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10.もう少しだけ
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エリスの姿が見えなくなり、二人きりの帰り道になった途端、アルバートはわざとらしくふうと息をついた。
「ふう……。やっと二人になれた」
「アルバート……?」
「どうだった? エリスのこと」
「とても素敵な人だと思った。芯が強そうで……あなたにぴったりよ、アルバート」
リディアが微笑むと、アルバートはつまらなそうに唇を尖らせた。
「そうは見えなかったけどな、僕には」
「え?」
「君も気づいてただろ? あの冷たい視線。僕と君が話している時、ずっと監視されてるみたいだった。あれじゃあ、心から楽しむことなんてできないよ」
「そ、そんなことないわ! きっと、私のことをまだよく知らないから……いきなり私が現れたせいよ。エリスさんは何も悪くないわ」
「君はいつもそうやって自分のことより相手のことを考える。本当に思いやりがあるよ」
アルバートはリディアの言葉を遮ると彼女を見つめた。
「悪いのは君じゃない。僕を信じきれないエリスの方さ。僕があれだけ『何もない』って説明したのに、今日の彼女の態度はどうだ? まるで犯罪者を見るような目だった。潔白だって証明するために、わざわざ君にまで協力してもらったのに。結局、彼女の疑いは深まっただけみたいだ」
「そんなこと……!」
「本当さ。愛情と嫉妬は違う。彼女のはもうただの束縛だ。僕が誰と話そうとどこへ行こうと、いちいち詮索されて……息が詰まりそうになる」
アルバートは苦しげに自分の胸元を押さえた。その悲痛な表情にリディアはかける言葉を失ってしまう。
「……ごめん。君にこんな話をするつもりじゃなかったんだ」
「ううん。あなたがそんなに苦しんでいたなんて……知らなかったから。私、何もできなくて……ごめんなさい」
「謝らないでくれ。君が隣にいてくれるだけで救われるんだから。今日のデートだって君がいてくれたから、何とか笑顔でいられたんだ」
彼の慰めるような声が夕暮れの空気に広がっていく。
「……君のような穏やかで優しい人といる時間が今の僕には一番必要なのかもしれないな」
「アルバート……」
「なあ、リディア」
アルバートは立ち止まると、彼女の目をまっすぐに見つめた。
「このまま家に帰るのは少し名残惜しいな。もう少しだけ僕に時間をくれないか? すぐそこのコーヒーショップで今日の口直しをさせてほしいんだ。君さえよければだけど」
「で、でも……エリスさんに悪いわ。私がアルバートの時間をこれ以上奪うわけには……」
「大丈夫さ。これは君への『お礼』なんだから。僕の我儘に一日付き合ってくれた心優しい君へのね。……ダメかな?」
「……わかったわ。少しだけなら」
「ありがとう、リディア! 君の優しさにまた惹かれてしまうよ」
アルバートは心底嬉しそうに声を弾ませると、ごく自然にリディアの肩に手を回し、店の方へと優しく促した。二人の影が街灯の灯りに長く伸びて、ゆっくりと一つに重なっていく―――――。
「ふう……。やっと二人になれた」
「アルバート……?」
「どうだった? エリスのこと」
「とても素敵な人だと思った。芯が強そうで……あなたにぴったりよ、アルバート」
リディアが微笑むと、アルバートはつまらなそうに唇を尖らせた。
「そうは見えなかったけどな、僕には」
「え?」
「君も気づいてただろ? あの冷たい視線。僕と君が話している時、ずっと監視されてるみたいだった。あれじゃあ、心から楽しむことなんてできないよ」
「そ、そんなことないわ! きっと、私のことをまだよく知らないから……いきなり私が現れたせいよ。エリスさんは何も悪くないわ」
「君はいつもそうやって自分のことより相手のことを考える。本当に思いやりがあるよ」
アルバートはリディアの言葉を遮ると彼女を見つめた。
「悪いのは君じゃない。僕を信じきれないエリスの方さ。僕があれだけ『何もない』って説明したのに、今日の彼女の態度はどうだ? まるで犯罪者を見るような目だった。潔白だって証明するために、わざわざ君にまで協力してもらったのに。結局、彼女の疑いは深まっただけみたいだ」
「そんなこと……!」
「本当さ。愛情と嫉妬は違う。彼女のはもうただの束縛だ。僕が誰と話そうとどこへ行こうと、いちいち詮索されて……息が詰まりそうになる」
アルバートは苦しげに自分の胸元を押さえた。その悲痛な表情にリディアはかける言葉を失ってしまう。
「……ごめん。君にこんな話をするつもりじゃなかったんだ」
「ううん。あなたがそんなに苦しんでいたなんて……知らなかったから。私、何もできなくて……ごめんなさい」
「謝らないでくれ。君が隣にいてくれるだけで救われるんだから。今日のデートだって君がいてくれたから、何とか笑顔でいられたんだ」
彼の慰めるような声が夕暮れの空気に広がっていく。
「……君のような穏やかで優しい人といる時間が今の僕には一番必要なのかもしれないな」
「アルバート……」
「なあ、リディア」
アルバートは立ち止まると、彼女の目をまっすぐに見つめた。
「このまま家に帰るのは少し名残惜しいな。もう少しだけ僕に時間をくれないか? すぐそこのコーヒーショップで今日の口直しをさせてほしいんだ。君さえよければだけど」
「で、でも……エリスさんに悪いわ。私がアルバートの時間をこれ以上奪うわけには……」
「大丈夫さ。これは君への『お礼』なんだから。僕の我儘に一日付き合ってくれた心優しい君へのね。……ダメかな?」
「……わかったわ。少しだけなら」
「ありがとう、リディア! 君の優しさにまた惹かれてしまうよ」
アルバートは心底嬉しそうに声を弾ませると、ごく自然にリディアの肩に手を回し、店の方へと優しく促した。二人の影が街灯の灯りに長く伸びて、ゆっくりと一つに重なっていく―――――。
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