44 / 58
本編
恋9
しおりを挟む
朝、目が覚めると彼女が静かに泣いていた。
声を殺して。
衝動的に押し倒した。
「誰のことを想って泣いてるの?」
彼女の顔を上から見下ろす。
涙で濡れた顔。
僕のベッドで、他の男のことを想って泣くなんてっ…
つい、肩を握った手に力がこもる。彼女の顔が痛みに歪んだ。
「っ…ジョーゼフ様の…ことをっ…」
信じられずに、静かに泣き続ける彼女の唇を塞いだ。彼女はそれを受け入れる。なんの抵抗もせず。
嘘の気配が感じ取れなくて戸惑った。
「どうして泣くの?」
唇を離してさっきより穏やかに聞いても、彼女の涙は止まらない。
涙を零し続ける彼女と視線が絡んだ。
僕を見つめる切なげな瞳。
不意に気づいた。
無意識に除外していた可能性。
「もしかして、僕のことが好き?」
「っ…」
彼女は目を見開いて、思い切り顔を逸らした。
でも、その頬は真っ赤で。横を向いて顔を背けたって無駄なくらいに真っ赤で。
だって首まで赤くなってる。
「ねぇ…僕のことが…好きなの?」
ゾクゾクしながら指の背で頬を撫でた。そっぽを向いた彼女の真っ赤な頬を。
泣くほど僕のことが好き?
そんな顔しちゃうくらい?
彼女にそんなふうに思ってもらうには、もっとずっと時間がかかると思ってたのに…。
……本当に?
「…申し訳…ありません…」
目を伏せた彼女から返ってきた小さな謝罪は、肯定にしか聞こえなかった。
声を殺して。
衝動的に押し倒した。
「誰のことを想って泣いてるの?」
彼女の顔を上から見下ろす。
涙で濡れた顔。
僕のベッドで、他の男のことを想って泣くなんてっ…
つい、肩を握った手に力がこもる。彼女の顔が痛みに歪んだ。
「っ…ジョーゼフ様の…ことをっ…」
信じられずに、静かに泣き続ける彼女の唇を塞いだ。彼女はそれを受け入れる。なんの抵抗もせず。
嘘の気配が感じ取れなくて戸惑った。
「どうして泣くの?」
唇を離してさっきより穏やかに聞いても、彼女の涙は止まらない。
涙を零し続ける彼女と視線が絡んだ。
僕を見つめる切なげな瞳。
不意に気づいた。
無意識に除外していた可能性。
「もしかして、僕のことが好き?」
「っ…」
彼女は目を見開いて、思い切り顔を逸らした。
でも、その頬は真っ赤で。横を向いて顔を背けたって無駄なくらいに真っ赤で。
だって首まで赤くなってる。
「ねぇ…僕のことが…好きなの?」
ゾクゾクしながら指の背で頬を撫でた。そっぽを向いた彼女の真っ赤な頬を。
泣くほど僕のことが好き?
そんな顔しちゃうくらい?
彼女にそんなふうに思ってもらうには、もっとずっと時間がかかると思ってたのに…。
……本当に?
「…申し訳…ありません…」
目を伏せた彼女から返ってきた小さな謝罪は、肯定にしか聞こえなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
168
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる