない」

 仕方のない子どもを相手にするように髪の毛をぐしゃぐしゃに撫でられて、光はくすぐったそうに声をあげた。
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