【完結】裏切り王子様とからかい幼馴染~気づけば私の心は一人に奪われていました~

遠野エン

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18.目撃情報

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部活終わりのテニスコート。
マリベルは姉のことが頭から離れなず、練習に身が入らない自分に苛立っていた。友人であるエミリーが心配そうにマリベルの顔を覗き込んだ。

「ねえマリベル。お姉さんのエリスさん、大丈夫? アルバートさんの噂、学園中に広まってるじゃない。落ち込んでるんじゃないかって……。それにマリベルも週明けからずっと元気ないよ」
「エミリー……ごめん、ちょっとね」

エミリーは少し躊躇いがちに続けた。
「実はね、その噂なんだけど……ただの噂じゃないみたいなの。実際に見たっていう子がいるのよ。私の友達のトルテって言うんだけど。まだ学校にいると思うから会ってみない?」

マリベルは弾かれたように顔を上げた。

「本当!? 会うわ、今すぐに!」


***


マリベルとエミリーの前にトルテと名乗る女子生徒が緊張した面持ちで座っていた。

「は、初めまして……トルテです。あの、エミリーから聞いて……」
「マリベルです。早速で悪いけどトルテさんが見たっていう話、詳しく教えてくれませんか?」

マリベルの真剣な眼差しにトルテは小さな声で話し始めた。

「……私、一週間くらい前の放課後、旧校舎の方でピアノの音が聞こえたんです。誰かいるのかなって窓から中を覗いたら……そこに、アルバート先輩とリディア先輩が……」

トルテは恥ずかしそうに顔を赤らめ、さらに声を潜めた。

「ピアノの椅子にアルバート先輩が座ってて……リディア先輩がその前にひざまずいて……その……」
「……!」
「それにアルバート先輩が言ってたんです。『エリスは渋々やるからテンションが下がる。君みたいに自然体でやってくれるのがいい』って……リディア先輩の髪を撫でながら……」

その言葉を聞いた瞬間、マリベルの頭の中で何かがぷつりと切れた。テーブルの下で握りしめた拳が怒りでわなわなと震える。

「ご、ごめんなさい!私、こんなこと言うべきじゃなかった……!」
「ううん、違うわ。教えてくれてありがとう、トルテさん。悪いのは……全部あの男よ!」

マリベルはトルテの手を両手で強く握りしめ、まっすぐ彼女の目を見つめた。

「お願いがあるの。その話を先生に報告してもらえないかしら?」
「ええっ!? そんなことしたら……報復されるかも……」
「大丈夫。私が絶対にあなたを守るわ。それに目撃者はあなた一人じゃないかもしれない。ねえ、エミリーも協力してくれるわよね?」
「当たり前じゃない! エリスさんのためだもの!」

エミリーの力強い言葉に、トルテの不安げな表情が少しだけ和らいだ。

「ありがとう、二人とも」

マリベルは静かに立ち上がると窓の外に広がる夕焼けを睨みつけた。

「お姉様の優しさを踏みにじって、影で嘲笑って……そんなクズ、この学園でのうのうと過ごせるなんて思わないことね。見てなさい、アルバート・レヴィン。あなたには相応の罰を受けてもらうわ!」
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