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5.書庫での密談
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授業が終わり掃除の時間。
掃除当番だったアルバートとリディアは埃っぽい書庫の奥で二人きりになった。
高い本棚が迷路のように立ち並び、他の生徒たちのざわめきもここまでは届かない。
リディアが黙々と本を布で拭いていると、アルバートが不意に手を止め、心配そうな声で彼女に話しかけた。
「実は、少し君に聞いてほしいことがあるんだ。相談、というか……」
「私に?ええ、もちろん構わないわ。どうかなさったの?」
「この間のこと…中庭で君といたところをエリスに見られていたみたいなんだ」
「えっ……! ご、ごめん…!私のせいでエリスさんを怒らせちゃったんだ…?」
「いや、君は謝らなくていいんだ。でも…そうなんだ。問い詰められちゃって……。君とはどういう関係なのか、なぜあんなに親しげにしていたのかって。まるで尋問みたいだったよ」
アルバートは困ったように苦笑いした。
「彼女、少し思い込みが激しいところがあって…。ただ数学を教えてもらっていただけなのに、君と僕が特別な関係だと誤解してしまったんだ」
「私がアルバートに迷惑を…」
「迷惑だなんて思ってないさ。ただ、エリスは聞く耳を持ってくれなくてね。『リディアがあなたに気があるに違いない』なんて言うんだ」
アルバートの言葉にリディアは俯いてぎゅっと唇を噛んだ。
「アルバートのことがそれだけ好きなのよ、きっと」
リディアが慰めるように言うとアルバートは首を振った。
「愛情だとしても少し息が詰まる。僕は束縛されるのは苦手でね。自由でいたい」
「……」
「正直に言うと最近少し疲れていたんだ。彼女の嫉妬は時々僕を息苦しくさせる。君のような穏やかな人と話している時が一番心が安らぐって気づかされた」
「……!私なんてそんなこと…」
「本心さ。だから、こんなことで君まで傷つけてしまったらと思うと……僕は自分が許せない」
そう言ってうなだれるアルバートにリディアは慌てて首を横に振った。
「だめだよ、アルバート。自分のこと責めないで。悪いのは私だから。あんな場所じゃなくてもっと人がいるところで話せばよかった…」
「君は本当に優しいな……」
アルバートはそう言うと、リディアの手にそっと自分の手を重ねた。
リディアが手を引こうとするのを、彼は逃がさないように力強く握りしめる。
「君だけだよ、こんな僕をわかってくれるのは」
リディアは言葉を失う。
アルバートは悲しげに瞳を伏せた。
「もしかしたら……僕たち長くはないのかもしれない。こんな風にお互いを信じられない関係はもう限界かもしれない」
「アルバート……」
「ごめん、こんな重い話をして。忘れてくれ」
「いいえ。忘れたりしないわ」
リディアは彼の手の上にそっと自分の手を重ねた。
「私でよければいつでも話を聞くから。アルバートの心が少しでも軽くなるのなら……。私はいつだってあなたの味方」
その言葉にアランは満足そうに微笑んだ。
遠くでは掃除の終わりを告げるチャイムの音が響いていた。
掃除当番だったアルバートとリディアは埃っぽい書庫の奥で二人きりになった。
高い本棚が迷路のように立ち並び、他の生徒たちのざわめきもここまでは届かない。
リディアが黙々と本を布で拭いていると、アルバートが不意に手を止め、心配そうな声で彼女に話しかけた。
「実は、少し君に聞いてほしいことがあるんだ。相談、というか……」
「私に?ええ、もちろん構わないわ。どうかなさったの?」
「この間のこと…中庭で君といたところをエリスに見られていたみたいなんだ」
「えっ……! ご、ごめん…!私のせいでエリスさんを怒らせちゃったんだ…?」
「いや、君は謝らなくていいんだ。でも…そうなんだ。問い詰められちゃって……。君とはどういう関係なのか、なぜあんなに親しげにしていたのかって。まるで尋問みたいだったよ」
アルバートは困ったように苦笑いした。
「彼女、少し思い込みが激しいところがあって…。ただ数学を教えてもらっていただけなのに、君と僕が特別な関係だと誤解してしまったんだ」
「私がアルバートに迷惑を…」
「迷惑だなんて思ってないさ。ただ、エリスは聞く耳を持ってくれなくてね。『リディアがあなたに気があるに違いない』なんて言うんだ」
アルバートの言葉にリディアは俯いてぎゅっと唇を噛んだ。
「アルバートのことがそれだけ好きなのよ、きっと」
リディアが慰めるように言うとアルバートは首を振った。
「愛情だとしても少し息が詰まる。僕は束縛されるのは苦手でね。自由でいたい」
「……」
「正直に言うと最近少し疲れていたんだ。彼女の嫉妬は時々僕を息苦しくさせる。君のような穏やかな人と話している時が一番心が安らぐって気づかされた」
「……!私なんてそんなこと…」
「本心さ。だから、こんなことで君まで傷つけてしまったらと思うと……僕は自分が許せない」
そう言ってうなだれるアルバートにリディアは慌てて首を横に振った。
「だめだよ、アルバート。自分のこと責めないで。悪いのは私だから。あんな場所じゃなくてもっと人がいるところで話せばよかった…」
「君は本当に優しいな……」
アルバートはそう言うと、リディアの手にそっと自分の手を重ねた。
リディアが手を引こうとするのを、彼は逃がさないように力強く握りしめる。
「君だけだよ、こんな僕をわかってくれるのは」
リディアは言葉を失う。
アルバートは悲しげに瞳を伏せた。
「もしかしたら……僕たち長くはないのかもしれない。こんな風にお互いを信じられない関係はもう限界かもしれない」
「アルバート……」
「ごめん、こんな重い話をして。忘れてくれ」
「いいえ。忘れたりしないわ」
リディアは彼の手の上にそっと自分の手を重ねた。
「私でよければいつでも話を聞くから。アルバートの心が少しでも軽くなるのなら……。私はいつだってあなたの味方」
その言葉にアランは満足そうに微笑んだ。
遠くでは掃除の終わりを告げるチャイムの音が響いていた。
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