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25.もう関わらない
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昼休みに久々の屋上へ。
吹き抜ける風が心地よいこの場所で、フェンスに寄りかかって空を眺めているおなじみの背中を見つけた。
「レオ……」
「よう。病み上がりは大人しく教室で寝てろよ」
そのぶっきらぼうな物言いがなぜだか懐かしく感じられた。彼は私の顔をじろじろと見てからふいと視線を逸らす。
「顔色はマシになったみてえだな」
「おかげさまでね。……それと、これ」
「あ?」
「ブッチが届けてくれたカード」
ポケットから取り出した例のカードをひらひらと見せる。
「『寝てばっかだと太るぞ』ですって。お見舞いの言葉にしてはひどすぎない?」
「事実を書いただけだ」
「ふふっ。お礼だけは言っとく。……ありがと」
「はっ。そんなこと言われる筋合いはねえな。俺はただ、寝込んでる奴がいるとこっちの気分が悪いって伝えたかっただけだ」
「ふふ、素直じゃないんだから。……それともう一つ、お礼を言わなくちゃ」
「まだ何かあんのかよ」
「母から聞いたわ。私が倒れた時、保健室まで運んでくれたんでしょう? そのあと馬車で家まで送ってくれたのもあなただったって。……本当にありがとう、レオ」
「チッ……。あの時はマジで肝が冷えたんだ。……礼なんていいから、お前は早く元気になることだけ考えてろ」
彼の隣に並び、同じようにフェンスに寄りかかった。
「……ねえ、少し聞いてもらってもいい?」
「なんだよ、また厄介事か?」
「アルバートのことなんだけど……」
彼は顔をわずかにしかめる。
「私が寝込んでる間、毎日お見舞いに来てくれたの。ただ部屋の隅の椅子に座ってるだけで……。すっかり縮こまってまるで別の人みたいだった」
「はっ、殊勝なこったな。お前はまんまと絆されたってわけか」
「そうじゃないけど……すごく反省してるみたいだった。それに今日リディアさんにも会ったわ。『アルバートを許してあげてほしい』って泣いて頼まれたの。悪いのは全部自分だからって……」
「揃いも揃って見事な被害者面だな。傑作だ。で?どうするんだよ。あいつらの悲劇の物語に情けをかけて許してやることにしたのか?」
「……わからない。あんなに憎かったはずなのに『許してあげて』って言われるとなんだか……」
「……」
言葉に詰まる私をレオは遮らなかった。
ただ黙って風の音に耳を澄ませているように見えた。やがて彼が静かに口を開く。
「俺はもう関わらない」
「え……?」
「散々楽しませてもらったからな。もうお腹いっぱいだ。あいつがどれだけ哀れな姿を晒そうが、あの女が何を言ってこようがここから先はお前の問題だ。そもそも俺があの時手を貸したのは、お前が真実を知らないままだったからだ。でも今は違う。全部知ってる」
彼はフェンスから身を離すと、私に向き直って悪戯っぽく笑った。
「お前の好きにしろよ。王子様の手を取ってまた仲良くお姫様ごっこを続けるのもいい。それともきっぱり捨てて新しい恋でも探すか? 決めるのは自分自身だ」
「……私の好きに……」
「ああ。せいぜい後悔しない方を選べよ」
彼の突き放すような、背中を押してくれるような言葉を吹き抜ける風の中でただ噛み締めていた。
吹き抜ける風が心地よいこの場所で、フェンスに寄りかかって空を眺めているおなじみの背中を見つけた。
「レオ……」
「よう。病み上がりは大人しく教室で寝てろよ」
そのぶっきらぼうな物言いがなぜだか懐かしく感じられた。彼は私の顔をじろじろと見てからふいと視線を逸らす。
「顔色はマシになったみてえだな」
「おかげさまでね。……それと、これ」
「あ?」
「ブッチが届けてくれたカード」
ポケットから取り出した例のカードをひらひらと見せる。
「『寝てばっかだと太るぞ』ですって。お見舞いの言葉にしてはひどすぎない?」
「事実を書いただけだ」
「ふふっ。お礼だけは言っとく。……ありがと」
「はっ。そんなこと言われる筋合いはねえな。俺はただ、寝込んでる奴がいるとこっちの気分が悪いって伝えたかっただけだ」
「ふふ、素直じゃないんだから。……それともう一つ、お礼を言わなくちゃ」
「まだ何かあんのかよ」
「母から聞いたわ。私が倒れた時、保健室まで運んでくれたんでしょう? そのあと馬車で家まで送ってくれたのもあなただったって。……本当にありがとう、レオ」
「チッ……。あの時はマジで肝が冷えたんだ。……礼なんていいから、お前は早く元気になることだけ考えてろ」
彼の隣に並び、同じようにフェンスに寄りかかった。
「……ねえ、少し聞いてもらってもいい?」
「なんだよ、また厄介事か?」
「アルバートのことなんだけど……」
彼は顔をわずかにしかめる。
「私が寝込んでる間、毎日お見舞いに来てくれたの。ただ部屋の隅の椅子に座ってるだけで……。すっかり縮こまってまるで別の人みたいだった」
「はっ、殊勝なこったな。お前はまんまと絆されたってわけか」
「そうじゃないけど……すごく反省してるみたいだった。それに今日リディアさんにも会ったわ。『アルバートを許してあげてほしい』って泣いて頼まれたの。悪いのは全部自分だからって……」
「揃いも揃って見事な被害者面だな。傑作だ。で?どうするんだよ。あいつらの悲劇の物語に情けをかけて許してやることにしたのか?」
「……わからない。あんなに憎かったはずなのに『許してあげて』って言われるとなんだか……」
「……」
言葉に詰まる私をレオは遮らなかった。
ただ黙って風の音に耳を澄ませているように見えた。やがて彼が静かに口を開く。
「俺はもう関わらない」
「え……?」
「散々楽しませてもらったからな。もうお腹いっぱいだ。あいつがどれだけ哀れな姿を晒そうが、あの女が何を言ってこようがここから先はお前の問題だ。そもそも俺があの時手を貸したのは、お前が真実を知らないままだったからだ。でも今は違う。全部知ってる」
彼はフェンスから身を離すと、私に向き直って悪戯っぽく笑った。
「お前の好きにしろよ。王子様の手を取ってまた仲良くお姫様ごっこを続けるのもいい。それともきっぱり捨てて新しい恋でも探すか? 決めるのは自分自身だ」
「……私の好きに……」
「ああ。せいぜい後悔しない方を選べよ」
彼の突き放すような、背中を押してくれるような言葉を吹き抜ける風の中でただ噛み締めていた。
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