【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

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4.思いがけない提案

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週明けの昼休み。
私はざわめく教室を抜け出し、一人で屋上に来ていた。フェンスに寄りかかり、ぼんやりと空を見上げる。

『考えすぎだよ』
『ただのクラスメイトだ』
信じたい。
でもあの時の彼の表情とリディアの姿がまぶたに焼き付いて離れない。

(私はアルバートを信じなきゃ。恋人なんだから……)
自分に言い聞かせていると、不意にドアが軋む音がした。

「やっぱりここにいたか」
「レオ……。どうして?」

振り返ると、パンをかじりながらレオが歩いてくるところだった。

「お前の行く場所なんてたかが知れてる。で?まだあの件でうじうじしてんのか。顔に『悩んでます』って書いてあるぞ」
「うるさいわね。あなたには関係ないでしょ」
「関係なくはないさ。幼馴染の不幸は最高の娯楽って言うしな」
「……最悪」

軽口を叩きながらも、私の隣に立つ彼の目は真剣そのものだった。

「王子様の言い分は聞いたのか?」
「……うん。ちゃんと話したわ」
「それで?」
「彼女――リディアさんはただのクラスメイトだって。数学を教えてもらってただけだって……私に誤解させるような態度を取ったのは、軽率だったって謝ってくれた」

レオは私の言葉を聞くと、かじりかけのパンを口に放り込み、ふんと鼻を鳴らした。

「へえ。そりゃあご立派な言い訳で」
「言い訳なんかじゃない!」
「じゃあ、お前はそれを百パーセント信じてるのか?」
「……それは……」

言葉に詰まる。
信じたい。
……でも、心のどこかで引っかかっている。
私の反応を見たレオは愉快そうに、にやりと口角を上げた。

「なあ、エリス。そんなに気になるなら、いっそ調べてみればいいだろ」
「調べるって……何をよ」
「決まってる。お前の王子様とそのリディア・クロフォード嬢のこと。放課後とか、二人がどこで何をしてるのか。俺が手伝ってやってもいいぜ」
「なっ……!?」

思いがけない提案。

「ど、どうしてそんなこと……」
「面白そうだからな」

彼は悪戯っぽく片目をつぶる。

「人の心を弄んでるの!?あなたって本当に……!」
「弄んでるのはどっちかね。なあ、本当のことを知るのが怖いだけじゃないのか?」

レオの言葉が胸に突き刺さる。
怖い。もしアルバートの言葉が嘘だったら?
もし二人が私の知らない関係だったら?
その先を考えるだけで……。
私はぶんぶんと首を横に振った。

「いらないわ、そんなこと……!」
「強がんなくていいぜ」
「強がってなんかない!私はア、アルバートを信じるって決めたの。彼がそう言うなら、それが本当のことなんだから!あなたに手伝ってもらうことなんて何もない!」

それは自分自身に言い聞かせるための悲鳴にも似た叫びだった。
私の必死な様子をレオは黙って見ていた。
やがて、彼は「あっそ」と短く呟くと肩をすくめた。

「まあ、お前が決めることだ。せいぜいお姫様ごっこを楽しめよ」

そう言い捨てると、レオは私に背を向けて屋上のドアへと歩いていく。

「忠告しといてやる。夢から覚めた時に泣きついてきても慰めてやんねーぞ」

バタンと無機質な音を立ててドアが閉まる。
一人残された屋上に、また静寂が戻ってきた。
ぎゅっと唇を噛みしめる。
「信じる」と口にした言葉が虚しく空に響いた気がした。
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