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7.猫の手当て
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私が俯いているとレオは
「……まあ、お前が信じたいならそれでいいんじゃねえの」
顔を上げるとレオはいつの間にか私から数歩離れた場所に立っていた。
夕日を背にした彼の表情はよく見えない。
彼は公園の奥の茂みの方へと歩いていってしまう。私は慌てて後を追った。
「ちょっと待ちなさいよ!話はまだ……!」
茂みの影に回り込むと彼の姿が消えていた。
辺りを見回しても、どこにもいない。
「レオ?どこ行ったのよ、もう……!」
むっとしながら彼の名前を呼ぶと、茂みの裏手からガサガサと物音がした。
そっと覗き込むと、そこにレオがいた。
隅の方で地面にしゃがみ込んでいる。
「こんな所にいたの……一体何を……」
彼の足元には一匹のぶち猫が怯えたように体を丸めていた。
その前足からは血が滲んでいる。
「猫……?怪我してるの?」
「……うるせえな。声がでかい。逃げんだろ」
レオは私を睨みつけもせず小さな声で言うと、ポケットから取り出したハンカチでそっと猫の足の傷口を拭っていた。
いつもは乱暴なその手が今は丁寧に動いている。
「ご、ごめんなさい……。何か手伝えることはある?」
「……別にねえよ」
「でも……そうだ、私のハンカチも使って」
差し出した私のハンカチをレオはちらりと見ただけだったが、何も言わずに受け取った。
そして自分の救急セットから消毒液を取り出すと、手際よく手当てを始めた。
「どうして救急セットなんて持ち歩いているのよ?」
「……お前みたいなドジがいつどこで転んでもいいようにな」
「失礼ね! 私はそんなにドジじゃないわ!」
「事実だろ。……ほら声がでかい。こいつが怖がる」
私は彼の隣にそっとしゃがみ込む。
「慣れてるのね、そういうの」
「……まあな」
短い会話。
ただ黙々と猫の治療に集中している。
細められた瞳が傷ついた小さな命にだけ向けられている。
思わず彼の横顔を見つめていた。
人をからかう時の意地悪な笑みじゃない。
アルバートの誰にでも向けられる笑顔とも違う。不愛想なんだけど優しさを秘めた顔。
やがて手当てが終わると、レオはそっと猫から手を離した。
ぶち猫は用心深く立ち上がると感謝する素振りも見せず、くるりと背を向けて一目散に茂みの奥へと走り去ってしまった。
「あっ……行っちゃった」
「……別に懐かれるためにやってやったんじゃねーし」
レオはぽつりとそう呟くと、ゆっくりと立ち上がりズボンの土を払った。
「……これ、洗って返す」
「……いいよ別に」
「いいから。……俺も帰るわ」
彼はそれだけ言うと、今度こそ本当に私に背を向けて公園の出口へと歩き出してしまった。
その後ろ姿に慌てて声をかける。
「レオ!あの……今日のこと……」
「……勘違いすんな。面白そうだからやっただけだ」
素っ気ない声だけが夕暮れの空気に溶けていく。
あっという間に小さくなっていく彼の背中をただ見送ることしかできなかった。
「……まあ、お前が信じたいならそれでいいんじゃねえの」
顔を上げるとレオはいつの間にか私から数歩離れた場所に立っていた。
夕日を背にした彼の表情はよく見えない。
彼は公園の奥の茂みの方へと歩いていってしまう。私は慌てて後を追った。
「ちょっと待ちなさいよ!話はまだ……!」
茂みの影に回り込むと彼の姿が消えていた。
辺りを見回しても、どこにもいない。
「レオ?どこ行ったのよ、もう……!」
むっとしながら彼の名前を呼ぶと、茂みの裏手からガサガサと物音がした。
そっと覗き込むと、そこにレオがいた。
隅の方で地面にしゃがみ込んでいる。
「こんな所にいたの……一体何を……」
彼の足元には一匹のぶち猫が怯えたように体を丸めていた。
その前足からは血が滲んでいる。
「猫……?怪我してるの?」
「……うるせえな。声がでかい。逃げんだろ」
レオは私を睨みつけもせず小さな声で言うと、ポケットから取り出したハンカチでそっと猫の足の傷口を拭っていた。
いつもは乱暴なその手が今は丁寧に動いている。
「ご、ごめんなさい……。何か手伝えることはある?」
「……別にねえよ」
「でも……そうだ、私のハンカチも使って」
差し出した私のハンカチをレオはちらりと見ただけだったが、何も言わずに受け取った。
そして自分の救急セットから消毒液を取り出すと、手際よく手当てを始めた。
「どうして救急セットなんて持ち歩いているのよ?」
「……お前みたいなドジがいつどこで転んでもいいようにな」
「失礼ね! 私はそんなにドジじゃないわ!」
「事実だろ。……ほら声がでかい。こいつが怖がる」
私は彼の隣にそっとしゃがみ込む。
「慣れてるのね、そういうの」
「……まあな」
短い会話。
ただ黙々と猫の治療に集中している。
細められた瞳が傷ついた小さな命にだけ向けられている。
思わず彼の横顔を見つめていた。
人をからかう時の意地悪な笑みじゃない。
アルバートの誰にでも向けられる笑顔とも違う。不愛想なんだけど優しさを秘めた顔。
やがて手当てが終わると、レオはそっと猫から手を離した。
ぶち猫は用心深く立ち上がると感謝する素振りも見せず、くるりと背を向けて一目散に茂みの奥へと走り去ってしまった。
「あっ……行っちゃった」
「……別に懐かれるためにやってやったんじゃねーし」
レオはぽつりとそう呟くと、ゆっくりと立ち上がりズボンの土を払った。
「……これ、洗って返す」
「……いいよ別に」
「いいから。……俺も帰るわ」
彼はそれだけ言うと、今度こそ本当に私に背を向けて公園の出口へと歩き出してしまった。
その後ろ姿に慌てて声をかける。
「レオ!あの……今日のこと……」
「……勘違いすんな。面白そうだからやっただけだ」
素っ気ない声だけが夕暮れの空気に溶けていく。
あっという間に小さくなっていく彼の背中をただ見送ることしかできなかった。
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