INTERNAL ORGAN

現実

 目覚めてから数時間後、慌てて病室の扉から1人の男のが入って来た。
『良かった。目覚めてくれて』
そこにはワイシャツを捲り上げ、額に汗を浮かべる大輝がいた。それから少し遅れて比奈が訪れた。少しだけ涙ぐんでいた。2人は毎日のようにお見舞いに来ていてくれたらしい。だが、天はそこに違和感を覚えた。
『雪菜と光はどうしたんだ』
 しばらくの間沈黙が続いた。そして、比奈は口を開こうとした。それを遮るかのように大輝は天を屋上に誘った。



 『光は4日前まではお見舞いに来てくれ           
     ていた。けど3日前の葬式以来、外に
     出なくなった』
この言葉の意味を天は理解しようとした。いや、実際のところを理解したのだろう。しかし、それでも天は聞かずにはいられなかった。
 『葬式ーーもしかして......』 
物事をはっきり言う大輝でさえ、返答することはなかった。
  天は走った。よれよれで今にも倒れそうな身体を無理やり動かして病室を抜け出した。大輝は止めることができたにも関わらず、その場所に着くまで後ろを追いかけるだけだった。
 春野雪菜 享年17歳
その石にはそう刻まれていた。
『あの事故だ。俺が病院に駆けつけたと
   きにはもう亡くなっていた。最期はと
   とても安らかに眠っていたよ』
そう大輝は言った。彼は下を向くしかなかった。
 『なぁ、俺はこれからも一緒にいたくて
    伝えたのに、なんでいないんだよ。雪
    菜ーー』
天は傷ついた。それは事故の傷なんか比べものにならないくらい痛く、鋭く胸を突いた。空は青く晴れ渡っていて、暖かな太陽が彼を包んだ。
 『雪菜！？』
疲れ果てたのだろう。天は大輝に運ばれて病室に戻り、そのまま眠りについた。