【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

文字の大きさ
13 / 37

13.猫との再会

しおりを挟む
レオに腕を引かれるまま、私たちは人気のない校舎の裏手へと歩いていた。

「本当に……この先にいるのかしら」
「さあな。だが火のない所に煙は立たねえだろ」
「もし、誰もいなかったら……あなた、どうしてくれるのよ」
「そん時はそん時だ。勘違いだったって笑ってやる」

軽口とは裏腹に、私を掴むレオの手には力がこもっていた。やがて、蔦の絡まる旧理科準備室の前にたどり着いた。
窓に明かりはなく、人の気配は全くしない。
静寂だけが私たちを包んでいた。

「……誰もいないじゃない」

私は安堵と自己嫌悪が入り混じった声で呟いた。

「ほら、やっぱりあなたの見間違いよ!アルバートはそんなことする人じゃないわ!」
「……チッ。あっちの方かもしれねえ」
「もういい! もう帰りましょう! こんなことしてるなんてアルバートに知られたら……私、最低よ。恋人を疑って、こんな……!」

レオを振り払い、踵を返そうとしたその時。

「にゃあ」

足元から猫の鳴き声が聞こえた。
見ると、この間公園で手当てしたあのぶち猫が私の足にすり寄ってきたのだ。

「あ……! あなた、この間の……! こんな所にいたのね! よかった、傷はもう痛まない?」

私が優しく声をかけると、猫は興味なさそうに尻尾をぱたりと揺らしただけだった。

「ブッチ!」
「……は? ブッチ……だと? ブチ柄だからブッチかよ。お前のそのネーミングセンス、壊滅的だな」
「い、いいでしょ別に! 可愛くて覚えやすいじゃない!」
「初等部生でももうちょい捻るぞ」
「うるさいわね!」

突然、ブッチはくるりと向きを変え、数歩先でこちらを振り返る。そしてまた「にゃあ」と鳴くと、使われなくなった空き教室の方へととことこ歩いて行った。

ブッチは教室の古びた扉の前でぴたりと足を止め、ちょこんと座り込んだ。まるで「ここだよ」とでも言うように。
その時、教室の窓から微かな光が漏れていることにレオが気づいた。

「……おい、静かにしろ」
「え?」

レオは素早く私の口を右手で塞ぐと、左手の人差し指を自分の唇に当てた。そして、促すように背中を押し、音を立てないようにゆっくりと窓際へとにじり寄っていく。心臓が早鐘を打つ。嫌な予感が全身を駆け巡った。
レオは汚れた窓ガラスをそっと指で拭うと、中の様子を窺った。そして、私の方を無言で振り返り、顎で「見ろ」と示す。
震える足で一歩前に出て、恐る恐るその窓から中を覗き込んだ。
教室の真ん中に置かれた一台のピアノ。その椅子に二つの影がぴったりと寄り添っていた。
――――アルバートとリディア。
次の瞬間、私の目に飛び込んできたのは、悪夢としか思えない衝撃的な光景だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

心から信頼していた婚約者と幼馴染の親友に裏切られて失望する〜令嬢はあの世に旅立ち王太子殿下は罪の意識に悩まされる

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アイラ・ミローレンス・ファンタナルは虚弱な体質で幼い頃から体調を崩しやすく常に病室のベットの上にいる生活だった。 学園に入学してもアイラ令嬢の体は病気がちで異性とも深く付き合うことはなく寂しい思いで日々を過ごす。 そんな時、王太子ガブリエル・アレクフィナール・ワークス殿下と運命的な出会いをして一目惚れして恋に落ちる。 しかし自分の体のことを気にして後ろめたさを感じているアイラ令嬢は告白できずにいた。 出会ってから数ヶ月後、二人は付き合うことになったが、信頼していたガブリエル殿下と親友の裏切りを知って絶望する―― その後アイラ令嬢は命の炎が燃え尽きる。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi
恋愛
婚約者ウィルとその幼馴染ベティに罠にはめられ、湖へ沈められた伯爵令嬢アミアン。一命を取り留め、公女として生まれ変わった彼女が見たのは、裏切り者の幸せな家庭だった。 アミアンは絶望を乗り越え、第二の人生を歩む決意をする。いまだ国に影響力を持つ先の王弟の大公女として、輝くほど磨き上げられていったアミアンに再会したウィルは激しく後悔するが、今更遅かった。 全ての記憶を取り戻したアミアンは、ついに二人の悪事を断罪する。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...