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6.勝手に調査
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「あなたに手伝ってもらうことなんて何もない!」
レオにそう言い放ったものの、心は少しも晴れなかった。
数日たった朝の昇降口。
靴を履き替えようとした私の目に、自分のローファーの中に見慣れない小さな紙片が収まっているのが見えた。不審に思いながらそれを広げると、走り書きのような文字が並んでいた。
『北の公園にて報告あり』
心臓がどきりと跳ねる。
この乱暴なんだけど、どこか整った筆跡には見覚えがあった。
「……レオ」
思わず声が漏れる。
人の話を聞かないにもほどがある。
行くもんですか。
報告なんて聞きたいわけがない。
……そう自分に言い聞かせたはずなのに、私の足は意思に反して北の公園へと向かうことになる。
***
夕暮れに染まる公園のブランコのそばにあるベンチに彼はいた。腕を組み、つまらなそうに足を揺らしている。
私が近づいていくのに気づくと、レオは片眉を上げてにやりと笑った。
「よお。思ったより早かったな」
「どういうつもりよ、これ! あなたって本当に人の話を聞かないのね!」
握りしめていた紙を彼に突きつけた。
「言ったはずよ! いらないって! 余計なことしないでって!」
「お前が断ろうが俺の勝手だろ。俺が面白そうだからやってるだけだって言ったはずだ。で、聞くのか? それとも聞かずに王子様とのおとぎ話を続けるのか?」
「……最低よ」
「知ってる。で、どうなんだ?」
悔しいけれど、ここまで来てしまったらもう後には引けなかった。
聞きたい気持ちを抑えられなかった。
黙り込んでいると、レオはそれを肯定と受け取ったらしい。
「まず、あいつが数学の成績優秀者ってのは本当だ。教師にも一目置かれてるらしい」
「……! ほら、やっぱり!アルバートの言った通りじゃない!ただ勉強を教えてもらってただけなのよ!」
少しだけ胸をなでおろす。
アルバートが嘘をついていなかったという事実に安堵する私を見て、レオはわざとらしく足先で地面を小突いた。
「ああ、そこ『だけ』はな。だが、もっと面白いことがわかったぜ」
「面白いこと……?」
「あの女、ひと月くらい前に付き合ってた男と別れたばかりらしい」
「え……?」
「なんでも相手の浮気が原因だったとか。そりゃあ酷いフラれ方をしたって噂だ。だから今は傷心中のフリーってわけ」
「そ、そんなプライベートなことまで……どうしてあなたが知ってるのよ!」
「俺の情報網をなめるなよ。噂好きの女子にカマをかければいくらでも出てくる」
「……そ、それが何だって言うの。別れたのならアルバートと親しくしたって別に……」
「別になんだ?」
レオが私の顔を覗き込む。
強気に言い返そうとしたけれど、喉の奥で言葉が詰まった。
傷ついた女の子。
誰にでも優しいアルバート。
その二人が木陰で手を重ね合わせていた光景がまざまざと頭に浮かぶ。
「……傷ついた女に優しい男。ありがちなパターンだな」
「やめて……!」
「お前の王子様は『誰にでも優しい』んだろ? 特にか弱くて守ってやりたくなるような女にはその優しさも格別なんじゃないのかねえ」
「アルバートはそんな人じゃない!」
「そうだといいな」
レオはふっと真顔になると私から視線を外した。彼の表情から悪戯っぽい笑みは完全に消えている。
その真剣な眼差しがただ私を傷つけたいわけではないのだと物語っていた。
レオにそう言い放ったものの、心は少しも晴れなかった。
数日たった朝の昇降口。
靴を履き替えようとした私の目に、自分のローファーの中に見慣れない小さな紙片が収まっているのが見えた。不審に思いながらそれを広げると、走り書きのような文字が並んでいた。
『北の公園にて報告あり』
心臓がどきりと跳ねる。
この乱暴なんだけど、どこか整った筆跡には見覚えがあった。
「……レオ」
思わず声が漏れる。
人の話を聞かないにもほどがある。
行くもんですか。
報告なんて聞きたいわけがない。
……そう自分に言い聞かせたはずなのに、私の足は意思に反して北の公園へと向かうことになる。
***
夕暮れに染まる公園のブランコのそばにあるベンチに彼はいた。腕を組み、つまらなそうに足を揺らしている。
私が近づいていくのに気づくと、レオは片眉を上げてにやりと笑った。
「よお。思ったより早かったな」
「どういうつもりよ、これ! あなたって本当に人の話を聞かないのね!」
握りしめていた紙を彼に突きつけた。
「言ったはずよ! いらないって! 余計なことしないでって!」
「お前が断ろうが俺の勝手だろ。俺が面白そうだからやってるだけだって言ったはずだ。で、聞くのか? それとも聞かずに王子様とのおとぎ話を続けるのか?」
「……最低よ」
「知ってる。で、どうなんだ?」
悔しいけれど、ここまで来てしまったらもう後には引けなかった。
聞きたい気持ちを抑えられなかった。
黙り込んでいると、レオはそれを肯定と受け取ったらしい。
「まず、あいつが数学の成績優秀者ってのは本当だ。教師にも一目置かれてるらしい」
「……! ほら、やっぱり!アルバートの言った通りじゃない!ただ勉強を教えてもらってただけなのよ!」
少しだけ胸をなでおろす。
アルバートが嘘をついていなかったという事実に安堵する私を見て、レオはわざとらしく足先で地面を小突いた。
「ああ、そこ『だけ』はな。だが、もっと面白いことがわかったぜ」
「面白いこと……?」
「あの女、ひと月くらい前に付き合ってた男と別れたばかりらしい」
「え……?」
「なんでも相手の浮気が原因だったとか。そりゃあ酷いフラれ方をしたって噂だ。だから今は傷心中のフリーってわけ」
「そ、そんなプライベートなことまで……どうしてあなたが知ってるのよ!」
「俺の情報網をなめるなよ。噂好きの女子にカマをかければいくらでも出てくる」
「……そ、それが何だって言うの。別れたのならアルバートと親しくしたって別に……」
「別になんだ?」
レオが私の顔を覗き込む。
強気に言い返そうとしたけれど、喉の奥で言葉が詰まった。
傷ついた女の子。
誰にでも優しいアルバート。
その二人が木陰で手を重ね合わせていた光景がまざまざと頭に浮かぶ。
「……傷ついた女に優しい男。ありがちなパターンだな」
「やめて……!」
「お前の王子様は『誰にでも優しい』んだろ? 特にか弱くて守ってやりたくなるような女にはその優しさも格別なんじゃないのかねえ」
「アルバートはそんな人じゃない!」
「そうだといいな」
レオはふっと真顔になると私から視線を外した。彼の表情から悪戯っぽい笑みは完全に消えている。
その真剣な眼差しがただ私を傷つけたいわけではないのだと物語っていた。
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