【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

文字の大きさ
14 / 37

14.密かな情事

しおりを挟む
夕闇に沈む教室の中。漏れ聞こえてくるのは二人の声。

「ん……アルバート……、こんな所で……誰か来たら……」
「大丈夫だよ、リディア。ここには誰も来ないから」

アルバートの穏やかな声。
いつもの優しさとは違う熱を帯びた響きがあった。私は息を殺し、目に映る光景を理解しようと必死だった。
ピアノの椅子に腰掛けたアルバート。
彼のズボンは足首まで下ろされ、下半身が無防備に晒されている。そしてその前にひざまずき、彼の局部に顔を埋めているのはリディアだった。
彼女の髪が彼の動きに合わせて小さく揺れている。
アルバートの喉から恍惚が漏れた。

「っ……ぁ……」

隣にいるレオでさえその光景に息を呑み、言葉を失っている。
開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。

「リディアは本当に可愛いな。……それにすごく上手だ」

アルバートが恍惚とした表情でリディアの髪を優しく撫でる。

「エリスとは全然違うよ。彼女はどこかぎこちなくて……正直つまらない。君みたいに素直に求めてくれるのが一番だよ」
「そんなこと……私なんて……」
「本心さ。君だけだよ、僕をこんなに癒してくれるのは」

甘い言葉。
それはかつて私だけに向けられていたはずのもの。違う。こんな下卑た囁きは私の知っているアルバートじゃない。

「ひっ……ぅ……あ……!」

耐えきれず、私はしゃくりあげるような声が漏れた。ハッとしたレオが慌てて私の口を強く塞ぐがもう遅い。
ガタッと教室の中から物音がした。

「……今の音、なんだ?」
「気のせいじゃない……? それよりアルバート……もっと……」

二人の会話が途切れる。
私の視界は涙でぐにゃりと歪み、何もかもが滲んで見えた。
胸元のネックレスが私の呼吸を妨げる。
信じてた。
信じたかった。
アルバートの言葉も、笑顔も、約束も、全部。それがこんな形で打ち砕かれるなんて。
顔面蒼白になり、がくがくと震えだす私を見て、レオの顔からいつもの挑発的な笑みが完全に消え失せていた。彼はただ、目を疑うような状況に直面し動けずにいる。
足元ではブッチだけが何も変わらない様子で静かに尻尾を揺らし、まるで映画でも観るかのように冷静に事の成り行きを見守っていた。

「……うそ……なんで……」

絞り出した声はもう誰にも届かない。
足から力が抜け、私はその場に崩れ落ちそうになった。

「おい、エリス!しっかりしろ!」

レオが咄嗟に私の体を強く抱きとめる。
彼の腕の中で私の意識は朦朧となる。

「行くぞ、エリス!」 

レオは返事のない私を半ば抱きかかえるようにしてその場を離れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

オネエな幼馴染と男嫌いな私

麻竹
恋愛
男嫌いな侯爵家の御令嬢にはオネエの幼馴染がいました。しかし実は侯爵令嬢が男嫌いになったのは、この幼馴染のせいでした。物心つく頃から一緒にいた幼馴染は事ある毎に侯爵令嬢に嫌がらせをしてきます。その悪戯も洒落にならないような悪戯ばかりで毎日命がけ。そのせいで男嫌いになってしまった侯爵令嬢。「あいつのせいで男が苦手になったのに、なんであいつはオカマになってるのよ!!」と大人になって、あっさりオカマになってしまった幼馴染に憤慨する侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢に今日も幼馴染はちょっかいをかけに来るのでした。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

好きじゃない人と結婚した「愛がなくても幸せになれると知った」プロポーズは「君は家にいるだけで何もしなくてもいい」

佐藤 美奈
恋愛
好きじゃない人と結婚した。子爵令嬢アイラは公爵家の令息ロバートと結婚した。そんなに好きじゃないけど両親に言われて会って見合いして結婚した。 「結婚してほしい。君は家にいるだけで何もしなくてもいいから」と言われてアイラは結婚を決めた。義母と義父も優しく満たされていた。アイラの生活の日常。 公爵家に嫁いだアイラに、親友の男爵令嬢クレアは羨ましがった。 そんな平穏な日常が、一変するような出来事が起こった。ロバートの幼馴染のレイラという伯爵令嬢が、家族を連れて公爵家に怒鳴り込んできたのだ。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

処理中です...