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それからしばらくして、屋敷では夜会が開催されていた。やはり領主ともなれば、さまざまな理由で夜会を開く必要が出てくるらしい。人付き合いの大切さは理解していても、愛想笑いなどできないウォルトは長年その夜会を苦にしていたのだが、今回は笑顔に定評のある光が隣にいることでだいぶ雰囲気が変わったようだ。ここまで機嫌のよい領主さまを見たのは初めてだと客人たちから聞かされて、光は正直苦笑するしかなかった。
「あんたさ、何か女性陣にやらかしたの?」
「いや、特には」
「じゃあなんで俺、綺麗なお姉さんたちに睨みつけられてんの? 意味わかんないんだけど」
「お前の見目が良いからだろう」
「そりゃどうも。とはいえ所詮、馬子にも衣装なんだよなあ」
飼い主が誰かわかるようにしておけと言われて、ウォルトにつけられている首輪が重い。ウォルトの瞳の色が入った宝石がついているなんて、やりすぎに決まっている。
自分からは見えないので指で感触を確かめていたら、また見知らぬご令嬢から睨みつけられた。やはり貴族の世界はおっかない。元の世界でも時たま眩暈がしそうなほどの金持ちが来店することがあったが、やはり彼らの常識は光の常識とは異なるものだった。
「腹減ったから何か摘まんでくるわ」
「飲み過ぎるなよ」
「わかってますって」
ちょっと休憩とばかりにウォルトの元から離れた途端、目を吊り上げたご令嬢の集団が近寄ってくるのが見えた。先ほどウォルトに粉をかけて、順繰りに袖にされていたお嬢さまがたである。このままここにいて、八つ当たりをされてはたまらない。無料のサンドバッグなんてまっぴらごめんだ。光は食べ損ねた軽食をちらりと見ながら肩を落とすと、夜の庭園へ逃げ出した。
誰かがついてきていると気が付いたのは、そのすぐ後のことだ。面倒だなと思いつつ、光はあえて、庭園の奥へと歩みを進めた。人気の少ない場所へ逃げるなど、普通ならば完全なる悪手である。自分の優位を確信したのだろう、後をつけていた狐族の男が舌なめずりをしながら姿を現わした。光の長い耳が警戒するようにぴんと立つ。兎狩りを楽しむつもりなのかもしれない。
「こんなところでおひとりなんて。もしや、誘っていらっしゃるのかな」
「そんな、俺は! あっ」
慌てて駆け出そうとしたところを飛び掛かられ、茂みに倒れ込む。無理矢理服を引き裂かれそうになったところで、潤んだ瞳で男を見上げた。
「静かにしているから、痛くしないで」
「へえ、物分かりのいい奴だな。じゃあ、さっさとしゃぶれよ。上手にできたら、可愛がってやるからよ」
小さくうなずく光の前で、男は鼻歌交じりにベルトを外し、無防備に下半身をさらした。その瞬間、光は隠し持っていたナイフの柄を男に叩きつける。小汚いものを切り落としたかったが、叫ばれるのも面倒なので止めておいた。
「こういう面倒な男は息の根を止める方が早いんだけど。夜会で血が流れるのは、やっぱり揉めるだろうし、仕方ないか」
光は抱かれるのがあまり好きではない。特に無料でなんて最悪だ。だからこそ、光は自分を守るべく元の世界にいた頃から腕を磨いているのだった。護身用のナイフを手に入れるまでは紆余曲折あったが、最終的にウォルトが許可したのだからこの後のこともどうにかしてくれるだろう。権力をふりかざすのは嫌いだが、必要なときに必要なだけ権力をふるうことは大事なことなのである。
この世界に来てすぐに人さらいに遭ったのは、さすがに状況把握に手間取ったからだ。日頃から張り巡らせている危機察知能力をうまく働かせることができなかったが、おかげでウォルトに会えたのだからまあ怪我の功名だったとも言えるだろう。
「俺の幸せを邪魔するってことは、それなりの覚悟ができているんだよね?」
