【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

文字の大きさ
12 / 37

12.放課後の教室

しおりを挟む
生徒たちの喧騒が消え去り、西日だけが差し込む放課後の教室はしんと静まり返っていた。私は自分の席に座ったまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

「よお。まだいたのか、こんな所で油売って」
「レオ……。どうしてまだ学校に?」

教室の入り口には鞄を肩にかけたレオが退屈そうな表情で立っていた。

「まあな。で? お前今日一日、ずっと浮かない顔してたろ。心ここにあらずって感じで」
「そ、そんなことない! いつも通りよ! ちょっと考え事をしてただけ!」
「その『いつも通り』が全然いつも通りじゃねえって言ってんだよ」

レオはずかずかと教室に入ってくると、私の前の席の椅子を引いてどかりと座った。覗き込んでくる視線から逃れるように顔を背ける。

「……あなたには関係ないでしょ」
「関係なくはないって言ったはずだ。幼馴染の不幸は最高の娯楽……と言いたいところだが」
「……何よ」
「今日のお前の顔は娯楽にするにはちと痛々しすぎる」

彼の言葉が胸の奥で波紋のように広がった。
強がっていることなんて全部お見通しなのかもしれない。
黙り込んだ私を見て、レオは静かな声で言った。

「……さっき、見たんだよ」
「なにを……?」
「お前の王子様とリディア・クロフォードが二人で楽しそうにどこかへ行くのをな」

心臓が氷水に浸されたように冷たくなる。
彼の言葉が現実を容赦なく突きつけてきた。

「ま、また数学を教えてもらってるだけよ! きっと、そういう約束だったのよ……!」
「へえ。こんな時間の、人のいない校舎の裏手に向かって歩いて行ってたが? 随分と熱心な勉強会だな」
「校舎の……裏手……?」
「ああ。中庭の奥を抜けて、今はほとんど使われていない旧理科準備室の方だ。あそこなら誰にも邪魔されずに二人きりになれるからな」

その光景を想像してしまい、目の前が暗くなる。そんな私をレオは苛立たしげに見つめると、勢いよく立ち上がり私の腕を強く掴んだ。

「お前がそんな顔してんのを見てるのは気分が悪い。自分の目で確かめに行くぞ」

彼の目は冗談を言っている色ではなかった。
どこか怒っているような、それでいて心配してくれているような―――。

「……いやよ!そんなこと、できるわけないじゃない!」
「なんでだよ」
「覗き見みたいな真似はしたくない!もし、アルバートに見つかったら……なんて言えばいいの!?あなたのこと、信じてませんでしたって言うの!?」
「じゃあ信じてるのかよ!心の底から!」
「……信じてるわ!私は……信じてる……!」

絞り出した声は自分でも驚くほど震えていた。レオはその震えを聞き逃さなかった。

「震えてるじゃねえか。なあエリス、もういいだろ。強がるのはやめろ。本当は怖いんだろ?不安でどうしようもないんだろ?」
「……っ、う……」
「一人で抱え込むな。俺が一緒にいてやるから」

腕を掴む彼の力は強いけれど、不思議と痛みはなかった。その言葉が固く閉ざされていた心の扉をそっと開いていった。

「……ふふ、馬鹿みたい」
彼はぶっきらぼうに「馬鹿でいいんだよ」と呟いた。
「行くぞ」

そう言うとレオは私の腕をぐいと引いた。
一瞬だけ抵抗するように足を踏ん張ったが、すぐにその力を抜いた。
もう彼に逆らう気力も、真実から目を逸らし続ける忍耐も自分には残っていなかったから。

「……うん」

レオに引かれるまま、夕焼けに染まる廊下を歩き出す。握られた腕から伝わる彼の体温だけが今の唯一の現実だった。
これから自分は何を見ることになるのだろう。私の胸中にはどうしようもないほどの不安の嵐が激しく吹き荒れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アイラ・ミローレンス・ファンタナルは虚弱な体質で幼い頃から体調を崩しやすく常に病室のベットの上にいる生活だった。 学園に入学してもアイラ令嬢の体は病気がちで異性とも深く付き合うことはなく寂しい思いで日々を過ごす。 そんな時、王太子ガブリエル・アレクフィナール・ワークス殿下と運命的な出会いをして一目惚れして恋に落ちる。 しかし自分の体のことを気にして後ろめたさを感じているアイラ令嬢は告白できずにいた。 出会ってから数ヶ月後、二人は付き合うことになったが、信頼していたガブリエル殿下と親友の裏切りを知って絶望する―― その後アイラ令嬢は命の炎が燃え尽きる。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。 アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。 全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...