いつもと変わらぬ笑顔のまま、怯える狐獣人を死なない程度に痛めつける。男が外したベルトで、粗末なものを丸出しにしたまま恥ずかしい体勢に固定し引きずっていくことにした。
「あんたさ、何か女性陣にやらかしたの?」
「いや、特には」
「じゃあなんで俺、綺麗なお姉さんたちに睨みつけられてんの? 意味わかんないんだけど」
「お前の見目が良いからだろう」
「そりゃどうも。とはいえ所詮、馬子にも衣装なんだよなあ」
飼い主が誰かわかるようにしておけと言われて、ウォルトにつけられている首輪が重い。ウォルトの瞳の色が入った宝石がついているなんて、やりすぎに決まっている。
自分からは見えないので指で感触を確かめていたら、また見知らぬご令嬢から睨みつけられた。やはり貴族の世界はおっかない。元の世界でも時たま眩暈がしそうなほどの金持ちが来店することがあったが、やはり彼らの常識は光の常識とは異なるものだった。
「腹減ったから何か摘まんでくるわ」
「飲み過ぎるなよ」
「わかってますって」
ちょっと休憩とばかりにウォルトの元から離れた途端、目を吊り上げたご令嬢の集団が近寄ってくるのが見えた。先ほどウォルトに粉をかけて、順繰りに袖にされていたお嬢さまがたである。このままここにいて、八つ当たりをされてはたまらない。無料のサンドバッグなんてまっぴらごめんだ。光は食べ損ねた軽食をちらりと見ながら肩を落とすと、夜の庭園へ逃げ出した。
誰かがついてきていると気が付いたのは、そのすぐ後のことだ。面倒だなと思いつつ、光はあえて、庭園の奥へと歩みを進めた。人気の少ない場所へ逃げるなど、普通ならば完全なる悪手である。自分の優位を確信したのだろう、後をつけていた狐族の男が舌なめずりをしながら姿を現わした。光の長い耳が警戒するようにぴんと立つ。兎狩りを楽しむつもりなのかもしれない。
「こんなところでおひとりなんて。もしや、誘っていらっしゃるのかな」
「そんな、俺は! あっ」
慌てて駆け出そうとしたところを飛び掛かられ、茂みに倒れ込む。無理矢理服を引き裂かれそうになったところで、潤んだ瞳で男を見上げた。
「静かにしているから、痛くしないで」
「へえ、物分かりのいい奴だな。じゃあ、さっさとしゃぶれよ。上手にできたら、可愛がってやるからよ」
小さくうなずく光の前で、男は鼻歌交じりにベルトを外し、無防備に下半身をさらした。その瞬間、光は隠し持っていたナイフの柄を男に叩きつける。小汚いものを切り落としたかったが、叫ばれるのも面倒なので止めておいた。
「こういう面倒な男は息の根を止める方が早いんだけど。夜会で血が流れるのは、やっぱり揉めるだろうし、仕方ないか」
光は抱かれるのがあまり好きではない。特に無料でなんて最悪だ。だからこそ、光は自分を守るべく元の世界にいた頃から腕を磨いているのだった。護身用のナイフを手に入れるまでは紆余曲折あったが、最終的にウォルトが許可したのだからこの後のこともどうにかしてくれるだろう。権力をふりかざすのは嫌いだが、必要なときに必要なだけ権力をふるうことは大事なことなのである。
この世界に来てすぐに人さらいに遭ったのは、さすがに状況把握に手間取ったからだ。日頃から張り巡らせている危機察知能力をうまく働かせることができなかったが、おかげでウォルトに会えたのだからまあ怪我の功名だったとも言えるだろう。
「俺の幸せを邪魔するってことは、それなりの覚悟ができているんだよね?」
いつもと変わらぬ笑顔のまま、怯える狐獣人を死なない程度に痛めつける。男が外したベルトで、粗末なものを丸出しにしたまま恥ずかしい体勢に固定し引きずっていくことにした。
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